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いのせんっす!2-4

 『殺す! と思ったら、既にその行動は終わっているんだあァッ!』 って言葉は、誰の言葉だったかな?

 まあ、どうでもいいんだけど。

2-4

 潤はセンに額を貫かれて倒れていた。正確にいうと昨日俺がされたみたいに、ステッキの柄先で突かれたという事なんだが。

「な、なんて事するんだ!」

 俺は慌てて潤の額に手を当てる。

 赤くなっているが、血は出ていない。

 倒れ方も計算されていたのかたまたまなのか、どこかを強く打ったという事もないようだった。

「潤! おい、大丈夫か! 潤!」

 俺の呼びかけに潤は答えない。

 返事が無いだけど……。

 息はしていてただの屍ではないようだった。

「大事なのね、その子の事」

 とセン。

 なんか少し尖って聞こえた。

 ……何か不機嫌になるような要素があったんだろうか。あったんだろうか。あったんだろう。

 だが……。

 なんにせよ今回センは加害者であって、こいつの言い分を気にする必要はない!

「あ、当たり前だ! こいつは俺の幼馴染なんだぞ! こいつは、こいつは俺にとって家族みたいなやつで……!」

「幼馴染? 家族? ふぅん……変なものに執着するのね」

 私にはわからない、といった様子だ。

「お前にとっていくらどうでもいいもんでもな! 潤を傷付けるのは許さん! 絶対にだ!」

 そこは俺にとって譲れない一線だった。

 潤はあまりにも俺に近い存在で、だからこそ恋愛対象としてなんてとても見れない。

 だけど、それでも、いや、だからこそ俺にとってかけがえのない存在で……!

 こういう時、俺は恋より愛を取れる人間だ。

 俺は、人間なんだ!

 ……意味不明だけど、いいんだ、それで。

「こうしなければ私の戦いに彼女が巻き込まれる事になる。あなたはそれでもいいの」

「うっ」

 想像してしまう。

 潤にあの気味の悪い触手が寄生してしまっている所を。

 潤の目は光を無くし、夢遊病者のように徘徊し、そして……目から、首から、体中の至るところから、あの触手を飛び出させ、それなのに……こちらを笑む。

 ――そんなのは絶対にごめんだ。

「いや、まあ、絶対に必要だったって言うんなら……」

 竜頭蛇尾とはこの事か。

 しかし……。

「ていうか、実際お前は何をしたんだ?」

 そこで背後から人の動く気配がする。

 見ると先程センが倒した肉人形ならぬ我が隣のクラスの生徒達(一部)男女混合が、目を覚ましたようでもぞもぞと「う、ううん」「あ? あぁ……」とか言いながら「い、いやあん、そこはダメー……」などとは言わずに起き上がろうとしていた。

 「ちょっとあんたどこ触ってんのよ?」「お前こそ!」とか言ってるのはいたけど。

 こいつらに寄生していた化け物は本当に消滅しているのか?

 一瞬、俺は身構える。

 だが次の瞬間、一番最初に立ち上がった男子生徒は呆けた顔でこう言った。

「あ、あれ、俺、なんでこんなところで寝転がっていたんだ?」

 ……大丈夫そうだ。

 そして俺は思い出す。屋上でセンに言われた言葉を。


「やっぱり、消えてなかったんだ。記憶」


 つまりセンは、記憶を消す力を持っている。

 何故か俺には効かなかったようだが、そういう力を持っているのは間違いないだろう。

 そういう魔法を、潤もかけられた(ステッキの柄で零式でない打突をしたようにしか見えなかったけど)。

 危害を加えるのが目的ではなかったという事か。

「あいつらの記憶を消す時はあの白い光に記憶を消す力もあったんだろう? なんで潤には、直接ステッキから魔法を打ちこむんだ?」

 小声で聞いてみるとセンは真顔で、

「だってその方が気分いいから」

 おいおい。

 そしてさらにセンは続けて、

「冗談よ」

 冗談なんだかどうかさっぱりわからん。

 一応笑ってはいたけど。

 よく見るとその笑顔はちょっとかわいい。

 いや、すごくかわいいんだけど、

 うん。

 ……だがそれは今は関係ない!

「直接魔法を打ちこんだ方が、より正確な記憶の削除ができるのよ」

 それから俺の方を見てからいぶかしげに首をかしげ、

「君には効かなかったけど」

 センはステッキを既に宙空にしまって(消失させて)いたが、なんだかもう一度それを取り出して俺の事を殴打したそうな顔をしている。

 じり。

 一歩俺の方に、センが寄ってくる。

「や、や、やめとこうぜ? うん」

 何がうんなのかわからないが慌てて俺がそう制止するとセンは唇を噛むようにして、

「あむう」

 なんだその胸打つような喋り方は。

「まったく、今時の魔法少女はどこでそんな言葉を覚えているんだ?」

「禁則××です」

「本当かよ? なんか文字消し入ってるみたいな声がしたんだけど」未来から来たんじゃないよな!?

