女性陣の密かな決意
楽しげに談笑しながら歩くロイたちの後に続きながら、エーデルとプリムローズの二人は、前の二人に聞こえないようにボリュームを落として会話をする。
「あの女、どういう人なの?」
「イリス・ブルローネ様。カーネル様も仰っていたが、夫であり、先代のブルローネ卿が亡くなったので家督を継いだ侯爵家のお方だ。ただ、侯爵になってからは日が浅いので、あの方の事はよく知らないんだ」
「若くして爵位を継いだ未亡人、か。何を考えているのか読めなさそうな人だけに、注意した方がいいかもね」
「そうなのか?」
プリムローズの問いに、エーデルは神妙に頷く。
「ああやって間の抜けたように話す人間は、多くの場合、自分がそうした方が周りからの受けがいいとわかってやってるのよ。半年間も問題なく侯爵をやってきたなら、あの女は相当のやり手と見て間違いないわね」
「じゃ、じゃあ、あの人がロイを狙うって可能性も?」
「充分あるわね。こうなったら私たちが……」
「イリス様からロイを守らなければ……」
共通の目的を認識した二人は、視線を合わせると力強く頷いた。
「やれやれ、恋する乙女は時に恐ろしいものですな」
エーデルとプリムローズの二人が結託する様子を眺めていたカーネルは、小さく嘆息して肩を竦めた。




