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禁忌を抱く手  作者: 希望
6/7

それから

 あれから七年がたつ。

「すっかり髪が伸びたなぁ、希。」

 めぐ姉は相変わらず幼い子供にするように私の頭を撫でる。

 望が養子に行ってから七年。めぐ姉もゆー兄も最初はすごく怒っていたけど、今は望の分も私を可愛がってくれている。七年の年月の間に私は望に守ってもらってばかりいた子供の私ではなくなり、あの時よりは大人になったと思う。

 大人になったら迎えに来ると言った望の言葉を信じて、願掛けのように髪を伸ばして待っている。

 それなのに今日、私はお見合いをするのだ。なんでも相手方が偉い人で断れない上、見合い相手が私じゃなければ結婚しないなんて言ったそうで顔を見るだけでもと見合いの席がもうけられたのだ。

 嫌々ながらもめぐ姉とやって来たのに、それなのに、それなのに、相手方が遅れていてかれこれ三十分も待たされている。

犬神いぬがみさん、息子さんはまだいらっしゃらないのですか?」

 短気なめぐ姉はいらただしげに時計を見ているが、私の見合い相手の父親はのんきに笑っている。

「息子は今、急ぎの仕事が入ってあと二十分ほど遅れるそうですよ。」

 そのせいで私達は一時間ほどまたなくてはならなかった。

 ばたばたと騒々しい足音がして見合い相手が入って来た。けれど、私は俯いて顔を見えないようにした。

「遅かったな。一時間も待たせやがって。」

 犬神さんは息子さんに軽口を叩くが、息子さんは無視して座ってしまった。

香山かやまさん、これが私の息子です。お宅の希さんとは同い年で生まれた日も一緒なんですよ。」

 見合い相手の息子さんが口を開く。

「香山希さんですね。俺は犬神望です。よろしく。」

 ばっと勢いよく顔を上げると、少し大人びたけれど昔と変わらない優しい微笑みを浮かべた望が・・・そこにいた。

 望がいたのだ!!

「の・・・ぞ・・・・・・む?」

 隣にいるめぐ姉も知らなかったのか驚いた顔をしていたけれど、私は望が約束通り迎えに来てくれたことが嬉しくてたまらなく、抱きついてしまった。かすれた声で望を呼ぶ私を望はにっこり笑って抱きしめてくれた。

「ただいま、希。約束通り迎えに来たよ。」

 あの頃より遥かに逞しくなった望の体に力一杯、抱きついた。望も私のことをぎゅっと抱きしめてくれた。

 もう離れたくない。もう離れない。そう心に誓った。

 幼い頃から心に秘めてきた私と望の恋物語はこうして成就したのだった・・・。

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