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短編集  作者: 篶-suzu-
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左右非対称のアート

片割れは酷く高い為、僕は見上げることが日常へと化している。


空を抱きかかえるように両腕を広げる君の周りをぐるぐる回り、今日の僕のポジションを決めた。


僕と君の視線がぶつかることは無い。


だけど僕は、君の傍に居るだけで、君の身体にもたれかかるだけで、君と融合して一つのものになった気になってる。


それで別に良い。

悪い理由が見当たらない。


皆が皆絶望を掲げるこの世で僕らは、非対称のアート。


制作者は神と言って差し支えないだろう。


もう決して動くことの無い君を見つめながら、僕はあまりにも堪えきれず。


涙を流した。





---------



もしももう一度口が動くのだとしたら、俺は彼に離れろ、と叫ぶのに。


死んでしまった俺の身体は、やはり天を仰いだ形で今日も彼を引き寄せる。


彼は幸せだと言いたげに微笑むけど、俺と一緒に生きていた時よりも遥かに生気が無いことが、俺の何よりの未練。


俺から離れられない彼と、彼をここから逃がしたい俺とは、無生産のループ。


しかし奴らは確実に彼をも殺す悪夢を作り続けているだろう。


涙を流す彼を慰める術を失った俺は、ただ神に彼を救うように、と願うばかりである。




---------


ある男が、美術館に足を踏み入れた。


何者も寄せ付けないオーラを醸し出す男は、黒いコートの両方のポケットに手を突っ込みながら、ただ一点に颯爽と足を進める。



見つけた。


我々を救う二対の救世主よ。



男は石像に凭れる少年の手を音がしそうなほど強く掴み、引き摺るように連れて行った。


その間、泣き叫ぶ少年に気を配る様子も無いまま。


暴れる少年をものともせず、最終的には傷がつかぬように抱きかかえて。




涙を流さず天を仰いで少年への助けを求める物体と、


助けを求めず涙を流して諦めをその身に纏う少年。



人々は呑気にも、彼らも芸術品の一部と見なし、愛で鑑賞する。



それらが人々の為になど動かないことを承知済みで。





彼らは左右非対称のアート。


対称だからこそのアート。



なおかつ、人々を絶望の淵に追いやる起爆剤。



物質の方の彼が目を覚ました時、黒服の男に抱えられた少年はまた涙を流して喜ぶだろう。



それが世界の文字通り破滅の第一段階だと理解しても尚。





アートの片割れは未だ泣き叫ぶ。


彼らのハッピーエンド、そして人々のバッドエンドは、今、スタートを切った。

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