いのせんっす!5-4
最後の方で新キャラ出すとか次回作へのつなぎか?
とみせかけて特に続編書く予定はいまのところないという。
しかし女性の師匠役というのは巨乳というのがテンプレな気がする。
逆に師匠役の方がツルペタとかってのもギャップがあって面白いのか。
5-4
「お姉さま! お姉さまお姉さまお姉さまマナキお姉さまあああぁっぁぁあぁあぁぁ!」
マナキお姉さまと呼ばれたその女性は、少し困ったような表情をしていた。
自分の胸にセンが頭を埋めていたからかもしれない(というかそれ以外に考えられないけど)。
衣装は色とか細かい所は違っていたが、センと同じように異能戦士の衣裳だと一目でわかるものだった。
二目見ると彼女の体つきからして、より窮屈そうに衣装がなっている事に気付く。
三回見てもあまり変わっていなかったが三日で飽きるという事も無さそうな美しい体型だった。
もちろんというか、人間の理想が限界まで詰め込まれたくらいの美人だ。
センとは違って年齢相応に落ち着いた雰囲気も併せ持っている。
センが落ち着いていないとはいわないけど、なんかセンのはわざとクールぶってるように見えるというか。
容姿的年齢と態度があんまり一致していなかった。
……というか、そのセンは今度は幼稚園児くらいまで若年退行しているみたいだ。
「あうあうああぁっぁああ、おねえさまおねえさまおねえたまあぁぁ」
前言撤回、赤ちゃんまで退行に変更。
進行方向は変わらないが退行位置は変わったみたいです。
特に意味はない。
俺の脳の活性化のせいだろう。
おなかだったらビフィズス菌で済んだんだが、過疎地に巣食う寄生虫にでも寄生されて俺の認識がおかしくなっているのかもしれない。
というかそうであってくれ。
目の前の光景がかなり大分完璧に信じられない。
俺の日本語の乱れがまれによく発生するのもきっとそのせいなんだ。あーあーあー。
全ての生徒に寄生した邪念体は、マナキさんが宿主を殺さずに除去してくれた。
正直今の状態のセンを見られたくないから、しばらく誰も起きないでほしいと思った。
マナキさんはセンの頭を撫でながら、
「驚いたでしょ」
ええほんとうに、とマナキさんに返す代わりにただ俺は呆けて見ていた。
目の前の光景が理解できない。
理解できないけどただエロいなとは感じていた。
……マナキさんが男じゃなくて良かった。なんとなくそう思った。
そういう属性で興奮できるようにはなりたくない。NTRだったっけ。ニュータイプライザーとかいう意味だったよな。
「この子、私にぞっこんなのよ」
センはまるで別れたご主人さまに久方ぶりに会えた忠犬のようにして、その背の高い女性の胸の谷間に顔を埋めている。
てか、ほんとに犬みたいになんかぴちゃぴちゃちゅーちゅーした音が聞こえるような……。
「あっ、こらっ、ばか! そ、そんなとこなめちゃダメだってばぁ!」
どうやらとてもまずいことになりつつあるようだ。
「ふぁうううぅぅ、おねぇさまぁあ、しゅきですぅう。ん、ちゅぱ、ちゅぱ」
女性同士のこういう戯れってほんとなんだかどうなんだか判断が難しくて困る。
冗談だよな。
うん冗談だ。
そうわかっているのに、若干吾輩の顔が紅潮してしまうのも致し方ないような!
「ていうか、マナキさんはどうして急に現れたんですか?」
その言葉を聞くとセンも一瞬動きを止め、マナキさんの胸の隙間から顔を上げ、
「ほっ、ほうでふよぉ~。マナキお姉さまがいなくて、私、とっても寂しかったんですからあああぁあ。ずっと、何年も前から行方不明だったじゃないでふかぁ~」
「うーんと、ね。二年くらい前かな、私が以前ここの邪念体の討伐を依頼された時ね。その時の邪念体は倒す事ができたんだけど。それが結構強かったのね」
「ふぇ!? 異界で最も強い戦士として名高いマナキお姉さまが、強いと感じる程の相手だったんですか? あむ、むにゅむにゅ」
セン、とりあえず喋ったあとすぐに女性の胸に顔を埋めるのをやめろ。
もちろん意識してると思われるのもあれなんで口に出して注意する事もできないんだけど!
