第2話 覚悟の時
行方不明だった少年・天城蓮が、再び陽 菜の前に姿を現す。
彼の中に眠っていた“力”と“過去”が、静 かに語られ始める。
逃げ続けていた自分。
傷つくことを恐れていた心。
でも守りたいものがあるなら、立ち 向かうしかない。
今、蓮は「覚悟」を胸に、再びコードとして 戦いに挑む。
コードの姿を解除し、俺は陽菜の前に立った。行方不明だった俺の姿を見て、陽菜は驚いたように目を見開いた。でもすぐに、柔らかな声でこう言った。
「……帰ろう」
そのひと言だけで、緊張していた心が少しだけほぐれた。
夕焼けが街を染めていく中、俺たちは無言のまま歩いた。風が涼しくて、心地よかった。でもその沈黙は、長くは続かない。
「ねえ、蓮……あの一週間、何してたの? あの青い姿は何?」
陽菜の声には怒りじゃなく、不安が混じっていた。目にはうっすら涙が浮かんでいて、それを見た瞬間、俺は逃げちゃいけないと思った。
「……話すよ。全部」
あの日の夜、俺は誰かに呼ばれているような気がして、無意識に走ってた。声を追いかけるうちに、目の前が急に真っ暗になって、気づいたら金色の光の粒が漂う空間にいた。
そのとき、どこからともなく声が響いた。
『お前は選ばれた。コードとして、この世界を守れ』
目の前に青い球体――「コードボール」が現れた。
『それは、お前の力を引き出す鍵「コードボール」。戦う覚悟があるなら、それを使え』
理解が追いつかないまま気がつくと、俺は現実の世界に戻っていて、手にはその球体を握っていた。
そして目の前では、陽菜がゾイオムに襲われていた。
「戦いたくなんてなかった。でも……陽菜が危なかった。だから……体が勝手に動いて、コードボールを投げてた」
俺は静かにそう言った。陽菜は黙って聞いてくれていた。
「……俺さ、昔から逃げてばっかりだった。小学校の時あいつに裏切られた時からサッカーも期待に応えられなくて……それ以来、“頑張る”ってことが..... 怖くなっちゃってさ。」
そう俺は親友に裏切られた経験がある。
このことは陽菜もよく知っていた。
「……バカ」
陽菜がぽつりとつぶやいた。
「勝手に逃げて、勝手に傷ついて……でも、それでも、私を助けてくれたじゃん。だからもう、一人で抱えないでよ」
俺は顔を上げた。陽菜の目は、まっすぐ俺を見ていた。
「蓮は蓮だよ。誰かのために動ける、そんな蓮を……私は、すごいと思った」
その言葉に、何かがほどけた気がした。
「……ありがとう」
でもそのとき、空気が突然ざらついた。目の前に黒く不気味なゾイオムが現れる。
「下がって、陽菜!」
俺はポケットからコードボールを取り出し た。深い蒼の球体が、わずかに光を帯びて 脈打っている。
「これが... 俺の力...!」
俺はそれを力強く、真上へと投げ上げる。 夜空へ放たれたコードボールは空中で一瞬 光を放ち、静かに落下してくる。
俺の胸の奥で、何かが高鳴った。もう、逃げないっ て決めたんだ。
それを、俺は右手で殴り潰した。
「コード、インッ!」
バチッという音と同時に、潰れた球体が光の粒子となって爆ぜる。青いエネルギーが腕から全身に一気に流れ込み、皮膚の内側から装甲が展開していく。
脚部、胴体、両腕、最後に視界を覆うマスクーー
一瞬で、全身が青の光に包まれた。
「さぁ、戦いの時だ!」
姿を変えた俺が、一歩、敵へと足を踏み出 す。地面が震えた。
目の前の敵に視線を定める――
“コード”としての本能が、俺の中で目を覚ます
ゾイオムが一気に襲いかかってきた。スピードが、異常だ。攻撃をかわせたのは、 ほんの数秒だけ。一瞬の隙に吹き飛ばされた。
「くそ……っ」
倒れた俺の前で、ゾイオムが陽菜に向かって動き出す。
「……やめろ……!」
立ち上がろうとするが、体が動かない。
そのとき、陽菜の声が響いた。
「立ってよ、蓮!! 私……またあんたが消えるなんて、絶対イヤだから!」
――守らなきゃ。
俺は拳を握りしめ、立ち上がった。
「俺は……もう逃げない!」
力が再びみなぎり、ゾイオムに突っ込む。攻撃の動きを読み、反撃。回し蹴りが命中するが、倒れない。
「コードブラスター!」
右手に集まる青い光を撃ち出し、ゾイオムの胸に直撃――光の中に消えていった。
静かになった街に、俺の息遣いだけが響く。変身を解くと、陽菜が駆け寄ってきた。
「ほらね。やればできるじゃん、コードヒーロー」
「..... そのネーミング、ダサすぎ」
陽菜が笑った。俺も、今度はちゃんと笑えた。
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続く
陽菜の言葉が、蓮の心に灯をともした。 逃げることをやめ、戦うことを選んだ 蓮。
初めて自分の意思でコードボールを握り しめたその瞬間、彼は“ヒーロー”として の一歩を踏み出した。
だが、ゾイオムの脅威は終わらない。 そして、蓮の力の裏には、まだ語られて いない“真実”が眠っている。
次回「交わる時」
謎の教師・黒瀬の登場が、物語を大きく 揺るがす。




