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第四話 じゃじゃ馬、神の奇跡に目覚め老人と戯れる

 アンヘルとブレイズが共に旅立った丁度その頃。

 十代半ばの少女が、馬車に轢かれた飼い猫の怪我の治療をしようと手当てをしていた際、手から不思議な淡い光が漏れ、みるみるうちに怪我が治った。

 神の奇跡と呼ばれる術である。


 「おかしいな。何もしてないのに手から光が・・・ミアが治ったしいいか。でもこんな事、誰に相談すればいいのかしら?」

 幸い誰も見ていなかったので、そそくさと逃げるように小さい屋敷へと入っていった。

 

 彼女が誰に相談して良いのか、分らないのには理由がある。

 神の奇跡と呼ばれる術だが、神への信仰心によるものと、人々は信じているのだが、彼女のように普通に信仰している者でも、不意に宿ることがある。

 中にはあまり教会や神殿にも赴かない者が持つようなケースも見られるのだ。

 普通であれば当然、喜ぶべきことであるのだが、困ったことがある。 


 良い機会なのでこの世界について説明をしたい。

 まずは国と地理、歴史についてである。


 この世界は狭い。いや、狭いというよりも未知の領域が多く、あまり人々が行き来できないので、自然と狭くなる。

 大陸には分っている時点では、二つの王国があり、一つはこの物語の表舞台となるモルティス王国。

 もう一つは隣国のケラウェス王国である。

 モルティスは大陸の最南端にある大きな半島と大陸の一部を要し、ケラウェスは半島の付け根から海岸線に長く領土を持つ国だ。


 もう一つはモルティスから南東方面に海を隔て、大小様々な諸島からなるイダモスという国だが、これは部族の長が合議制で行われる連合体であり、モルティスの交易国でもある。

 そしてイダモスの人々は肌の色が黒いので、すぐに見分けがつく。

 