「あー、うん、あん♪ それでね? 私は負傷してて、もう瀕死の状態だったのね。それでちょうど近くに病院があったもんだから」
「あ、わかった、転生ですね? マナキ姉さま程の女神ならそれくらいの事……はむっ! ここはどうでふかぁ?」
「あっ、ああっ、ううぅん、私の教えた技術は衰えてはいないようね」(紅潮した顔)
(俺の)センに何を教えてるんだ! とは言わない。
うう。NTR属性。
うう。いやや。
「ま、転生じゃないんだけど。ちょっと失った『想い』を回復させる為にね。俊明君、あなたの魂に居候させてもらっていたのよ」
とりあえずそれを聞いての俺の第一声は、
「え、それって俺の行動一部始終見られてたって事ですか?」
信じない。信じないぞ。流石にそんなことは、俺は!
「うん♪」
それから付け加えて、
「君がベッドの下以外に色々隠してあるものもみんな知ってるわよ? それをどういう風に使ってるかも」
「ふぇ!? ベッドの下以外にも俊明って何か隠してるの?」
谷間越しに見つめ合う二人。
「そうよぉおおおぉ? こっちの世界の男の人は欲望に忠実な人ばかりだから気を付けなさい」
「私はお姉さまさえいればそれでいい」
え。ちゅぱちゅぱ。
「ええ。良い答えね。でも、なんなら俊明君に直接聞いてみなさい。どこに、どんなものを隠しているのか」
言われてセンはマナキさんの双乳から顔を離し、興味ないけどとりあえず聞いてやるかみたいな顔をしてこちらを見る。
「う、うあああああノーアンサーでよろしくぅううう!」
「でも、マナキ姉さまがいたから私の記憶操作が俊明には効かなかったのね。ぅにゅー」
魔法使い同士の防衛能力が俺を守ったのか。
というか、なんでセンはこんなにこの人の事が好きなんだ?
いまや俺には全然、興味も無さそうにしている……。
俺の嫉妬(と呼んでいいのかどうかわからないなんだか複雑な感情?)を感じ取ったのか、そのマナキお姉さまは、
「私達の関係が気になっているみたいだから教えてあげる」
ありがとうございます、とは言わなかった。当たり前だけど。
「私ね、あの子の教育係だったのよ」
「教育係?」
「異能戦士として一人前になる前に必ず一人実戦経験のある人がついて候補生を指導するのよ」
なるほど。
その『実戦経験のある人』というのがマナキさん、という事か。
強い人だって聞いてるし、適任なんだろうな。
「戦士としての教育の中には、痛みを伴うものもある。敵に捕まって拷問を受けた時に、簡単に味方の情報をゲロするようなのは、戦士として使えないでしょう?」
「ええ、それはまあ」→適当に肯定してしまったけど、それって拷問って事なんだろうか。想像するとちょっと恐ろしくなる。
「それでね、ちょっとやり過ぎちゃったの」
てへぺろ。
「へぇ……ってちょっと待って下さいよ。そしたらセンは痛い目に遭い過ぎて頭がおかしくなって、そのせいであなたの事が好きになっちゃったって事ですか?」
首肯。→うーむ。
「戦士として邪念を倒す。それだけの理由じゃ、痛みの理由としては、足りなかったんでしょうね。この人は私の事が好きで好きでしょうがないのに、表現の仕方が下手でこうする事しかできないんだ。そういう風にあの子の頭の中では処理されたみたい」
「ひどい話ですね」
「でも、痛みに耐性の無い子になっちゃうよりは、マシだから」
闘えない戦士は要らないという事か。
飛べない豚とどっちが不要なんだろう。
存在としてはどちらも認めていいものだと思うんだけどなあ。難しいのかなあ。
他人の役に立たないと世の中が認めてくれないのはこっちでも異世界でも同じなのか。
ただの豚は食用になれば価値が出るけどそれは死んで初めて評価されるって事だ。
戦士は、というかセンは、死を伴わないで評価されて欲しい。
