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短編集  作者: 篶-suzu-
27/86

「緊急搬送です!女性と男性が重体で、場所は…」

「やってやんねぇ」



心の中で口汚く罵った言葉を口には出さず、代わりに、思いっきり壁を殴った。

思ったより堅かったそれは、俺の手と響く音を想像以上に変化させた。






あちこちでざわめきがきこえる






『またあいつか』『また派手に…』『ざわざわ』『ちょっと八つ当たりし過ぎじゃない?』『結局あいつも諦めたのか』『あの足ならもう無理ね』『大会も別のやつが』『ざわざわ』『ざわざわ』





ざわざわ





ああ、煩い、煩い、煩い!!









松葉杖を2つ、俺の居る階段の下へ投げ入れる。


片方は、もっと変形した。










俺の足。



俺の右足。



俺の本当の足。




「ぅああああああああ!!!!!」



響く声。



ざわめきが少し小さくなって、またギャーギャー言い出す。




みみざわりだ







両耳を切り取りたい、


でも切ったところで不便なのは俺唯一人。






今居る階段の上へ上がって、飛び降りたい、


でもそんなことしても俺の優しい人達を今以上に悲しくさせてしまうだけだし、一番悲しんで欲しいやつは笑い飛ばすに違いない。







隣にまだ、あいつが居れば、と思うけど、


そんなこと思ったって足と同じように戻って来やしない。






手で壁を殴ったって。


松葉杖を投げたって。


手術をして直したって。


死んだって。


泣いたって。


作り笑いしたって。


寝たって覚めたって。


叫んだって。


誰も、俺を直接責めない、運だって言うばかりだ。










先生が松葉杖を持って走ってきた。軽く怒られた、涙目になられた。


『自分を責めないでね』


いつの間にか、ざわざわが消えていた。






俺は、その手を振り払うことでしか、感情表現が出来ない。

ただのこどもだ





別の先生が、車椅子を持ってきて俺を無理やり乗せた。動く左足と両腕で、壁から離れないように抑えようとしたが、両足のあるやつ2人に力で及ばなかった。


畜生、畜生、畜生。



『無理しないでね』これ以上どう無理しろと?


『現実を受け止めて』受け止めているから悲しんでるんだろ?


『元気出して』じゃあお前らも右足無くしてみろ?




「何が分かるって言うんだ」




今でも、もう無い足首が痛むんだぞ?


親に迷惑かけてばっかなんだぞ?


好きな人も守れなかったんだぞ?


知らないだろ、


隣に居る血まみれの塊が彼女とか


自分の踵が目の前にある感覚とか


すげーって写メ撮られる心境とか


お前ら知らねーだろ?




左足でけんけんして、車椅子を飛び出す。


ふらついて、でも事故前の左足より発達した足で階段を登る。


叫びたかった、でも2人のせんせーが力ずくで止めた。




「ああああああああぁぁぁあぁぁ…」




視界が滲む、喉が痛む、息が切れる、




なんでおれだけここにいる?




あいつは?




どうせちこくしてて、そのうちくるさ




ああ、なんかうるさいな




あ、おれのこえがきこえる




せんせーのこえもきこえる




いたい。たたかれた。




アマッタレルナ?なに、それ、おいしいの?




いたい、せんせーあしふまないでよ…あれ、おれのあしは?




「ねぇせんせー、おれのあしは?」




アシハモウナイノヨ?イイカゲンニシロ?




ねぇさっきからじゅもんとなえるの、やめて?




うるさいよー




うるさいよー




ねぇ誰か助けて

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