 ケラウェスは資源が豊富で土地も広いのだが、海岸線は全て遠浅であり、沖合は潮流が激しいため、小船での漁のみ行うことしか出来ない。

 故にイダモスの品に関しては、モルティスを通じてでないと輸入は出来ないのが現状だ。

 国力としてはモルティスよりも大きいのだが、昨今のゴブリンらによる侵攻が相次いでいるため疲弊しがちである。

 資源はというと鉄鉱石、銅、銀、金などといった金属や、広大な大森林からの材木などが主であり、平野部も広いので穀物も豊かである。


 イダモスは砂糖や天然のゴム、カカオやバニラなどの香料や胡椒、ピメントなどの香辛料が主な輸出品だ。

 国はあまり大きいとは言えない上に偶にだが部族同士のいざこざもある。

 だが、最近では戦いではなく「ツルチィオ」と呼ばれる競技で代表者を決め、雌雄を決するといった平和、且つユニークな行事で争いを収めることが多い。


 最後にモルティスである。

 双方の交通の要衝となっているので、交易による商業が盛んだ。

 大陸の付け根は途中でかなり狭くなり三十キロメートルほどしかない。 その為、以前にケラウェスとの戦いではその地域で激しい戦闘が繰り広げられた。

 半島は細長いため、自然と細長い国というのが特徴となる。


 主な特産品は粘土しかないが、様々な良質の粘土が産出される。

 それにより五十年程以前から陶磁器が開発され、貴重な輸出品となっている。

 他にはガラスなどに必要な黒曜石なども産出されるため、自然と王都ヴァイロスは芸術の都として栄えている。


 歴史についてだが、先にケラウェスとの戦いとあったが、元はケラウェスと同じ国だった。

 二百年ほど以前に王位継承戦争が勃発し、各地で激しい戦闘が繰り広げられた後に、今の形となった。

 戦いが終わった理由は、ゴブリンらによる大侵攻である。

 これにより、双方は和睦し互いの娘を交換するかのように嫁がせて、現在の形となった。

 現在でも互いに王家同士、蜜月関係にある。


 それより遡ると古代史に近くなり、古代書によると様々な矛盾点も多く、判明出来てないのが現状である。

 ただ、数千年ほど以前は今よりも魔術による文明が盛んであり、未発掘の遺跡からは魔法の品が出土されることもある。


 以上が国と地理、歴史だ。続いて神について記述しようと思う。


 この世界での神は存在しているかわからない。

 というのも術を使う者にでさえ、誰も神の声を聞けないのである。

 中には神の声を聞いたと言い触らす者もいるが、実際の所は本人しか分らないとしか言えない。


 神は複数いるものの主神といわれる者がおり、周りに副神というものが連座しているといわれている。

 全て教会による話であり、古代書による様々な神話に関してまとめた経典により、最初に書かれている。

 感覚的には多神教というよりも一神教に近く、副神を天使に置き換えると理解しやすいかもしれない。


 信仰に関しては全て教会で仕切られており、教皇と大司教、複数の枢機卿により組織されている。

 教皇と大司教は世代が代わる度に交互にケラウェスとモルティスの二つの国にいる形となっている。

 これはお互いの国の優劣を決めない為の措置であり、和睦の際に取り決められたもので、以来二百年に渡り続いている。


 ただ、二十年程前に一人の枢機卿であるウェンゼンという男が波紋を呼んだ論争があった。

 ウェンゼンは当時、枢機卿の中で唯一神の奇跡という術を使える男だったのだが自信家でもあり「奇跡の術を持たない教皇は如何なものか」と公会議で発言をした。

