7 理由<風>
ケイはメールを打った。
[楽譜立て買ったよ!]
リョウからの返事がくる。
[了解!ありがと!]
(楽譜立ても買ったし、看板も作ったし、今日、人来るかなぁ)ケイはそう思っていた。
前、やった時間にO駅に着いた。
リョウ
「2回目のライブ!人、来るかなぁ…。」
ケイ
「前回よりはきやすい環境にしたけど、どうなんだろうねぇ。」
あの場所に移動する。
リョウ
「やっぱまだ緊張するな〜!」
ケイ
「俺もだわ〜!」
2回目のライブでむりもなかった。
リョウ
「よっしゃ!やりますか!」
2人は準備した。楽譜立ての前に看板を立てる。
リョウ
「どう見える?」
ケイが離れて見てみる。
ケイ
「おぉ!見える、見える!」
リョウ
「前は座って唄ったけど、立ってやってみようか。ストラップ(ギターを立って弾くときに体から吊るせるようにできるもの)持ってきてる?」
ケイ
「持ってるよ!そうやってみよっか。」
リョウ
「じゃあいくよ!」
いつものようにピックでリズムをとる。
看板を作ったことは正解だった。行き交う人は、前を通るときに歩くスピードを落として看板を見てくれたり、頑張れよと初めて声をかけられたりもした。
しかし人は止まってくれなかった。
リョウ
「来ねぇなぁ。」ため息混じりにそう言った。
ケイ
「前よりはいい感じだと思うけどねぇ。」
今回も観客は無し。
前回のライブの反省会を行う。
リョウ
「よかった点は看板とか作ったことだよね?見てくれる人いたし、声とかかけられたしね!」
ケイ
「でも、人は止まってくんなかった…。なんでだろ?」
リョウ
「インパクト足りねーのかなぁ。」
ケイ
「まだ2回目だし、これから来るかもしんないんだからさぁ、いいんでない?」
リョウ
「そうだけどさぁ…。なんかやれん事あるかなぁ、って。」
ケイ
「ん〜…。練習あるのみ!…かなぁ?」
リョウ
「しかないね!」
ケイ
「曲を増やすことはこれからも続けて、どうしよっか?」
リョウ
「あのさぁ、唄ってるのを録音してみたりしたらいいと思うんだけど。」
ケイ
「それいいね!聞いてみて音が外れてるとことかがわかるもんね!」
2人はいれいろな事を考えた。技術を上げる為に、そしてライブに来てもらう為に。
今日もライブをするため、O町に行く。
リョウ
「今日こそは人を集めるぞ!」
気合いの入った声で言った。
ケイ
「頑張ろうね!」
ケイも気合い十分。
3回目のライブを行う。
が、人は来ない。
ケイ
「ハァ。」
ため息のケイ。
リョウ
「ちょっと休憩しようか。」
その時、
ブーブーブーブー
ケータイが振動している音がする。
リョウ
「ケイちゃんのじゃない?」
ケイ
「あっ、ホントだ。電話だわ。」
ケイが電話にでる。
ケイ
「もしもし。」
終始、敬語のケイ。
リョウ
「誰?先輩?」
話し終わったケイに尋ねた。
ケイ
「先輩にナカイさんっていたじゃん?あの人が見に来てくれるってさぁ!」
ナカイさんとは高校の1つ上の先輩で、ケイの中学からの先輩だった。
ナカイ
「よぉ!久しぶり!」
リョウ・ケイ
「こんばんわッス。」
ナカイ
「路上ライブやってんとはねぇ!なんでやってんの?」
2人に尋ねた。
ケイ
「ギターやってるなら人に見せようと思って、まぁそんな感じッス。」
リョウ
「俺も同じッスね。あと、自分の力みたいのを知りたくて。」
ナカイ
「そうなんだ、じゃあ唄ってよ。」
2人はオリジナル曲を唄った。
ナカイ
「いいじゃん!うめーよ!」
リョウ・ケイ
「ありがとうございます!」
2人は初めて人前で唄った。
ナカイ
「でも楽しい事やってんだかさぁら、もっと楽しそうにやれよ!そんなんじゃ人来ねぇぞ!」
たしかにそうだった。人を集まることに意識がいってしまい、自分たちが楽しむことを忘れていた。
楽しいからやるのだ。
今回も観客は来なかったが、ナカイさんの言葉によって2人の考えは変わった。
<風>
作詞 ケイ
ここに変わらないものがあるよ
ここに変わらないことがあるよ
だけど変わる気持ちがある
変わろうとする思いがある
このままじゃ僕等ダメなんだって気がついた
後戻りはしないよ ちょっと振り返って見てみるだけさ
笑いあった昔だね 今は忘れてたキモチ
戻れるかな 戻ろうよ 僕等変わるんだから
風がこの場を吹き抜けた