いのせんっす!4-2
ヒロイン達の魅力を伝えるに、それぞれの選んだ水着も大事だが、登場時の恥らい方にこそに個性が出るんじゃないか?! まあ今回、凡百に登場してるんだけどね! あーそうだよ! やっぱ水着が最高!
4-2
「えへへ、どうかな」
「ひ、非常によろしいのでは?」
チケットをもらってから約一週間後の日曜日、市民プールにて。
潤に返事をしながら俺は三人の水着姿を見比べていた。
今ならこの言葉に同意できる。
みんな違ってみんないい。
誰の言葉かわからないが、個性を認めるいい言葉だ。
潤は無難にまとめてそれなりの露出度の格好をしていた(無難の程度は想像に任せる)。
ふむ、ふむ、ほう。
なかなか、いいのでは?
と、幼馴染を注視しているとその視界をさえぎるように揺れる二つの何かを持った身体が眼前に提示される。
「センパイセンパイ、どうですかぁ?」
朱里だった。
「あ、ああ、す、すごくいいんじゃないかなぁ?」
こちらは首にかけたヒモで胸を釣り上げるようにしている。
露出度高めだ。
多分ヒモを切ったらポロリが起きるだろう。
だがそれは今はどうでもいい!
肝心なのはその格好でグイと体を前屈みにして艶に俺の方へ笑んで見せた事だ。
誘惑すんなまじで心乱れて前屈みにならなきゃいけなくなるだろうが!
と、新しい視覚情報が眼前に提示される。
……うにょっほー?!
「ん…」
「センはスクール水着か」
あくまで俺は表面上は平静を保っている。
心の中を覗き見られたら軽蔑されるのは間違いないが。
「これしかイメージできるのがなかったから」
「イメージするのって簡単じゃないのか」
魔法だからってなんでもかんでも安易に解決できると考え過ぎなのかな、俺は。
「ん、細部までイメージできないと実体化がうまくいかないから。作った事が無い服を作るには、ある程度じっくりイメージを固められるものを見ておく必要がある。もちろん経験やイマジネーションに富んだ上級の魔法使いならそんなものなくても作れるのかもしれないけど、私程度の魔法使いには、必須」
「ま、いいんじゃないか? 別にスクール水着でも。いや、むしろ良い、というか」
「そ、そうかな」
「おう!」
「で、でもやっぱりみんなみたいに華やかな水着の方が……」
何やら引け目を感じているらしい。
かわいいって言ってるのに!
「そっか、なら今度、水着を見にデパートまで遊びに行こうぜ」
「デパート……」
「色んなもんがある所だよ。もちろん水着もいっぱいある。イメージさえできればいいんだろう? 金もかからないし、いい暇つぶしになるぜ」
「デパート……んデパート……。うん、私、俊明と行く!」
子供のように目を輝かせるセン。
見た目子供でも戦士だからそんなんではしゃがないかと思っていたんだが、知らない所に行くのは冒険みたいでワクワクしているようだった。
「どんなのがいるのかな、こっちの世界にも化け物がいるのかな、そしたら退治しなきゃいけないよね、狩りとか、準備とかいるのかな」
小声でブツブツ怪しげな発現。
「いいか。デパートには買うかどうかわからんが一応『買い物』という事で行くんだ『狩り』に行くんじゃない。わかってるよな」
「うん、わかった」
わかったであってわかってるではないんだな。
まあいいけど。
「よし、じゃあ今度買い物行こう。約束だぜ?」(できる限りのキュピーン笑顔)
センは頬を染め嬉しそうな表情で、
「ん、わかった、約束。異能戦士は嘘吐かない」
まったく、こいつの日本語はどこで覚えてきたのかまるで謎だ。
それも思念、とかいうのの影響なんだろうが、あまり良いセンスのものはセンの日本語構成の思念の中には入っていないらしい。
行動は別だが。
両手を握って自分の前に出し喜びを表現するセン。
無闇にかわいい。
とここで横槍。
「ちょっとーいつまで二人で話してるの?」
プールの中から呼びかけた潤の姿を見て、それから自分の水着と見比べセンは自分の水着がスクール水着なのをまた思い出してしまったようで、
「でも今日は、ごめん」
「ん、何が?」
「胸、あんまり大きくなくて」
あ、水着の事じゃなかったのか。
ていうか「今日は」ってなんだ。
これから大きくなるつもりなのか。
「バカ、そういう事はあんま気にしなくていいんだよ」
「でも……私がこっちの世界の人間と円滑な交流をして潤沢な情報源を確保する為にはみんなに好かれなくちゃいけなくて、だから……」
やれやれ。
「それはお前の問題だ。俺の問題じゃない。それに、そんなんで相手に好意的態度を取らなくなるような奴には、自分からは絶対に近寄ってかない方がいいぞ」
「……でも、やっぱりキミは大きい方が好きだよね。おっぱい」
「お、俺の好みはノーアンサーでよろしく!」
マジで勘弁して下さい潤たちに聞こえてしまいますマジで勘弁して下さい。
「だってベッドの下の棚に置いてあったのだって」
「うああああノーアンサーでよろしくぅうううううぅ?!」
「……一応、牛乳飲んでるんだけど、まだあんまり効果ないみたい。ごめん」
なるほどあの牛乳にはそんな意味があったのか……!
でも牛乳ってそこまで効果的なもんなんかね?
いわしの頭も信心から、というがEカップへの道も牛乳から、なのか?
