19 向上の為に
葉留沢でのライブのおかげか、路上ライブで人が聞きに来てもあまり緊張しなくなっていた。
葉留沢みたいな大人数ではないが、人前に慣れてきた感じだ。
来ない日もあるが、人が来てくれる日の方が多くなった。
ケイ
「これからもっとたくさんの人に来てもらいたいけど、どうすりゃいんだろうね〜。」
リョウ
「曲作り、コピー曲増やすことはやってることだし、唄とかギターいきなり上手くなるなら苦労しねーし、う〜ん…。」
完全に行き詰まった状態。
マンネリ化だ。
リョウ
「やりまくるしかないね!」
最終的にはそうゆうことになってしまう。
すると、ケイがなにか思い付いた。
ケイ
「ちょっとさぁ、場所変えてみない?」
リョウ
「違う場所にするの?」
ケイ
「そう!人は来てるけどあえて他の場所でさ!別に今やってる場所でずっとやらなきゃいけないってわけじゃないし…どうかな?」
リョウ
「おもしろそうだけど、どこでやる?」
ケイ
「ん〜、Y駅とか?」
Y駅、あの有名なデュオが路上ライブをやってたとかやってないとか…そんな場所。
今やってるところと比べると、人は多いし、街ももっと都会だ。
リョウ
「Y駅か。いいね!すげーおもしろそう!やってみるかぁ!」
ケイ
「じゃあ決まりね!1回下見に行ってみる?」
リョウ
「行ってみよっか!じゃあ…」
リョウの仕事が休みの日に2人で行ってみることにした。
Y駅までに行くのにケイの街の駅から片道で1000円以上かかった。
電車で出会う2人。
リョウ
「電車賃けっこうすんね〜。久しぶりに行くけど、こんなかかったっけって思っちゃったよ。」
ケイ
「あんまし何回も行けないね。金が…。」
電車賃もかかるが時間もかかった。2人は1時間くらい電車で揺れながら、心踊らせながら座っていた。
ようやく到着する頃には空は薄暗くなっていた。
ケイ
「到着〜!やっぱ人多いなぁ!」
リョウ
「こっちは都会だね〜。」
夜になろうとしているのに、人が途切れることはない。これからさらに多くなろうとしている。
そこは都会。眠らない街。
リョウ
「やれそうな場所探してみる?」
ケイ
「そうだね。」
駅の周りを歩いていると、路上ライブをしているグループを多数見つけた。
ケイ
「おぉ!やってる!」
どのグループもスピーカーから音を出していた。
リョウ
「みんなアンプとか使ってるね。」
ケイ
「生音でやってる人いないのかなぁ?」
辺りを見てみたがやってる人はいない。
リョウ
「ここで今度やる?」
ケイ
「できるかなぁ?」
たしかに、駅の近くは人通りが多いが、やる人も多くなる。やれそうなスペースは今は埋まっていた。
とりあえず他の場所を探し歩いてみた。
リョウ
「ここは?」
さっきと違って人通りは少なかったが、いい感じのスペースはある。
ケイ
「そうだね。無難だね。」
リョウ
「じゃあ今度ここでやろう!」
とりあえず場所は決まった。あとはその日が来るのを待つのみ。もちろん練習も忘れずに…。
本番当日。
電車内での会話はいつもより少なかった。
リョウ
「なんか…緊張する。」
ケイ
「うん…。」
やることは同じなのに、やるとこが違うとナニカガチガウ感じだった。
電車の乗客が増えては減り、増えては減り、と地元を離れていくにつれ景色が変わってゆく。
都会だ。
そしてちょうど19時になる頃、Y駅に到着。
決めた場所に移動する。
途中にアノ場所を通った。今日も路上ライブを行う方たちが多数いた。人通りも多い。
都会だ。
そこからまた歩きだし、ようやく目的地に着いた。
人通りはやはり比べると少ない。
それでも都会だ。
O駅よりはいる。
Tシャツではちょっと風が冷たいことを感じる。もうすぐ秋ですねぇ。
でもそんなの関係ねぇ。
2人は声を揃えて言った。
リョウ・ケイ
「どうもー!」