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実直勇者のその後の伝説  作者: 柏木サトシ
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実直勇者たちの行動開始

 翌日からは、気持ちも新たに怪盗ナルキッソスの情報を求めて、ロイたちは街へと繰り出した。


 繁華街へ向けて歩いている途中、今後の方針についてエーデルがロイに質問する。


「それで、具体的にはどうするの?」

「そうだな、とりあえずは情報収集だろう。色んな人から話を聞いて、ナルキッソスについての情報を集められるだけ集めよう」

「集めるって、具体的にどれくらい?」

「う~ん、出来ればこの街の人全員から聞きたいとこだな……」


 ロイが希望的観測を口にすると、


「ちょっと待った。いくらなんでもそれは無理だ」


 すぐさまプリムローズから待ったがかかる。


「フィナンシェの総人口は約三万人いるんだ。その全員から話を聞くなんて一体、どれだけの時間がかかると思うんだ?」

「そ、それは……」


 予想を遥かに超える人数を示され、流石のロイも言葉を失ってしまう。

 だが、そんなロイにプリムローズが「心配無用」と明るく声をかける。


「そうなるだろうと思って、あたしの方である程度の計画は立てておいた」

「そ、そうか。助かる。ありがとう、プリム」

「コ、コホン、まあな。ではな……」


 顔を真っ赤にしたプリムローズは昨日一日、必死になって考えたという計画を説明する。


 フィナンシェの街は大きく分けて三つの地域に分かれている。

 街の中心で一番の高所にある城を基点として、ぐるりと取り囲むように建てられたのが貴族街と呼ばれる貴族が住む地域、貴族街の下層に平民が住む平民街が、更に平民街の外には、スラム街と呼ばれる低所得者、他所から流れて来た元冒険者たちが暮らすエリアがあるようだ。


「スラム街は危険だから、今日は貴族街と平民街、どちらかを重点的に聞いて回るというのはどうだろうか?」

「そう……だな」


 プリムローズからの提案に、ロイはおとがいに手を当てて暫くの間、思案する。


「……プリム、ある程度の計画を立ててきたのなら、何処を回るのかも大体決めているんだろ?」

「え? ああ、そうだけど」

「ならば、分かれて行動しよう。プリムの提案も悪くは無いが、それだと時間がかかり過ぎる。今は一刻も早い事件の解決が先決だ」

「そうか……そうだな!」


 プリムローズは一瞬だけ寂しそうな表情を見せたが、すぐに気を取り直して自身の頬を両手で力強くはたく。


「わかった。今から回るポイントを言うから、そこを皆で手分けして回ろう」


 そう言うとプリムローズは地図を取り出し、次々と情報を集める場所を書き込んでいく。

 被害に遭った貴族の屋敷から実際に人が攫われた場所を重点的に、他は人が多く集まる場所や、情報屋がいる場所等、回るべき場所は多岐にわたりあった。


 全部で五十箇所近い点を打ったプリムローズは、同じ物をロイとエーデルに渡すと、快活な笑顔を見せる。


「とりあえず、こんなところだな。近い場所から手当たり次第回って、日が暮れたらイリス様の屋敷に戻るって感じでいいか?」

「ああ、問題ない。エーデルもそれでいいな?」


 最終確認の為にエーデルに問いかけると、


「はぁ……どうせ、反対したところで無駄なんでしょう?」


 ロイの頑固さを知っているエーデルは、不承不承といった感じでどうにか賛成してくれた。


「よし、それじゃあ今日一日、頑張って情報を集めよう!」


 ロイが気合いの掛け声を上げると、プリムローズが「おー」と後に続いた。

 威勢の良い掛け声を上げたロイとプリムローズが、勢いよく飛び出していく中、


「…………回る場所、一日で五十とか多過ぎでしょ」


 エーデルだけは、うんざりした様子で渡された地図を眺めていた。

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