でもそれだったら牛乳飲んでる人はみんな大きくなるわけで。
やっぱ効果があるとはちょっと考えにくいような……。
いや、でも当人は信じているわけだし、偽薬効果ってのもあるっていうしなあ。
うーん、あんまり真剣に考えちゃいけない気がする。
「いや、そんな事で謝られてもというかそんなすぐに効果出るわけもないというか」
そもそも効果あるのかどうかさえ判然としないというか。は夢を壊すかもしれないので言わなかった。
「セーンパイ?」
ここで朱里が唐突に会話に乱入、腕を絡めてくる。
というか揺れる胸が当たっているんだが。
なるほど、これが乱乳とかいうやつか!
とは思わなかったわけではない。
というかその胸がなんか濡れている。
そういやさっき潤と一緒にプールに入ってたよな。
わざわざ上がって呼びに来たのか。
「いつまでここで立ち話してるんですか? 早く入りましょうよー」
「あ、いや、俺は」
「約束、忘れたんですかぁ?」
「すまん」
俺はチケットをもらった時の事を思い出した。校門近くでの事だ。
「え、あ、きゃあ! 白夜先輩!?」(朱里)
「俊明が行くなら、私もそこに行く」(セン)
「え? ど、どうして俊明センパイが行くなら、白夜先輩も……?」
「アナタには関係ない」
にべも無い。笑顔も無い。理由も無い。
「ええぇと、でも、チケットが人数分しかなくてぇ」
「ケチケチすんなよ、さっき五枚もらったって言ったろ? 暁方俊明、夕空潤、紅色朱里、青井恵輔、まだ四人じゃないか。白夜千も入れて五人でいいんじゃないか? それとも他に誰か誘う予定のある奴でもいたか?」
と俺。
ここで朱里があからさまにセンから距離を取り俺に対して小声で、
「あうぅぅぅ、いや、ないっすけどー、なんか私、白夜さんの事苦手っていうか……」
「まあ、あんまり愛想の良い奴じゃないからな」
しかしこれでも俺の同居人だ。
あまり邪険にしてくれるな。
とは言わずに、
「でも、悪い奴じゃないんだ。わかってやってくれ」
平々凡々な俺に急接近してきた謎の転校生に対する理解を求める俺。
「うぅ~、まあ、センパイがそう言うなら、わかりましたけど~」
センは俺と朱里のやり取りを黙って見ている。
朱里はそれに気付いているのかいないのか、
「あ、じゃあセンパイ、その代わりぃ、一つだけ約束、いいっすか?」
「ん、なんだ?」
「うーんと、プールに行ったら、ちょっと私と遊んで欲しいなって」
「ん、ああ、何だそんな事か。別にいいが」(照)
という事があったのだ。
……え、ていうかそれってみんなで遊ぶって意味じゃなかったのか?
「いいじゃないですか。時間は、たっぷりあるんですから♪」
「まあ、そうなんだが」
とか言っているうちに朱里は俺の腕に抱き付いたまま、プールに飛び込んで行く。
当然俺も一緒に飛び込み競技をやらされるハメになる。
俺的には正しい常識の教義をお偉いさんの協議の上で授受して欲しいかなと思った。
いやマジなリアル話。
ちょうど他のみんなは泳ぎに行ってしまい、25Mの端と端にいるようになっている。
センは何故かプールの中に入ってこない。
朱里はそれを確認すると内側のコースまで俺を引っ張っていく。途中、
「あ、そうだ先輩、『いのせん』って言葉、センパイ知ってるっすかぁ?」
「ん、井の頭公園?」
「どう聞き違ったらそうなるんすか。『いのせん』っす。『いのせん』っす!」
「俺、そんなに純粋無垢な人間でないことには自信があるんだが」
右腕に変わらず押し付けられた朱里の胸と自身の肉体との相関図を描いたらY軸が猛烈にプラスになっている事になるくらいだから当然だ。
意味がわからないと思うが俺もよくわからないから理解できる人だけでいいのかもしれない。
「別に先輩がどうこうって事を言いたいんじゃないっすよ。最近その『いのせん』ってのが、ネット上ですごい人気なんですよ。なんていったかな、『異能戦士』ってのの略らしいっすよ」
「ちょ、おま、それどこで見たんだよ!?」
「うーん、うちの市の市役所のページに載ったのが最初らしいですよ? それで、役所が警察にも依頼して街で悪い事をしている人がいるから、皆で捕まえましょうって。とっても悪人ならしいっすよ、その『いのせん』っての」
「ていうかなんでそんな事を今俺に言うんだよ」
「吊り橋効果って知ってるっすか?」
「それがどうしたよ?」
「うーん、悪い人がいるよーって言ったら、先輩が恐がってそれを私に対してのドキドキと勘違い(?)しちゃったりとか! って期待しちゃったわけっすよ私は、もう。それでこう、色々お肌の触れ合いとかあったり!」
「いや……ていうか今でも十分密着してると思うんだが……」
「……ハッ!」
二次元で表現できるんじゃないかってくらい目を丸くして俺から腕を勢いよく放す。
「んもーう、恥ずかしいじゃないっすかあぁぁ……」
最初に抱き付いてきたのはお前な気がするんだが。と、そこで潤と恵輔が向こうから戻って来て、俺達の方に泳いできた。
イチャイチャしてんじゃねえぞリア充共が……! と、俺がこのプールにいたら声をかけていたことだろう……。そしてセンに消されていたに違いない……。次回、まだまだリア充展開!?




