11 新たな…
ケイ
「よっしゃ!できた!」
話し合いの結果から、いい曲をやるという結論に達し、ケイは曲作りにはげんでいた。
(今日、リョウちゃんに聞かせよ…)
今日は練習日だ。
ケイは駅に向かった。
そこにはすでにリョウが待っていた。
プップッ
クラクションを鳴らすケイ。
その音に気付き、リョウがよってくる。
ケイ
「ごめん、待った?」
リョウ
「んー、今きたとこ。」
いつものやり取りで練習場所に向かった。
その場所に着くと、もうすでに家族連れの人達がそこにいた。
ケイ
「できないっぽいね。」
リョウ
「そうだね。行ったら迷惑かけんね。どうすんべぇか?」
しかしそこしか練習場所はない。
ケイ
「…たしか山の方に練習できるようなトコあるかもしんない!」
ケイにはおもいあたる場所があるようだ。
リョウ
「ほんと!?じゃあそこ行くべー!」
いきいき広場も山の方にあるが、ケイが思うところは、それよりもさらに山の奥らしい。
リョウ
「へぇ〜、キャンプ場なんてあるんだね。」
移動中の車からリョウが言った。
そこはキャンプ場があったりするところだ。
ケイ
「川とかもあるよ!小さい頃よく行ったなぁ〜。」
そこは川とかがあったりするところだ。
車は対向車ぎりぎりかわせるぐらいに細い道を進む。
リョウ
「これトラックとかきたらどっちか戻んなきゃだめじゃね?」
ケイ
「あんま車とか走ってないけど、たまにきたら、そうしなきゃ無理だね。」
どんどん道を進む。
空を覆いつくすくらいの木々の枝のすき間から太陽の光が差し込み、道を照らしている。昼間だというのにここは暗い感じだ。しかし、その光のおかげでところどころにはっきりとした明暗がでている。
そんな道を、ケイが運転するオンボロの車は進んでいった。
リョウ
「着いたぁ!ここかぁ!」
そこは[太陽の丘]と書かれた看板が立てられていた。
ケイ
「ここいいでしょ?ちゃんとベンチもあって、山だからうるさくないと思うし。」
リョウ
「すげー景色いい!キモチいー!マイナスイオンでてんな。」
興奮ぎみのリョウ。
ケイ
「あっちが無理な時さぁ、今度からこっちでやろっか?」
リョウ
「でもここ民家ない?平気?」
そう言って、リョウが看板を見つけた。
リョウ
「ん?ハルサワ?この地区、葉留沢っていうの?」
ケイ
「そうなんじゃない?俺もよく知らないけど、まぁ、平気でしょ!そんな近くに建ってるわけじゃないし。」
リョウ
「…そうだね!言われたらやめればいいしね。」
ケイ
「練習しよっか?」
リョウ
「オーライ!」
ギターをとりだす2人。
その場所で初めて唄ってみる。
ケイ
「なんかさぁ、いつもの場所と違う感じがしたんだけど。」
リョウ
「やっぱ?なんか、響いてないっつーか、さえぎるものがないから、声がとおるっつーか…。」
ケイ
「そうそう!そんな感じ!やる場所が違うだけで聞こえ方も変わるんだね。」
リョウ
「でも悪くはないよね、この場所。むしろ最高だね!」
ケイ
「ただここ…暑いね。」
山の上なので日差しが強いのもあるが、気付けば季節は夏に移り変わろうとしていた。