 奇跡の術を持つ神官、司教などは使えない者が上の地位に多くいて、不満を持っていたこともあり、瞬く間に波紋が広がったのである。


教皇はこの時に経典の一文である


「神は何人たりとも試されるものではない。試すということは疑いであり、信じていることにはならないからである」


 といった文言で逆手にとり、ウェンゼンを追放処分とし異端審問にかけた。

 この時、不満を訴えた神官だけでなく古代史における研究をしていた魔術師達も同様の異端審問にかけられ、大勢の者が火刑に処されて命を絶たれた。


 ウェンゼンは火刑に処せられる前に脱出し、異端派とされる原理派を名乗り、不満を抱く神官らと共に地下へと落ち延びた。

 現在でも最高額の賞金首として追われる身である。


 以来、神の奇跡の術を持つ者は教会へ赴き、司祭として任命されなければならなくなった。

 黙っていれば原理派と見なされ最悪の場合は火刑に処せられるのである。


 故に彼女は相談する相手に迷うのである。

 普通であれば教会へ行くように言うのであろうが、教会に行けば司祭にされ、全ての行動に制限が課せられる。

 それには例外はなく、例え王女であったとしても是非もない。


 彼女は名主の娘で名をコルムと言い、取り立てて美人という程ではないが、可愛げのある栗色の髪を持つ女性だ。

 名主の娘とはいっても、村は山麓の牧畜と狩猟しかない痩せた土地の貧しい村である。

 それ故、親も自由気ままに娘を育て、今では気立ては優しいものの活発な女性となっていた。


 そんな彼女なのだから教会に入り、言う通りになるというのは御免である。

 彼女は覚悟を固め、まずは両親に打ち明けた。すると両親は意外なことに、彼女に「ここを出ろ」と言ってきた。

 本当は匿いたいがバレたら村民も危ういし、他の兄弟たちもどうなるか分らない。かといって、彼女がすんなり教会へ出向き、教会に指名された相手と結婚をするとは思えないのだ。


 コルムは両親の話を聞き、一筋の涙を流し、両親と幼い兄弟たちに別れを告げた。

 翌、早朝に家を飛び出した彼女は、両親から渡された路銀を持って旅に出た。


 ある時一人で森の中を歩いていると、老いた野良犬が怪我をしていたので術を使って治してやろうと思った。

「神様の意地悪! なんで、私がこんな目に合わなければならないの!? 信仰なんて捨ててやるからこの力を奪いなさいよ!」


 誰もいないのを確認した後、そう叫んでみた。

 怪我をしていた老いた野良犬に手をかざすと、またもや淡い光が出て野良犬は治ってしまった。

 野良犬を治してあげたは良いものの、どうして良いかわからない。悩んでいると不意に何処からか

「有難う。お嬢ちゃん」

 と、誰かに言われた。

 誰もいないのを確認した上なので彼女は焦った。

 だが周りを見渡してもやはり誰もいない。


 まさかと思い、野良犬を見つめると

「おや、私の声が聞こえるのかい? じゃあ、相当なものだ。運命とやらだね。ついて来るといい。悪いようにはしないからね」

 と、また頭の中で声がしたので驚くしかなかった。

 それと同時に野良犬はこちらを振り向きながらトボトボと歩き出した。

「これも神の奇跡ってやつ? でも、素直について行っていいのかしら? 悪い人じゃなさそうだけど・・・あ、犬か」

 混乱したものの、野良犬が教会の回し者とは到底思えなかったので、ついて行くことにした。


 野良犬について行くと、一人の汚いローブをまとった老人が横たわっていた。

 齢は分らないが八十台あたりであろうか? 

