文学少女には雨すら個性的に見えるらしい
一度目を離して見てみる。
顔を物理的に遠くすることによって、他人が見るような客観視に少し近づける気がするからだ。
要は自己満足なのだけど。
没頭して早3時間、空腹と眠気が急激に襲ってくる始末の中、私は持っていたシャーペンを置いて椅子の背に凭れた。
頭ががくんと後ろに落ちて、喉が詰まるような感じがあるが、それがなんとなく気持ち良かった。
時刻は午前2時。
丁度丑の刻と呼ばれる時間。
いつもなら私には見えない霊的ななにかを恐れて布団に潜るのだが、今の私はむしろ書き物のネタを歓迎していた。
きっと、20時間くらい起きっぱなしだから、テンションがおかしくなっているんだわーいやっふー。
未だ椅子にぐったりと体を預けている私は、体制を変えることもせず首だけで左を向いた。
勿論居ない、というか見えない霊的ななにか。
もはや勢いで首を200度くらい回してみるが、見慣れた天井が私を囲んでいるのみである。
無論、視線も感じない。
ゆっくりと頭を持ち上げれば、血が急激に冷めていったような感覚がした。
ふと時計を見れば、あと5分で3時になるところだった。
そろそろ本当に眠いので、カーテンを閉めに窓際に立つ。
残念、何も居ない、と思った私はなんて往生際が悪いのだろう。
カーテンを音も立てずに閉まるのを、面白くないような顔をして見ている私が窓に映り、徐々に失せていった。
電気を消して布団に潜り、ケータイのメモ帳を開く。
何気なく書いた言葉を読み漁り、原案を焦って探るのだけど、それは杞憂だと私に訴えるがのごとくピントの合うものは目に入らない。
自分で立てた3日を一番苛々して見ているのは私。
人に見せるものという感覚を最も抱いている、なんて思っていることにしている私。
ニュアンスを大事にし過ぎて伝えるべきことが伝わっていないという支障が出ている私。
私。私。私。
いつの間にかケータイの光は消えて、でも頭の中では電子回路が巡る巡る。
一字一句聞き逃さない、つもりだったのに何の話してたっけ?
ああ、溢れる涙が欲しかった。
溢れすぎて、人にも影響を及ぼすくらいの涙が欲しかった。
その欲の為に流す涙なら、人目を避けて流し続けたのだけれど。
パフォーマンス?
出来るだけマシだと思わない?
お手玉の出来ないピエロなんて、それこそ道化でしょ。
なんだか苦いものを口に含んでいる気になってきて、思わず顔をしかめた。
何かキーが押されたのか、ケータイがまた光を放ち始める。
もういいよ、君の役目は今日は終わり。
起き上がって、暗闇の中、充電器を探し出して接続すると、ほっとしたと言いたげな橙色の点灯。
ああそうですか、君も私を拒んでいくのですね。
ばふっ、枕に思い切り倒れかかると、私はきっと夢にも拒否られていると思わざるをえない睡眠を獲得したのだった。




