実直勇者と少女との邂逅
「あっ!?」
「おっ?」
広場へ辿り着き、露店で買い物をしようと物色していると、見知った顔に会った。
「えへっ、また会ったね」
両手に溢れそうな程の紙袋を抱えたレンジャーの少女、リリィがロイとの再会を喜ぶようにはにかむ。
「もしかして、ロイも昼ご飯を買いに来たの?」
「ああ、昨日食べたサバサンドが美味かったからね。ということはリリィも?」
「うん、そう……あっ、でも、これ全部、ボクが食べるわけじゃないからね?」
これらの殆どは一緒に仕事をしている仲間の分だからと、リリィは赤面しながら捲し立てる。
「本当だから、本当にボクはこんなに食べないんだからね?」
「あ、ああ、大丈夫だって」
必死に言い訳をしながら詰め寄るリリィを、ロイは冷や汗を流しながら必死に宥める。
「流石に俺も、これだけの量は一人では食べれないよ。見たところ、五、六人分ってとこだろ?」
「そう、正に六人分。ボクが一番下っ端だから買い出しを任されているだけ。それだけ。ハハッ……」
大食いだと思われるのが余程嫌なのか、リリィは念を押すように何度も仲間の存在をアピールする
そんな必死のリリィを見て、ロイは、
「……そうだ」
妙案を思いついたように手を打つと、リリィへと詰め寄る。
「なあ、リリィ。お願いがあるんだけど、いいかな?」
「な、何?」
「これからリリィの仕事を見学させてもらえないかな?」
「はい?」
「せっかくだからリリィが、元冒険者たちがどんな仕事をしているかを知りたいんだ……ダメかな?」
ロイが探るように尋ねると、リリィは慌てたようにかぶりを振る。
「そ、そんな。ダメなんてことないよ。でも、そんなにたいしたことしてないよ?」
「いや、いいんだ。俺が純粋に見てみたいんだ」
「わかった。ロイがそう言うのなら……」
「ありがとう」
リリィからの了承を得たロイは、手を伸ばしてリリィが抱える紙袋をまとめて手に取る。
「せっかくだから、荷物運び、手伝うよ」
「わわっ、そんな、全部持ってもらうなんて、いくらなんでも悪いよ」
「気にしないでくれ。力だけは有り余っているから」
恐縮するリリィに、ロイは紙袋を軽々と持ち上げて見せ、まだまだ余力が残っていることをアピールする。
「代わりに、俺の昼飯を見繕ってくれないか? リリィの紹介してくれる店なら、安心できるからさ」
「あっ、それならお安い御用だよ」
ロイからの要望にリリィは満面の笑みを浮かべると、自分のお勧めだという露店へ向けて跳ねるように歩きはじめた。




