朧気な夢
いま、彼氏が私のお腹に頭を乗せて寝ている。
口が半開きで、たまににへら、と笑う様子はなんとも間抜けで滑稽だ。
ガタイのいい彼氏が少し高めの声で「ん…」なんて言おうものなら、それは最早私の腹筋のトレーニングでしかなかろう。
私は多少の寝返りに全く動じることなく、スマートフォンをいじり続けるのであった。
…しかし…乗っかられた腹が温かい反面、もう二時間もこの態勢は、少々キツイものがある…
そろそろ起きてほしい、主に私の右尻のために。
そう思い、何度か足を組み替え、座り直し、彼氏の頬を摘まむのだが、むしろいびきを誘発する行為でしかないことは既に承知済である。
いたずらで首や脇をくすぐったり、胸を揉んでセクハラしたり、耳元で起きて、なんて囁いてみるも効果なし。
挙げ句、(あまり上品なものではないが)圧迫され続けたお腹が軽く口笛を吹いても、ごろりと私の方に向きを変えた後に頭を私の腹に擦り付ける始末。
おまいさんはなにがしたいんだ?と、某巨大チャット風に問いかけたのも、ついさっき私に無駄な足掻きだと教えてくれた一つの教訓に過ぎない。
私の気も知らないで…
彼氏は呑気に、うーん…などと言ってまた寝返りをうった。
いま、私は我慢を強いられている、主に彼氏のうたた寝によって。
でも、正直にいうと、折角の休みに…という気持ちもある。
仕事で疲れているのはわかっていた。
毎日残業で、帰りは9時をとうに過ぎ、私の2倍は給料を貰うべくがんばっているのは知っている。
私の寝る時間が早いのも、私がワガママを言って電話をしようと言うのも、私に時間を割かせているのも悪いとは思う。
けど、やっぱり、さびしい、な
もう4時だけど、起きたら何をしようかな、何を言おうかな。
こっそり枕を私の腹から枕に変えるのはどうだろう。
柄でもないけど、感情をそのままぶつけてみようか?
むしろ、私が寝てしまおうか…
早く、目を覚まして。
じゃないと、そろそろ拗ねちゃうぞ?
頬を膨らませながら彼氏の鼻を摘まんだら、少し苦しそうになってまたいびきをかきはじめた。
おはよう
おはよう
どんな夢見た?
…教えない。
えー