別に親心とかじゃないけど。俺別にセンの親でもなんでもないけど。
「だからその理由がちゃんと機能するように、私もあの子の事本気で好きな振りをしたわ。それがあの子が戦士として一人前にやっていくのに必要だと思ったから」
戦士としての責務ってのは、ほんとに重いんだな……。
「でも、あんたも大変だったわね。私があんたの中に隠れていたせいで、センはあんたの事好きだって勘違いしちゃったみたいで」
な、なんだってー。
あ、ああ、そうだよな、不自然過ぎるもんな、俺の事をセンが好きになるだなんて。
「私を構成する魂、想いの匂いみたいなのがちょっとばかし漏れちゃってたみたいなんだよね」
センは俺の中に潜んでいるマナキさんの、その微妙な雰囲気だけで、俺の事を好きだと勘違いしてしまう程マナキさんの事が好きだったのか。
「でも、さっきの朱里ちゃん? って子に寄生してた邪念体と戦ってた時にすぐに倒せなかったのは、あの邪念体が強かったからだけじゃないのよ。俊明君の想いが、私をその魂から外に完全に具現化してしまう程の強さだったのよ。そして私が具現化してもまだあれだけセンを助けたいって思う気持が入ってる涙を流せるんだから、本当、すごいわよね」
「すごいと言っても、やっぱりマナキさんがいなくて俺一人の想いの力じゃ、力不足だったって事ですよね」
実際、あの化け物を倒す事ができなかったわけだし。
「ほむほむ、俊明の言うほおり」
ガビーン。センに直接言われた。
しかもこちらも見ずに。
「まあ、でも普通よりずっと強い想いの力を持ってるわ。私が君の魂に間借しようと思った時は、こんなに強い想いの力の持ち主だって気付かなかった。ラッキーね」
そして今、俺の中からマナキさんは出てきた。
つまり俺はセンにとってはもう抜け殻、必要の無い、飲み終わった後のペットボトルみたいなもので。
どうせならいっぱい口を付けてもらってからリサイクルコーナーに捨てて欲しかった気もするけど、捨てられたらどっちにしてもへこむんだろうな、俺。ああーあ。あー、俺、センの事、マジで好きだったのになあ。
今にも投身自殺しそうな俺に向かってマナキさんは、
「でも、安心して。私、今のところノンケだから。だからセンは君にあげるわ」
今のところというのが非常に気になったが本筋とは関係ないし多分聞いても教えてくれないだろうから涙をのんだ。というか、
「ちょ、なに言ってるんですか」
「好きなんでしょう? センの事」
センの頭をなでなでしながらそう問うマナキさんの瞳は、存外にまっすぐに俺の事を捉えていた。
「いや、お、俺は……」
あれ、おかしいな。
さっきまであんなに好きだって思ってたのに。
何故か潤と朱里の顔が浮かんだ。
なんでなんだ?
ていうかなんでセンは何も話さないんだ?
「なあんだ。そうなの。じゃあわたしがセンの事、慰み者にしちゃおっかなあ~」
なでなでなでなで。
あれ、いつの間にか手が下がって背中とかちょっと前の方までなでなでしてる。
ううむ。なんかセンが「はぅ」とか吐息を漏らしたような……。
っていうか。
「それは絶対に許しません!」
何故かセンの父親のような口ぶりで言ってしまった。
「どっちなのよあんた。センの事好きなの、嫌いなの?」
どっちと問われても困る。
「嫌いではないです。でも……」
「でも?」
静かに、心の奥底まで見すかそうとするような、澄んだ赤い瞳。
おかしいな、俺、センの事が好きだったはずなのに、なんであいつらの顔が浮かぶんだ?
「今はまだ、結論は、出せないです」
「ふうん。そう」
別に怒ったわけではないようだったが、マナキさんがセンをなでなでするのの反対の手で握っていたロッドが不意に光った。
そして次の瞬間、世界が暗転した。
ボスっぽいのも倒したし、感動の再会も果たしたし。
一件落着?
次回はエピローグ!
最終回……!




