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いのせんっす!5-3

戦う女の子を受け止める主人公。

やっぱ女の子は自分の体を気にかけてるようじゃ

エロさが足りないよね!

なので街中で着飾った女の人を見てもいまひとつテンションが

あがらない私……。

5-3

 センの肩は外気にさらされている為冷たく、そして小さな肩だった。

 だがその感触を楽しんでいる場合ではない。

 どういう事だ?

 俺の涙には、センの力を通常以上に引き出す力があるんじゃないのか?

 こんな風に攻撃が通用しないだなんて、ちょっと考えられなかった。

 朱里は俺達の方を、いや、俺の方を見ながら、勝ち誇ったように、

「あ、そうそうセンパイ。センパイのご両親って、行方不明なんでしたよね」

 何故そんな事をいきなり言いだすんだろう?

 朱里の触手がうねうねとその頭上で集まっていく。

 色々な場所から飛び出した触手が融合し、ドロドロの粘土みたいになって。

「これ、なーんだ?」

 そうして形作られたのは、俺の本当の父さんと母さんだった。

 苦しそうな顔をして、口をパクパクしている。

 何を言っているのかまではわからない。

「想いだけにされて吸収されちゃってたんすよ。ずっと前から。私達はこの街に根を張って結構経ってますからねぇ。私達はこうやって欲しい想いを手に入れる為に、人間を痛みと苦しみの絞りかすにしちゃうんすけどね。こんな風に死んでも自我が残るってのは、珍しいんすよ。よっぽど心残りなものでもあったんすかねえ? あるいは、守りたいもの、とか」

 そして嘲笑的笑み。

「てめぇ、朱里……!」

 朱里に怒ってもしょうがない。寄生されているだけなんだから。が、冷静ではいられなかった。

「俊明、残念だけど肉体が無くなってしまったあなたのご両親は今の私でも戻す事はできない」

「……いや、いいんだ」

 センから最後通告を受けて逆に冷静になる。……こんな状態で助けられる魔法なんて、あるはずがないよな。

 自分の両親が既に死んでいたという事自体には聞かされても特に驚く事もなかった。

 なんか多分、心のどこかでもう、死んでいるんだろうって思ってたんだろうな。

 二人きりで旅行に行くくらい仲は良かったけど、俺の事をおいて永遠にいなくなってしまうような人達じゃなかった。

 だから、死んでいた事自体に驚いてはいない。

 だけど、でも、せめて……。

「セン。早いとこ、父さんと母さんの魂を安らかに眠らせてやってくれ」

「なあに勘違いしちゃってるんすかぁ? あなた達が勝てる可能性なんて、これっぽっちもないんすよ? ていうか、これから私にゴミみたいに扱われて『見ろ、人がゴミのようだ』とか言われて笑われて拷問されて、ボロゾウキンみたいになって生きている事を後悔させられてから殺される可能性しか、ないんすよぉ?」

「ふざけた事言いやがって」

 両親の姿を消していなかったら多分殴りかかっていた。

 だが、状況は極めて俺達に不利だ。

 センは圧倒的に強い。そして俺の涙に触れる事で、さらに絶大な力を得る事が出来る。

 そのはずなのに。なのに、朱里には通用しない。なんでだ?

「私がなんでここに呼んだと思ってるっすか? 『なんでだ?』って顔してるから教えてあげるんすけど、そこの異能戦士がセンパイの涙で力を得るように私はこいつらから直接力をいただいてるんすよ」

 パチリ、と指を慣らすと、俺とは学年の違う男子生徒の一人が朱里の前にやって来て、ひざまずく。

 朱里は片方の靴下を脱ぐと、自分の足をその男子生徒の前に差し出した。

 男子生徒は口から先端が鋭利に尖った触手を生やしていた。

「あ、ああん! そ、そんなに激しくやったらダメっすよ。壊れちゃうっす♪」

 男子生徒は朱里の足の裏に口を付けていた。

 恐らくあの触手で肉を突き刺しているのだろう。

 朱里の足からは血が流れていた。それを男子生徒は必死に飲もうとしているように見える。

 そして男子生徒の口から飛び出ている触手は何かを送り出しているかのように痙攣していた。

「憎しみ、怒り、悲しみ、そういった想いを極限まで濃縮した水を私の血液の代わりに送出させているんすよ」

 朱里は男子生徒の頭をもう片方の靴を履いた足で乱暴に踏みにじりながら、

「こいつらは、電池。そして私は女王。私はこいつらからいくらだって力を得る事が出来る。既に十分に寄生は進んでいるからね。私達は想いの強さで強さが決まる。なら、人間の考える事をコントロールできる邪念体って、最強じゃない? しかもそれを人数分受け入れられる私の能力は、まさに神の与えた能力といってもいいわ」