 彼はこちらに気づくと、不意に体を起こし、野良犬の頭を撫でながら

「こいつの言葉がわかったようだね。若いが術師としては中々だな。普通の術師なら、そうは聞こえまい」


 コルムは何が何だか分らないが、取りあえず質問をしてみることにした。

「術師というけど、これって何なの? そもそも、これは神の奇跡なんでしょう? お願いだから、この力を消す方法を教えてくれない?」

 老人は一しきり笑った後にこう述べた。

「それは無理だな。運命と思って諦めるしかない。神によって与えられた受難だ」

「私あまり信仰なんてないんだけど。てゆーか、信じていないんだけどさ」

「ああ、殺人犯でもなる奴はなるよ。神の意思とやらは、かなり気紛れらしいからね」

「どういうこと? 教会でも上位の司教とかでも使えないというじゃない。なんで私が?」

「だから、わしにもわからん。わしも自慢ではないが神の奇跡は使える。だが、長年この力を擁していても、未だに声は聞こえん」

「・・・そうなんだ。けど、お爺さんは教会の人じゃなさそうね。教会の人ならもっと立派な服を着ているもの」

「あんなのは見てくれだけで、特に力を持たない空威張りで、糞を出すしか能がないのが服を着ているようなものさ」

「・・・お爺さんは教会のこと嫌いなの?」

「好きならこんな所で物乞いみたいな恰好はしてないだろうな。今頃、言う事だけはご立派なことを並べて、裏では女でも侍らせておるだろうよ」

「本当に教会が嫌いなのね。私も行きたくないから同じって訳だけど・・・そこまで・・・ではないかなぁ」

「お嬢ちゃんはまだ若いから、下手したら司教あたりの慰みものだよ。行くのはやめたほうがいい」

「え? 嘘? そんな酷いことをしているの?」

「表だってはしちゃあいないさ。だが、ああいう所は裏じゃあそんなもんさ。神のバチに期待していても無駄だがね」

「お爺さんは何者なの? さっきから随分と教会の悪口並べているけど」

「悪口じゃない。事実さ。わしは元来、正直者なんでね。一応、経典は全部憶えてはいるよ」

「お爺さんって元は司教様とか、偉い人だったの?」

「偉いか偉くないかはわからんが、地位とやらはそれなりだったなぁ。あの頃が懐かしいよ」

「やっぱり、元に戻りたいんだ」

「そりゃそうさ。あの時のバカ教皇の苦々しい顔って言ったら今でも忘れられん。あの時は最高だったなぁ」

「・・・あの、もしかしてお爺さんって元枢機卿?」

「おや、わかるかい? 若いのに感心感心」

「いや、まさかとは思っていたけど大丈夫なの? こんな所にいて見つかったら殺されちゃうんでしょ?」

「なぁに、バレはせんよ。連中が来たら、また気がふれた物乞いのフリでもして誤魔化すから」


 あまりにいい加減な応答なので本当にウェンゼン元枢機卿か分からない。

 だが、疑っても仕方ないので更に質問をぶつけてみた。


「あの・・・ところで私はこれからどうすれば良いと思います?」

「さぁね。神の声でも聞いてみる努力でもしてみればどうかね? 一生無駄な時間を過ごせて丁度いいぞ」

「・・・ふざけてないで、真面目に答えてよ」

「そうだなぁ。わしも暇だし、いっそその力をもっと強くしてみるのはどうかね?」

「そんな事出来るんですか!? でも、強くしてどうすれば・・・?」

「気に食わない奴を片っ端から殺しまくって、神なんぞいないと教会に叫んでやれば面白いかもしれんがね」

「いい加減にして! 人をさっきから小馬鹿にして!」

「なぁに、爺の他愛もない暇つぶしだ。穏便に頼むよ」

「・・・まぁ、いいわ。この力はどうせ消せそうにもないし、過去にもいないんでしょ? 消した人」

「うむ。馬鹿と同じで死なないと無理だな」

 そう言うと、呆れ果てたコルムをよそに暗い洞窟へと静かに老人は歩き出した。


「ちょっと待ってよ。何処へ行くつもり?」

「いいから来なさい。どうすれば力がつくのか教えてやろう」


 洞窟に入ると、長いつららのような鍾乳石が至る所にあり、しばらく進むと小さな祠があった。

 老人はランタンなどを持っていなかったが、手からは不思議と温かい光を放っていた。

 一時間ほど歩いたであろうか、不意に老人は立ち止まると


「ほら、ここだ。ここでしばらくは寝起きするといい。それで多分、力は増すだろう」

「え? このうす汚い祠とかが? ・・・これって主神像が中に?」

「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。わしにも分らん。気になるなら中身を見たらどうかね?」

「え? いいのかな? 悪魔とか出てこない?」

「出るかもしれないし、出ないかもしれない」

「またそんな事を・・・いいわ、試しに開けちゃえ!」


 開けると祠から凄まじい力が・・・という訳もなく、昔は何かしらの像だったらしきものが、安置されているだけである。

 ただ、コルムはその像を見ると不思議と落ち着くような気がした。


「・・・ほう。像が反応しているな。やはりお嬢ちゃんは中々のものだ。ここにしばらく居れば自ずと力は増幅されるぞ」

「そんなものでいいんですか? なにか・・・こう、試練とか」

「なぁに、そんなもんないよ。どこぞの英雄譚じゃあるまいし、ドラゴンでも倒していけば良いとでも思ったのかね?」

「あの~・・・ドラゴン退治とかだったら私、逃げますけど」

「うむ。そんなものだったらわしも逃げるわい。ただ、これも気が遠くなる話だぞ」

「ここにどれだけ居ればいいの?」

「そうだな。長ければ十年は超えるな。才能次第だがお嬢ちゃんは・・・まぁ、これも分らん」

「ちょっと! いい加減にしてもらえます!?」

「いや、これは本当にわしも分らん。だが、水はそこにある泉ですむし、飯は小魚もいれば苔やキノコもある」

「苔って・・・嘘でしょ?」

「本当だよ。中々の味だ。ちと土くさいのが難点だがな」


 老人はそういうと苔をペロリと食べてしまった。本当に食べられるものらしい。 しかし、こんな得体の知れない爺と一緒に、こんな所で一年も居たら気が狂いそうになる。


 老人はそれに気づいたらしく、笑顔でこう言い放った。

「わしのことなら安心しなさい。わしはちょいと野暮用で出かけねばならん。ちゃんとここで暇を潰すんだぞ。そうすれば力は必ずやつく」

「・・・嘘だったら承知しませんよ」

「嘘だったら、わしを警ら隊にでも突き出して報奨金でも貰うがよい。ではな」


 老人はそう言うと、さっさと来た道を引き返してしまった。

 灯りは幸い、ヒカリゴケのようなものが緑色に淡い光を放っている。

 あたかもコルムを幻想的な感覚へと誘っているようだ。さらには地底湖の水面も、不思議な淡い光であふれている。原理はわからない。

 

