いのせんっす!4-3
それぞれとの会話、戯れ、そしてロリコン疑惑……!
4-3
「俊ちゃん! ちょっと次は私と二人で遊びましょ?」
「あ、私まだ全然遊んでないのに、潤お姉さま、ずるいっすー」
朱里がブーブー文句を言う。
「おんのれ~俊明~! わいから潤ちゃん奪うっちゅうんかー! わいはNTR属性はないんやでー!?」
恵輔も恨みがましく不満を言う。俺に潤の事が好きだと相談したから当たり前か。
……ていうかNTR属性ってなんだ?
よくわからないが背後には気を付けた方がいい気がする。
恵輔から発せられている恨みのオーラがまじ半端無い。
悲しみを知った拳王並だ。
拳王のオーラ実際に見たことはないけど。
というか身の危険を感じているなら素直に皆で遊べば良いような気もする。
うん、そうだ、皆で遊ぼう。
……だが、その俺の意向と反した行動を起こす人間が一人。
「あっ、おっ、おい潤!」
潤は俺の声に反応せず、ただ俺を引きずって残り三人から距離を離し始めている。
切り替えが早いのかただのアホなのかわからんが恵輔はさっさと、
「さっ、センちゃんは俺と泳ごうや」
プールサイドにいたセンは恵輔に足首を掴まれ、引きずり込まれた。
突然の事で動揺しているからなのかそもそも最初から泳げないのかは知らないが、溺れそうになっているセンに対して笑いながら腕を貸している。
というか腕を掴んでおぼれないようにしているというか。
……正直羨ましかった。
「きゃっ! この、勝手に触るな、腕をつかむなあああぁぁ!」
「えー、なら、ここならいいんですかあ?」
好きでもない男に触られたなら当然の拒否反応にいきなり乱入してくる輩が約一名。どこを触っているのか。
「あっ、ばかやめろ変なとこ触るな、あ、はぁっ♪」
「はぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁ」(朱里&恵輔)
どうやらとてもまずい事になりそうな気がする三人をガン無視して、潤は笑顔のまま俺を引きずっていく。
水中なのに引きずっていく。
いや、俺浮かんでるから、運びやすいのかもしれないけど。
でも抵抗とかあるしなあ。
て横見たらなんか結構波が立ってた。
……こいつってこんなに力強かったっけ?
……そして、向こう岸まで強制移動させられてから潤はこちらに向き直り、
「俊ちゃんに聞きたい事があるの」
「な、何かな?」
「最近あの千さんって子と、仲良くし過ぎじゃない?」
「俺があいつと仲良くしていると何か問題でもあるのか?」
「別に、問題なんて、ないけど……」
なんなんだ?
「だって、一緒に暮らしてるって、朱里ちゃんから聞いちゃったし……」
「ああ、千は俺と腹違いの兄の父親の母の孫娘だからな」
適当に親族系の単語を並べてみただけなのだが潤は十分に俺の言動に翻弄されてくれた。
「え? え? 千さんは俊ちゃんの腹違いの……??」
理解できなかったようだが言い直す事は多分(というか絶対)俺にはできそうにないので、
「つまるところ、家族って事さ。家族なら、一緒に暮らすのが、当たり前だろう?」
「あ、うん、まあ、そう、だけど……」
歯切れが悪い。
昔は惣菜屋で買ったコロッケをマウストゥマウスで食べさせ合った仲だった(小学生低学年)けど、奥歯にものが挟まったどころかその時くらい歯切れが悪い。
「なんだよ、言いたい事があるなら言えよ。俺とお前の仲だろ?」
するとそれまで下を向いていた潤だったが、意を決したように俺の方を見てはっきりと、
「俊ちゃんってさ、センさんの事、好きなの?」
これは返答に困るな。
真剣な表情で聞かれると非常に困る質問だ。
「好きとか、そういうんじゃねーよ。……なんていうか、放っておけないんだ」
なーんてラブコメな主人公的セリフを言ってみたいなと妄想しつつも、無難じゃなくかつ自分に正直に、
「大好きだ!」
とかプールの端っこで(中心ですらない)叫ぶのもどうかと思うし。
「あー、えーと、うーん、べ、別に?」
とか返すのも見透かされそうだなと思いつつもまあ無難に水泳無難だからというよりは自身の小心さゆえに、
「あー、えーと、うーん、べ、別に?」
と極めて小声で音を発する事で返事とさせていただいた。
「……そっか。そう、なんだ」
なんで寂しそうな顔するんだよ!?
「うん、でも、やっぱりダメ元でもやっておくべきだよね。後悔、したくないもん」
後悔?
「ん、何の事だ?」
「あ、いやいや、何でもないの! こっちの話!」
最後のは独り言だったのか。全然隠せてなかったな。
慌てたように潤は両手を眼前でぶんぶん。
……まったくもう、なんなんだよ!?
センが恵輔と朱里との水遊び(もとい水責めの刑という名の拷問)から戻ってきた。何をされていたかは知らない。聞かない方がいいだろう。一度水から出てプールサイドで休憩していた俺と潤に合流する。
「はー楽しかった♪」
朱里が満足そうな表情でそう言う。一応、聞いておいてやる。
「何がだよ」
「だって白夜センパイの体、とってもやわらかいんですもん」
「潤よりもか?」
やっぱりか、と頭を抱える前にそういう質問をしてしまうまっすぐな俺。
「潤センパイとはまた別ですよぉ。潤センパイはふわふわのスウィーツみたいな柔らかさなんすけど、白夜センパイにはほっそりとした中に女性としての柔らかさがあるんす!」
「男が言ってたら変態に聞こえるなそのセリフ」
「? 朱里は、女の子ですよぅ?」
「ん、あ、いや、そうなんだけどさ」
まあ、コイツは女だからまだいい。
許せんのはコイツだ。
「恵輔、お前も触ったのか」
自分でもびっくりする程静かで落ちついていて、その分威圧的な声が出た。
正確な意味は知らないが類推で国語のテストの問題を答えられる時って、あると思うんだ。
別にテストじゃないけど、俺はさっきの不明単語の意味をおおよそ理解してしまった気がする。そしてあえてでもなく普通に言おう、俺にNTR属性はない!