 センはその言葉を受けて、

「勘違いするなよ、女郎。貴様ら邪念体に与する神など、いるものか」

「はははははは! ならば私を倒してみたらいいっすよ! できるわけないっすけどねえぇ!」

 朱里が両腕に生えた触手を広げる。その本数は多く、翼のようにさえ見えた。さっきより強大さを増したように見える。しかしセンはそんな朱里の姿を見てもひるむことなく静かに、

「俊明」

 俺に、話しかける。

「家を出る前に私に聞いたよね。私の異能力がなんなのかって」

「あ、ああ」

 確かに、俺はそれを聞いた。より異世界の事、センの事を知っておきたいと思ったからだ。別に結婚の為とかではなく、単にもっとセンの事を知りたかっただけだ。……最後になるかもしれないと思ったから。

「私達の世界じゃね、魔法の能力ももちろんだけど、その異能力がどれだけ有用かって事が、その戦士の価値を決める大きな基準になるの。代わりの効かない能力が有用なら、その人はそれだけ貴重な存在って事になるでしょう? だけど私は、自分特有の異能力を発現できなかった。他の人はみんな持っているのに私だけは見つけられなかった。それを補おうと実戦での戦闘能力だけは高めてきたけれど、所詮そんなのは人よりちょっと優れている程度でしかなくて」

「いや、センの運動能力はすごいだろ」

 こっちの人間の言葉じゃセンの気休めにはならず。

「私ね、落ちこぼれなの。魔法世界の、落ちこぼれ」

「そ、そんな……!」

 いつも冷たく強気なこいつが、こんな風にしおれているのはらしくない。

 だけど、俺には気休めの言葉さえもう出てこない。

 こっちの世界の人間である俺は落ちこぼれのセンにとってさえ足手まといなんだから。

 俺のせいで何回センを危険な目に遭わせたかしらない。

 その上、今回は涙も役に立たなかったんだ。

「みんなそれぞれ個性があって、それだから大切にされるのに、私には個性がなかった。何も。どうして? って思ってた。ずっと。だけど今、私、自分の異能力が、わかった気がする」

「な、なんだよ?」

 するとセンは今までで最高に寂しく、そして吹っ切れた笑顔で、

「俊明、私の異能力はね、きっと、こっちの世界の人間、キミの事を、好きになれる能力だったんだよ」

 そして目の前の敵に向き直ると、マジックステッキの柄を握り直す。

 俺には、センの想いがわかってしまう。伝わって、しまう。

「セン……死ぬ気なのか?」

 俺の問いにセンは答えなかった。そして俺の方は見ずに、

「俊明、好きだよ」

 すっと、駆け出した魔法少女。もう俺には止める事は出来ない。玉砕覚悟の万歳アタック。、らしくない。全然、お前らしくねえよ!

「セエエエェェェェン!」

 俺の声が耳に届くのを嫌がるかのように、センはさらにその速度を速める。

「私の全魔力、存在を賭けてアナタを倒す! 喰らえ! 一万の時を経て宿りし暗黒火炎、剣の舞! アルティメット・ダーク・ファイアー・スラアアアァッシュ!」

 センのマジックステッキが今にも爆発しそうな程のエネルギーを蓄えているのが、俺にもわかる。

「!」

 初めて一瞬、朱里の顔が引きしまった。

 これからお互いの全ての力をぶつけた最後の勝負が始まるのか!?

 ……と、今まで聞いた事のない声が不意に聞こえてきた。

「まったく、世話の焼ける子なんだから」

 この緊迫した状況にあまりにも不似合いな、落ち着き払った声。

 そして声の主は、センが放とうとした魔法を抱えたマジックステッキ、その柄をそっと抑えていた。魔力も押さえられたのか、センのステッキの光は弱まった。

 二人の手が月明かりの中で触れ合っているのが見える。

「そんな事じゃ、いつまで経っても私みたいな立派な異能戦士にはなれないわよ?」

「……マナキお姉さま?」

 二人は宙を舞い散開し、対角に着地した。

 長い髪がふわりと腰の辺りまで広がる。

 髪の色は緑だったが、瞳の色はセンと同じように赤く光っている。

 いや、心無しかセンよりも赤みが強い?

