6 ペンギン
路上ライブをやってから1日が経ち、練習で話し合いをした。
リョウ
「ライブやってん時、風とか吹くとノートめくれて見えなくなったりしたからさぁ、楽譜立ては必要だよ。」
リョウが楽譜立ての必要性を説明する。
ケイ
「俺もそう思った。あと、下ばっかしか見れないから、前を向いて唄いたい。」
ケイも必要だと思っていた。
ケイ
「家の近くに楽器屋あるから今度買っておくよ。」
リョウ
「あぁ。よろしく!あとは、曲増やすくらい?」
ケイ
「とりあえずはそうだね。それに、今日路上ライブ見れたらまたなんか見つかるかもしんないしね。」
路上の時に言っていた、他の人達のやり方を今日見に行こうとしていた。
リョウ
「今日やってんかなぁ?」
見たことがある、といっても今日確実にやってるとは限らなかった。
ケイ
「まぁ、いいんでない。」
だんだんと辺りが暗くなっていき、夜になった。大体は夜に路上ライブは行われる。昼間でもやってる人はいるが、夜の方が人通りが多い…気がする。
そんなことを2人は全く思わず、夜の町に出かけた。
ケイ
「前、どこで見たの?」
ケイが見たことがあるリョウに尋ねた。
リョウ
「たしか駅前ら辺でやってたと思うけど…あっ!」
リョウが指差した方向をケイが見た。
そこには、1人で唄っている男性がいた。
ケイ
「いた!1人でやってるんだ!」
リョウ
「行ってみんべ!」
2人はやってるところに移動した。
そこには、観客はいなかった。どうやら2人が最初の観客らしい。
男
「どーも!!」
その男は元気な声で挨拶してきた。
リョウ
「どーも。」
リョウは圧倒された。
男
「これ、どうぞ!よろしくお願いしますね!」
そう言って、2枚の紙を2人に渡した。
コウキ(おそらく名前)と書いてあり、ライブをやる時間と日にち、どんな曲をやっているかなどが書いてあった。
コウキ
「じゃあ聞いてください!」
そう言って唄い始める。
2人は曲を聞いた。
下手でもなく、抜群に上手いわけでもない。そう思った。
しかし、回りにはさっきまでいなかった観客が3〜4人増えていた。
曲が唄い終わり、拍手をする観客たち。
コウキ
「あざッス!あざッス!いや〜仕事終わりで今やってるから、体に応えますわ!でも、みなさんの拍手のおかげで癒されますデス!」
観客の1人が質問する。
観客
「なんの仕事してるんですか?」
コウキ
「見てのとおり、清掃員です!」
見た目じゃわからない。
観客
「いやわかんないですよ!」
ちょっとした笑いがおきた。
リョウとケイは1曲聞き終わると、その場から離れようとした。
ケイ
「頑張って下さい。」
コウキ
「ありがとうございます!またよろしくどうぞ!」
ケイ
「どうだった?」
その場を離れ、ケイが聞いた。
リョウ
「技術はすげー上手いってわけじゃないね。普通だったね。」
ケイ
「うん。そうだね。」
リョウ
「ただ、話しが上手かったね。曲が終わった後の観客との接し方つーのかな?親しみやすい感じ?」
ケイ
「あぁ、そうだね。それ大切かもしんない。」
続けてこう言う。
ケイ
「自己紹介みたいなの紙に書いて来た人に配ってたし、看板も立ててあったね。」
リョウ
「インパクトだ!」
リョウがなにかに気付いた。
リョウ
「インパクトが必要なんじゃね?見る人にわかるようにさぁ!」
ケイ
「それあるかも。やっぱ、自分らの名前の看板とかあった方が、見る人はわかるしね。」
リョウ
「俺っちも看板とか作ってみよっか?」
ケイ
「いいね!」
リョウ
「いいところだけ真似してみんべ!」
他の人達のやり方を見るのは、どうやら役に立った。
練習の日になり、看板を作ることにした。
リョウ
「レッドパープルって書けばいんじゃね?」
2人はダンボールを板状にして、自分達のグループ名を書いてみた。
ケイ
「できた!」
ケイが書いたのを見る。細い字でレッドパープルと書かれていてた。
リョウ
「字、細くね?これじゃわかんないベ。あと、これなに?」
名前の横に書かれている、ペンギンみたいな絵を指差した。
ケイ
「これ、俺らのマスコットキャラとしてどう?」
リョウ
「すげーいらないんだけど。」
リョウが書いた看板を見せた。はっきりと書かれたレッドパープルという字はとても見やすかった。
ケイ
「ここ、すき間あいてるじゃん。」
ケイがそこに、さっきのペンギンみたいな絵を書き込んだ。
リョウ
「おい!何やってんのよ!…意外とあってる。」
ここに変なペンギンのキャラが誕生した。
ケイ
「じゃあ今度の路上の時に使ってみよっか!」
この看板で成果がでればいいが…。