「あ、いや俺は……」
なんていうかがっかりしてるような。ちょっと元気が無かった。
まさか俺にビビったわけでもないだろうし。なんなんだろう?
「『俺には潤ちゃんがー!』とかいって急にイモ引き始めて。ねえ?」
それは越えてはならぬ一線を朱里が越えてしまったからじゃないかとか俺は一瞬考えたわけだが、公共の市民プールでいくらなんでもそんなまさか、ねえ。
俺達以外あんま泳いでいる人いないから目立たないけどさ。
ま、とにかく恵輔にイタズラされてないんなら良かった。
と思うべき、だよな?
もちろん、直接確認もするけどさ。
俺は皆から少し離れた場所にいた(朱里にイタズラされて怒っているからなのかまだみんなとうまく打ち解けていないからなのかは知らない。今日会って挨拶くらいしかしてないからなあ)紺髪黒目の少女の方に歩いて行くと、
「セン、大丈夫だったか?」
「ん、なんとか」
少し疲れたというか気だるいような声。
「まったく、朱里の悪ふざけにも困ったもんだな」
「本当、そう」
静かな声。
そして俺以外の三人を見ている。
じー。
とことこ。
凝視して三人に接近。
押す。
「わっ」(恵輔)
「きゃあ!」(潤)
「うにょもろっほぉ!?」(朱里)
どぼん。どぼん。どぼん。
センが三人をプールの中に突き飛ばした。
「私、泳げないから」
いや、意味が分からない。
泳げないのにみんなが泳げるのが当然みたいにしているから、嫌だったという事なのだろうか?
からかわれた復讐ととばっちりという事なのか。確かにみんな泳げるかどうかわからないセンに対する配慮が足りなかったとは思うが……。
「だからって何も突き飛ばさなくても……」
デリカシーの無さを糾弾するにしてもそれは恋人だけにしておいたほうがいい。
集団にそういう事を求めるのは無理難題だと俺は思う。
一人だったら、相手の事を考えて一緒に足並を揃えていてやる事もできるだろうが。
「私、泳げないから」
……とりあえずこれ以上機嫌を損ねるとまずそうだ。
「わかった。一緒にいてやるよ」
俺は恋人じゃないけど。
でもセンは、満足そうな笑顔で。
「ん」
センは俺の手を引いて歩いていく。
どこに行く気だろう(背後から色々な視線が突き刺さっているような気がしたのは頑張って無視した)と思っていたら、センが連れてきた場所は子供用のプールだった。
水が膝上くらいまでしかなくて、普通ならまず絶対に溺れない場所だ。
「泳ぎ方、教えてよ」
「あ、ああそれじゃまずビート板を用意して……」
「いい」
「え?」
「俊明が私の手を持ってくれるから、いい」
「そ、そうか」
なんで決定事項なんだ!?
とは言わず、俺はセンの望むままに泳ぎの講習をした。
時々溺れそうになって俺の腰の辺りに抱き付いてくるのが中学生男子としての健全な肉体と精神を維持するのを邪魔して困った。
足が付く場所だから立てばいいんだが、慌てていてそこまで気が回っていないんだろう。
センのこういうパニクってる様子って見た事がなかったから、ちょっと俺には新鮮だった。
「妬かせるねえ」(恵輔)
「ほんとほんと~」(潤)
それから少し遅れて小走りにやって来た朱里が、
「センパイったら朱里の事ほったらかして、ひどいっすぅ!」
三人とも二度目の休憩をするつもりになったらしい。
ついでに俺達があんまりにも仲睦まじいから冷やかしに来たようだ。
俺は人格が良いから(嘘だけど)三人を無視して目標達成を阻止しようとは思わなかった。
とりあえず会話に応じる事にする。
ただし長く応対するかどうかは不明。
あまりふざけた事を言うようならリアルで痛い目にあわせなきゃいけなくなるので、雲行きを見ながらって感じになると思う。
「お前らだって三人で男女仲良くやってるじゃないか」
「いやま」「私達はあまりものだもん、ねえ~?」
恵輔がまんざらでもない表情で何か言おうとしたが俺の幼馴染によって遮られた。
……にしてもなんか潤の声が怒ってるように聞こえるのは俺だけだろうか。
「センパイ~……」
朱里は泣きそうな顔をしている。
お前の大好きな潤は隣にいるんだからいいだろうがと思ったが、あいつは俺の事も邪な目で見ている節がある(自意識過剰とかではなしに!)し、いや、違うか、どっちかってと潤が俺の方に気を取られているから、一緒に遊んでくれないと困るとか、そういった理由かな。
「なら、こっちで遊ぼうぜ?」
膝上くらいまでしかない子供用プールで遊ぶ事を提案する俺。
幸い子供用プールには誰もいなかったので、ロリコン疑惑はかけられなくて済みそうだ。
あまりものでもいいから俺の方にまわってこないかなと俺はいつもため息吐いてる。ため息吐きながら小説描いてる。それでいいのかそれでいいのだ震え声。やっぱリア充展開ダメやね。こんなんなら男なんていらなくて日常系で去勢された世界でよかったようあああああ、次回、衝撃展開!(物理的に)