「気のせいじゃない?」

「気のせい。そっか気のせい、気のせいか」

 多分嘘だ。

 どうでもいいけど。

「私の世界はあなた達の思念が入ってできた世界だから。知ってるような言葉が出てくる可能性はある」

「……あっそ」

 異世界設定を伝達されたような気がするけどこんな感じで伝えられるとやっぱどうでもいいってなる。

 と、そこで

「う、うぅん……」

 俺の腕の中にいた幼馴染が息を吹き返したようだった(死んでないけど)。

「あ、あれ、俊ちゃん、私、え、きゃっ!」

 眠り姫は王子様でない人に抱きかかえられている事に関して若干の驚きを隠せないようだった。

 ……別に隠す必要があるのかどうかわからないけど。

「え、俊ちゃん、その隣の女の子、誰?」

 幼馴染の潤は俺の事を、俊ちゃんと呼ぶ。

 だがそれは今はどうでもいい。

 問題なのは他クラスに合法無許可侵入した男女が各一名ずついた事であり、俺の幼馴染な眠り姫はその女男の関係について興味を持たれたようだった。

「えーと、あー、本日俺のクラスに転校してきた、白夜千さん」

「よろしく」

 すぐに挨拶をするセン。

 なにか思う所はないのか。

 一応俺とかなり親しい感じの女子ではあるのですが?

 こちらの世界の人間を利用する為には既に事態に巻き込まれ気味の俺と親しい人間とも親しくしておいた方が得なのでは?

 だがセンは何も考えてない、というよりどうでもいいように対応する。

 つまり、全然「よろしく」してない。

 目も一瞬しか合わせてないし。早く自分への興味を強制終了させたくて仕方ないといった様子だ。

「よろしく……じゃなくって! なんでその転校生さんと、俊ちゃんが一緒にいるのかな? しかも私の教室で!」

 反射的に返事をしてしまったあとに何かしらの疑念を抱いた様子の潤。

 まあ、自分のクラスに別のクラスの生徒が男女ペアでいたりしたら、変な気はするよな。

 しかもさっきまで意識失ってたわけだし。

 ……ていうか、さっき意識を失う前にも俺の事一瞬見たと思うんだが、もうあれは覚えていないのか。

 いや、一瞬過ぎて記憶に残る暇も無かったのかもな。

「うーん、これは話すとなかなか長くなると申しますか……」

 というか、返答に困る。

 潤に変な誤解をされても困る。

 いや、そこから何か始まってくれたらありがたいような気もするんだが、どうも潤の声が少し尖っている。

 俺とセンの間には悲しいくらい特に何も無いというのに、どうしてだろう?

 肉体的にはキスまではしたものの精神的に両想いかはまだまだ謎……というかセンも俺の事が好きなような事を言っていたがどうも表現の方法が直接的過ぎて精神的に両想いになれているのかどうかよくわからないというかうん……俺にはよくわからない。

 とにかく、まだ彼女になったわけじゃないんだから、センとは何でもない! 何でもないんだ!

 それなのに潤は何故か感情的な声を俺にぶつけてくる。家族みたいな潤が。

 なんでなんだ?

 普通に考えてこいつだって俺にはそういう感情しか持っていないはずなのに。

 おかしい。

 女の子は不安定になる時もあるのですよ、とかいう奴なのだろうか。

 男にも下劣な意味でそういう生理的年齢的成熟的白濁黄色人種的な問題はあるので、理解を示した方がいいのかもしれない。

 直接そうなのかと聞くわけにもいかないから、黙っているという事なのだけど。

 黙っている。……それが一番賢明な選択なのなら、センはこの世界で一番賢い女の子だったかもしれない。俺の方を向いて眉一つ動かさず、

「早くこの場を離れた方がいいわね」

 そうして俺の肩をつかみ、無理やり立ち上がらせる。

「痛い!」

 握力いくらだよって感じだった。

 もちろんセンは俺のそんな言葉に耳を貸すはずもなく。

 センに引っ張られた事で俺は立ち上がらざるを得なくなった。

「わきゃきゃっ! ちょ、ちょっと! 急過ぎりゅう!」

 何が急過ぎるのかわからないがパニくり具合のせいで若干舌足らずになった潤を無視して俺はお姫様だっこのまま抱きあげ(させられ)、そこから人形を置くみたいにして丁寧に立たせた。

「も、も~なんなわけぇ?」

 状況を理解できていない潤がぼやいているが、センはそのまま俺の右肩を左手でぐわし、レベルでつかんだまま、

「行きましょう」

 廊下の生徒達は意識を取り戻して一通りの喧騒も収まり、教室に戻ろうとしている所だった。

 その人の波を押し分けながら俺達は教室を出ていく。

 すれ違う人達が「ん? こんなやつこのクラスにいたっけ?」みたいな顔は……特にしない。

 みんな、自分のおかれた状況(何故か廊下でぶっ倒れてた事件)を整理、理解しようとするのに忙しいようだった。

 潤だけが、

「ちょっと俊ちゃ~ん! 待ってよぉー!」

 とか背後で言っていたが、センが放してくれそうにもなかったから、左手を挙げて答えておく。

 俺は本当は右利きだったんだけど。

 センが俺の肩から手を放してくれなかったから。

 確かにあのタイミングで教室を出ないと他の生徒達にまで変に注目される事にはなっただろうけど、お前力入れ過ぎ。

 魔法少女の力って、普段からこんな強いもんなのかねえ?

 異世界からきた潜伏者みたいなのって、力加減とかも普通の人間並に制御しているもんだと思うんだけど。


謎のヒロインは何故か力を込める、込める!

アイテテ、という感じで次へと続く!

登場、学校、学校が終われば……? そう、下校だ!(下校シーンは多分ないよ)

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