花客(飯岡橋横)
死者眠る
傍らに立ち
花、降らすか
石のうえに
はらと、花降らすか
朝の風に
つづけて、三枚
昼の雲が
すぎたとき、一枚
日の入りに
鳴いた鳥に、二枚
夜の闇に
紛れて
もう幾枚か
そうやって
誰にも分からぬように
そっと降らしているのか
やわらかなもの達が
はら、はらと
積もり重なる
石のしたで
眠る者は
少し
重たいと思うか
白いものにくるまれて
また
眠るのか
死者眠る
傍らに立ち
影、落とすか
蒼く、影落とすか
銀の朝には冴え
石のうえを走る
金の午後には揺れ
光と踊る
瑪瑙の夕暮れには肥大して
赤い地に鎮座する
夜の闇は
その裾から
這いでて
誰にもわからぬうちに
ひたひたと広がりゆくのか
日や、
火や、
枝葉を透かして
冷たい石に
こちらの景色を
写すのか
石越しに
影画が
ちらつくのをみて
眠る者たちは
こちらを懐かしむのか
はたまた
あまりに形が曖昧で
あちらでの夢と
思うのか