「錬金術ってキミ、知ってる?」

「え?」

 驚いている俺に対してその背の高い大学生くらいの年齢に見える女性は、戦闘中なのに余裕とばかりに俺の方へ向いて笑み、

「想いは極限まで凝縮されれば、赤になる。想いの世界で生きる私達の瞳が赤いのも、それが理由だって言われているわ。ま、真偽はどうでもいいけど」

 言っている意味はわからなかったが一つだけわかる事がある。この人は、俺達の敵ではない。

「何人増えようが同じ事っすよォ! 私の力はあんたらなんかに負けるわけないんすから!」

 朱里にとっては予期せぬ敵が一人増えたわけで、余裕ぶってはいるが、動揺しているのは見え見えだった。

 男子生徒を足蹴にして蹴り飛ばすと触手を一斉に伸ばし、新たに現れた方の敵、すなわちセンが『マナキお姉さま』とか呼んでいた方の女性へと攻撃を開始する。

「光球!」

 マナキと呼ばれたその女性はセンと似たような格好をしていた。

 スク水みたいなのの色が緑だという事くらいしか違いはなかった。

 そしてその女性は体をひねり触手の攻撃を回避するのと同時にマジックステッキから複数の光の球を放っていた。

「ははははは、なんすかそのなんの威圧感もないボールはぁ!」

 実際それは朱里を攻撃するでもなく、そのまま通り過ぎて遠くに行ってしまう。

 なんなんだ? 意味、あるのか? あの女の人、大丈夫なのか? 強いのか?

 それとも……。

「何も考えずに攻撃してくる。知能が付いたっていったって、所詮は邪念体ね」

 その女性の着地する瞬間を狙って、朱里の触手が一斉に襲いかかる。

「あん? 何をいって」

 が、寸前でその動きが止まった。

「……ってあれええぇぇっぇ!?」

「これが私の異能力、『影縫い』よ。ちょっと古臭い甲賀忍法っぽくてあんまり好きじゃないけどね。自分が影を踏んでいる場合、その本体の動きを完全に封じる事が出来る」

 なるほど。さっきの光の球は朱里を攻撃する為のものではなく、朱里の影を自分の望む場所に出現させる為の物。

 そして、どの角度にあの光の球をおけば影がどこまでどういう風に伸びるか、全て計算して飛ばしていたって事か。

 ……やっぱりこのお姉さん、強いぞ!?

「異能力はある条件を満たす事で発動する。ルールは、制限。その範囲内で使用するが故に、魔法と違って、絶対の効果がある。あなたは私の異能力のルールの中では、何もできない」

「ふんぎゅー! ふぐぐぐぐ!」

 朱里が一生懸命体を動かそうとしているのはわかるのだが、ぷるぷる震えるのが精一杯みたいだ。

「逃がすわけがないでしょう?」

 その女性は薄緑の髪をかき上げながら余裕の笑みで、

「ジ・エンドよ」

「う、うう、まだ私の『電池』達が私の影を消せば……」

 朱里がそう言うのと同時に寄生された生徒達がわらわらと動きだしこちらに向かってくる。

「ま、確かに私の思念の二百五十五倍の思念があれば、異能力のルールさえ無視できるけど。それって今歩いてきてる寄生されてる生徒達全員分の悪意を吸収しなきゃいけないって事だし」

 お姉さんは余裕の笑みで、

「そんなの、待つわけないじゃない」

 そしてビッとした声で、

「セン! 終わらせるわよ」

「え?」

 いきなり声をかけられてセンは驚いていた。

 分散して着地したら、一人でこの『マナキお姉さま』が相手の動きを封じてしまうところまでやってしまったのだから自分の出る幕がないのではと勘違いしてもおかしくはない。

 だが、最後は共同作業のようだった。

「何呆けた顔してるのよ。俊明に悲しい思い、させたくないんでしょう?」

 センはそれを聞くと何度も首肯した。

 コクコクコクコク。

 そして電光石火のやり取り。最初が姉さん。

「ちなみにあんたの身長幾つ? 変わってない?」

「え、156センチのままですけど」

 何の話だよ?

 俺には理解できなかったがセンには理解できたらしい。あ、という顔をする。

「OK。いくわよ、せーのっ!」

 そして同時に、言った。

 ステッキが横になる。

「「ファイナルタクティクス・ハイド!」」

 身長が何か関係していたのか?

 俺は知らない。

 何らかの発動条件があるんだな。

 爆裂なる光が二人のステッキから放出され朱里に振りかかる。火の粉じゃないので払いようもない。

「な、え、うそ、そんなのってないっすよおおおおぉぉぉ!?」

 朱里から触手が消えていく。

「この魔法の効果を教えてあげるわ」

 姉さんが俺に教えてくれたその内容は、

「相手は死ぬ!」

 なんだそりゃチート過ぎるだろと思ったが結果的に勝ったのがこちらなので不問に伏す。

 世の中なんだってそうだろ? 自分の方が有利ならそれでいいのだ。

 相手にチートされないようには気を付けておく必要があるけどな。

 多分ルール内なら絶大な効果を発揮する異能力とかっていうのもそういうもんなんだろうな。

 俺はこのお姉さんの異能力しか知らないけど。

 あ、いや……センの異能力も知ってるけどさ。

個性って何なんでしょうね?

オンリーワンだとかナンバーワンだとかいうけど、

どっちも無いって人はどうしたらいいのか。

誰かにとってのオンリーワンとか、

それくらい限定しないと

自分の価値なんて見出せない世の中なのかもしれない。

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