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短編集  作者: 篶-suzu-
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切り刻んだ心へ。

私の腕は短いから、君に届かないかもしれない


かさかさと紙が入った音のする緑色の服は、見慣れすぎて何も感じないもの


酷く強い雨は私の足音を丁寧に消していく


この先を右に曲がりましょう








きっと君は今日も来ないだろう


腕に刺さった針がじくじくと痛む


掠れたアナウンスが泣きそうな声に聞こえる


そのまま階段を上って下さい









頭での理解と、感情の変化が、全くリンクしなかった


途中で邪魔になって、結局、点滴パックのスタンドごと置き去りにした


通りがかった部屋では爆笑する音が盛大に聞こえてくる


もう一つ階段を上って下さい









君が私を好かないことなんて、はなから知ってるの


入院生活が長いせいか、ほんの少しの上り下りが辛くて堪らない


雨が少し止んだようで、傘の忘れ物を訴えるアナウンス漸く聞き取れた


間もなく目的地付近です








扉を開いて君が、なんていう妄想を、もう何回しただろうか


息の整わないままの私だが、それは病気のせいなんかじゃあないって信じてるの


扉が閉まる音が聞こえるくらいまで、空は落ち着きを取り戻した


目的地に到着しました









私が今一番怖いことは、私の巻き添えを食らってしまう誰かが居た場合のことくらいかしら


スリッパを揃えて置いて、用意した紙を添える


準備も完了しています








未練は、もちろん君のことだけど、それが叶うことは無いでしょう


この町で一番高いこの病院のフェンスを乗り越えた


雨はいつの間にか姿を消していた







私は君の姿を360度見渡して探したけれど


確認は出来なかった


一度下を見て人通りを確認した


君の名前を何度も呼んだけど、私の名前は一度も呼んでくれなかったよね


ジャンプして、体は自由を失った










目が覚めたら、ベッドの中に居た


見慣れた服に、見慣れた部屋


傷一つ無い体





医者は言う


「まだ自傷癖は治っていませんね、もう少し入院しましょうか」


ナースは新しい針を腕に刺した

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