 ポツンと独りになってしまったコルムは色々な事を考えた。

 まずはあの老人である。まず本当にウェンゼン枢機卿なのか疑わしい。

 著名な人物があそこまでふざけていると、逆に親近感も湧くが、同時に怪しさも倍増するものだ。

 しかし、神の奇跡に似た手の光を見ると、まんざら嘘とも思えない。

 謎は深まるばかりなので老人については考えるのをやめにした。


 次に壊れかけた祠と、その中の像であったであろう石の塊である。

 これも先ほどは不思議な気持ちにはなったが、幻想的な雰囲気に騙されただけかもしれない。

 大体、術を磨くといっても、このような場所でただボーッとしているだけで、本当に身に付くのか分る訳がない。

 これも考えるだけ無駄のようである。


 最後にあの野良犬である。

 確かに声が頭の中に響いたし、あの老人とも会話していたようであった。

 もしかしたら魔術師とやらが化けていたのかもしれないが、自分みたいな者にわざわざ怪我までして導くだろうか? そう考えると増々分らなくなる。


 独りだし誰も見ていないので、鼻くそでもほじりながら考えていても、一向に答えなんぞが出る訳がない。

 まず傷を治す以外に、奇跡の力とやらがどんな使い道があるのかでも考えた。

 いや、妄想した。


 まずは月に一度ある、あの厄介なイベントをなくそう。これは大いに歓迎すべきことである。しかし、神の許しがあるかは分らない。


 次に少し低い鼻を高くしよう。そうすればもっと美人になる筈だ。しかし、これも神の許しがあるかは分らない。


 その次は背が高く、お金持ちのイケメンにモッテモテになる秘術を会得しよう。これが一番だ。しかし、これも神の許しがあるかは分らない。


 余りにも不真面目な事ばかり考えていれば、神も呆れて力を消すと思ったのだが、やはり手の平から出そうと思えば光が出せる。

「もう・・・どうしろって言うのよ。折角の青春をこんな独房みたいな所で謳歌出来る訳ないし、彼氏だって出来ないし・・・」


 腹も空いたので、試しに淡い光を放つ苔を食べると、確かに土くさいが意外と食べられるものである。

 それだけじゃない。何か妙な気持ちになってくる。不思議とテンションも高くなってくる。


「あれ? 何だろう? 何か知らないけど楽しい。一年は無理だけど暫くはここで過ごせるかも・・・」

 テンションも高くなった上に妙に暑く感じる。

 季節はまだ春になったばかりな上に洞窟の中だから、かなり涼しい筈なのだが凄く暑い。

 我慢出来なくなったので、誰もいないのを良い事に全裸となり、地底湖で泳いでみることにする。

 水は透き通っていて淡い光に包まれているが、美味しい水だったので怖くも何ともない。


 地底湖に飛び込んだのだが、少し浅かったせいか軽く頭をぶつけた。痛いので頭を撫でるとすぐに痛みが治る。

「こうしてみると本当に便利な能力なのよね」

 少し水も飲んだが苦しくない。不思議と思い水で呼吸するようにしてみたが、息が出来る。これも神の奇跡という術なのだろうか。


「わぁ、凄い! こんな能力まであるなんて!」

 良い気分になり、地底湖の奥底まで泳ぐことにした。

 奥底まで行くと先ほどと同じような祠がまたあった。


「これも開けてみよう。今度はイケメン君にモッテモテの術でお願いします!」

 そんな不謹慎な願いを込めながら開けてみると、やはり同じような小さい石像があった。今度ははっきりと像だと分かる。


「ここでお魚さんでも見ながら暫くいようかな。また、能力が増えるかも。何か楽しいな」

 先ほどは青春が謳歌できないだの、彼氏が出来ないだのと悩んでいたのが、まるで嘘のようである。

 しかし、このような所でも暫くすると飽きてくるので、周りを見渡していると妙な気配を感じた。

「あ、なんか逃げないとまずいかも・・・」


 そんな矢先である。大きくて、見慣れない化け物のようなものが不意に横穴から現れた。

「出たぁ!! 化け物!! ヤバい! 逃げないと!」

 勝手に化け物呼ばわりされたそれは、地球の世界で例えるとオオサンショウウオのようなもので体長は1m程のものだ。

 しかし、いきなりそのような見たこともない物を見ると普通はパニくるものである。


「あ~・・・慌てないでええ。お前さんのほうが大きいし、俺はお前さんのようなものは食わん」

 また、頭の中で声がした。どうやら化け物の声のようである。

 コルムは警戒しつつも頭の中の声へ試しにコンタクトをとってみることにした。


「本当? それならいいけど。貴方はなに?」

「いきなりそれかね? 人間の女よ。まぁ、良い。私はワヴェングという一種のサンショウウオのようなものだ」

「サンショウウオなら見たことあるけど随分大きいからびっくりしたわよ」

「それは良いが、人間なんぞがこんな所に来るとは珍しいな。それに話せるし、お主のほうこそ何者だ?」

「私はコルムって言うの。訳あって、ここに暫くいることになったかも知れないんだけど・・・丁度良かった」

「何が良いのだ?」

「だって、話し相手みつかったもの。誰とも話さないでこんな所に一人なんて気がめいりそうだし」

「俺が暇つぶしの相手という訳かね。まぁ、良い。私もどうせ暇だ」

「じゃあ、暇人同士仲良くしましょ。ワヴェちゃん」

「面白い女だな。だが、構わんよ」


 コルムは暫くここに居ることにした。

 地底湖を探索するのは何やら楽しそうだし、話し相手は人間ではないが他にもいそうだ。


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