なんでもいいから見える鎖を。
窓を見ると、いつの間にか、雨が降っていた。
感動した訳ではなく、
驚愕した訳でもないけれど、
私はしばらく、手を止めて外の景色を眺めた。
今外に出たら、この真っ黒に塗り潰された紙は、濡れて溶けていくだろう。
自分でも何が書きたかったのか分からないものを、きっと洗い流してくれるだろう。
しかし、それをすることを止めるのは、ただ単に自分が濡れることを嫌がっている訳ではなさそうだ。
----どうしたら、良いのだろうか。
君と唯一繋がっているツールは、君にとって好ましくないようだから、
私は使うことをはばかられる。
それなのに私は、君と繋がっていたくて仕方がない。
この雨に流されてしまわないか、不安で仕方がない。
ふと、紙に目をやる。
この黒は、もしかして、私の想い、欲望かもしれない。
こうやって、私は君をがんじからめにして、どこにもやりたくないのかもしれない。
ただ、ただ、君を純粋に好きだと想い続けるのは、難しいのかもしれない。
鎖。
鎖が欲しい。
それも、君が私に鍵を掛けた鎖。
一生取れなくて構わない。
君が繋いでくれるだけで良い。
それは、例え蚕が作った一本だけの繭で十分。
わがままだね、軽く鼻で笑う。
私は、紙を破り棄てようとしたけど、少し切れ目を入れただけで手を止めてしまった。