9 リョウの場合<何も見えない>
リョウ
「家で考えたんだけどさぁ…。」
練習の日、自分の考えをケイに告げた。
リョウ
「俺は、楽しいからギターを始めて、楽しそうだから路上も始めて、その理由でやってたんだけど、人を集めることばっか意識がいっちゃっててそのこと忘れてたんだよね、ナカイさんに言われて気付いたわ、人は集めたいけど、俺っちが楽しそうにしなきゃ観客は来ないと思うし…。」
その気持ちはケイと一緒だった。
ケイ
「俺もそう思ったんだよね。自分達が楽しくないとね。」
ケイも考えたことを言った。
リョウ
「だから俺は、あんま気にしないようにしよっかなーって思ったんだよね。まず自分が楽しくなきゃね。」
ケイ
「じゃあ人は集まんなくてもいいってこと?」
リョウ
「ん〜、そういうことじゃなくて、ちょっと矛盾してる感じになっちゃうけど、人は集めたいけどそんな必死になんないっつーか、そんなトコ。」
続けて言うリョウ。
リョウ
「俺が思うに、究極のことって矛盾してると思うんだわ。」
ケイ
「矛盾かぁ、どうゆーこと?」
リョウ
「自分達が唄いたい曲ばっかやっても、人は来ないかもしれないし、集めるためにコピー曲ばっかやっても、今度は自分たちが嫌になっちゃうかもしんないし、犠牲にっていうと変かもしんないけど、人を集めたいならみんなが知ってるような曲をやった方がいいと思う。でも、自分達が楽しくてなおかつ人も来てくれたら、それはそれで最高だよね!」
ケイ
「そうだね。どっちかをとると、どっちかが犠牲にならなきゃね。」
リョウ
「そうなんだよね〜。だから俺は楽しくやろうと思ってさ!」
ケイ
「楽しくやりたいもんね!」
それはケイも同じだった。
2人の考えは一緒だった。
<何も見えない>
作詞 リョウ
いつものよぉに起きた朝 今日は仕事が休みだ
毎日が毎回過ぎて
つまらなく感じる自分がいた
どこかえ行こぉと車に
乗り込み発進させるけど
町をぐるぐるぐるぐる
まわる まわる 目がまわる
僕は何処に行きたくて 何がしたくて出かけたんだろぉ?
僕は何処に行きたくて 何がしたくて出かけたんだろぉ?