第1話
これは某公募サイト応募作品ではありませんが、同じシリーズ物です。
全11話。ヨロシクです。
「ねぇ、恵理は真由の結婚式に何着て行くの?」
「え?」
「親友の晴れの日の受付を仰せつかったのだもの。ここはキアイ入れて行くしかないでしょ?」
澄み切った青空に、木漏れ日の光がきつく陰影を落とし始めた初夏のお昼休み。
本日のお勧めランチを摂ろうと、社員食堂でトレーを手にして清算の順番待ちをしていた私(恵理)は、一緒に並んで居た同期の琴美から話題を振られた。
「そうねぇ、何着て行こうかな? ……水色のワンピはこの前雛子の時に着ちゃったし、グレーのパンツスーツは茉莉の時に着ちゃったし……」
「紺に白い縁取りがしてあったディオールのワンピースは?」
「ああ、あれ? あれは先週の飲み会の時に卸しちゃったわ」
琴美が覚えていたワンピは私のお気に入りだったけれど、特別な時にそればかりを着て行く訳にはいかないもの。
「黒のスーツは? シャネルの」
「……」
私は返事が出来なくて、押し黙ってしまった。確かにあれはお気に入りのスーツだったのだけれど……
「どうしたの?」
「あ、合わなくなっちゃった……」
「ウェストが?」
「うん……」
ああ、もうバレちゃったから良いわよね? 私は琴美にえへへと笑ってごまかした。
「え~、そう言えば恵理って最近標準に近付いて来た?」
「……物は言い様だわね……良いわよ。『太った?』ってズバリと聞いてくれても」
「そこまでは思ってないわよ? だって、恵理は元々痩せ過ぎだったから。それでもまだ標準よりも細いじゃない?」
「喜んでいいのか、悲しんでいいのか悩む言い方だわね。それ」
私は琴美からさりげなく顔を背けると、私は頬が熱くなるのを感じてしまった。だって、司が作ってくれるご飯が美味しくて、ついつい食べ過ぎてしまうんだもの……
「せっかくだから、この際、新調するわ」
「そうねー。はぁ~、この時期みぃ~んな同期が片っ端から居なくなっちゃうわよねぇー。『ジューン・ブライド』だなんて言葉に煽られちゃってさ。あんなの業界の企みじゃない。大体、梅雨時の日本には似合わないって事、判らないのかしらね? 沙希だって真由だって……半年前まではカレシ居ない歴を私達と一緒に競って更新していたのにぃー。裏切りモ~ン」
羨望と嫉妬が入り乱れた琴美が、拗ねて口を尖らせる。でも、琴美の気持ちが痛いほど判るわ。私だって琴美と同感なんだもの。
「出ていく方も半端じゃないわよ。お慶び事なんだから、文句は言えないんだけどねー」
私も溜息混じりに溢してしまった。
そりゃあ、先月だけで結婚式と出産のお祝い事が三件続いた直後の、親友の結婚式なんだもの。
『出費』と言う物理的な問題はもちろんだけれど、それよりも『先を越された』って言う精神的ダメージの方が私達にとっては大きいわ。真由がとても羨ましい。