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月光
月の光を浴びて
少女は眠りに就く
自身の体が水銀に感じる
その感覚を心のどこかで楽しみながら
初めは魚だった
綺麗な海を気持ち良く泳ぐ自分
でもいつからか黒い影が日の光を遮り
ぱくりと一飲みされてしまう
お次は蛙だった
手が生え足が生え行動範囲が広がった自分
しかしいつかの雨の日に突然に命を終えてしまうことになる
それからは名も知らぬ虫だった
見たことの無い葉の上でよく分からないものを食べる自分
ただし自分を殺したのだけはよく知っていた
少女は微睡みの中
いつかの悲しみを思い出す
頬を濡らす涙の味を初めて味わいながら
月が光らせるその瞳をもう一度閉じて




