17 葉留沢夏祭りライブ
日曜日。
葉留沢での夏祭りの日になった。
リョウはケイにメールした。
[今から行くよ!]
必要な荷物を持ってリョウは家を出た。
昨日のうちから準備をした、忘れ物はないはずだ。
電車の中で荷物をチェックする。
(忘れ物はねぇな)
窓の外の景色を見ると空は快晴で、自分を応援しているかのようにリョウは思った。
待ち合わせ場所にはケイの車がすでに止まっていた。
リョウ
「うぃッス!待った?」
ケイ
「んーん、今来た。」
リョウ
「お願いしまーす。」
車に乗り込むリョウ。
ケイ
「とりあえず俺ん家行こっか?」
リョウ
「いいよ。」
ケイ
「なんか、ワクワクしちゃってさぁ、昨日から準備とかしちゃったよ。」
リョウ
「ホント〜!?俺もなんだけど!」
やることはみな一緒だ。
リョウ
「遠足みたいだべな?」
ケイ
「遠足かぁ〜、じゃあ今日のおやつは500円までね!」
リョウ
「知らねぇよ…。」
ケイの家に到着する。
ケイ
「上がって。」
リョウ
「おじゃましまーす。」
スギヤマさんに言われた時間より、まだだいぶあった。
ケイ
「オリジナルは最近できたやつで、コピーは、みんなが知ってる曲にする?」
リョウ
「それでいこう!」
話し合いをしていると、ケイの姉がやってきた。
ケイの姉
「おはよー。」
寝起きだ。
リョウ
「おはよーございます。おじゃましてます。」
ケイの姉
「早いね。練習?」
その問いにケイが答えた。
ケイ
「今日、夏祭りがあって唄ってくれって頼まれたの。」
ケイの姉
「どこでやるのよ?」
ケイ
「葉留沢ってところ。」
ケイの姉
「へぇー、あの山のほうでやるんだ。」
(ケイちゃんのお姉さんは葉留沢、知ってるんだ…)リョウは思った。
ケイの姉
「ステージとかでやるの?」
そこんところはまったくわからない。
ケイ
「いや、わかんね。」
ケイの姉
「うちの友達もねぇ、音楽やっててライブとかするんだよ。」
リョウ
「そうなんスか。いいッスね。」
ケイ
「ってか、そろそろ行かなきゃやばくね?」
リョウ
「えっ?もうそんな時間?」
ケイの姉
「じゃ、頑張ってきなねぇ。」
2人はベタな感じで出かけていった。
ケイ
「いつもやってるとこ行けばいいのかなぁ?」
リョウ
「あっ!スギヤマさん、いるわ!」
車から下りる2人。
スギヤマさん
「ありがとねぇ!こっちでやってるからさぁ!」
スギヤマさんは上のほうを指さした。
そこは、広場みたいになっていて[葉留沢公民館]と書いてある看板が付けられた家があり、まぁ集会所的なところだった。
結構人がいる。
ここに住んでる人や、知り合いの人らしい。
スギヤマさん
「あっちにおにぎりとかあるから食べてて、時間になったら声かけるからさぁ!」
そう言って、家の中に入っていった。
ステージはなかった。おそらくその場でやるのだろう。
リョウ
「ちょっとキマズイね…。」
コソコソと移動する。
しかし、ギターを持っていたのですぐにばれる。
住人
「お兄ちゃんたちが今日、演奏してくれるの!?」
ケイ
「そ、そうですね。」
住人
「ありがとねー!こっち来てご飯食べてよ!」
住人たち
「おいで!おいで!」
リョウ・ケイ
「ありがとございます!」
食べ物はここの人たちが作ったもので、おにぎり、煮物、おしんこ、豚汁など、たくさんの種類が大量にあった。
どれもうまかった。
が、ぶっちゃけ緊張して味わってらんなかった。
スギヤマさん
「じゃあそろそろ、いいかしら?」
ついに声がかかった。
心臓がドキドキしているのがわかった。
いまさっきまで、みんなと食事をしていたところより離れたところに、いすが2つ並べられた。
荷物を持ってそこに移動する2人。
楽譜立てとノートをだしてセットする。
続いてギターのチューニング。みんなの視線がこっちに向けられてるのがわかる。
スギヤマさんが近寄ってきた。
スギヤマさん
「準備はもうできたかしら?」
リョウ・ケイ
「ハイ!」
もうやるしかない。
スギヤマさん
「えーと、名前は?」
そういえば言ってなかったっけ?
ケイ
「ケイです。」
リョウ
「リョウです。」
スギヤマさん
「ケイ君とリョウ君ね!わかりました。じゃあ始めちゃうよ?」
リョウ・ケイ
「だいじょぶです!」
スギヤマさん
「みなさん!ではこれからギターの生演奏をしますので、お聞き下さい!」
パチパチパチパチ…
見たところ、20人くらいはいた。
こんな大勢の前でやるのは初めてのことで、2人の頭の中は真っ白になっていた。