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私だけ、冬。  作者: 奏花
2/2

#2 - 忘れられない過去。

 折角の入学式。私なら頑張れるよ。朝起きたら、__が笑いかけていてくれた。

 夏菜なら大丈夫だよ、って言ってくれた。大好きな__は、いつも隣にいる_____。


【私だけ、冬。】

#1 , 私は何処に。【序】

#2 , 忘れられない過去。

                         ◇◇◇

 「早く生きろ」というように、明日は私を急かす。だから、私はそれに乗じて毎日を単純にこなす。だって、毎日を単純に過ごせば、すぐ一日なんて過ぎていくんだから。

 でも、明日は少し違う。新しい友達。新しい出会い。がんばれ、私。

 モノクロな心に映ったのは、理想の自分。ああ、私が一番欲しかったもの。学力、お金、幸せな人生?そんなものじゃない。みんなと同じ、楽しい時間を共にする“友達”がただ欲しいだけ。私の心に、子葉が伸びてくる。

 明日の自分は、どんなふうに過ごしているだろうか。期待や高揚感のような気持ちが昂る一方、私の心にはさっき出たっばかりの子葉を枯らせよう、と言わんばかりに寒い風も吹いている。除草剤を巻こうとする誰か。お願い、生き延びて、私。

                         ◇◇◇

 そう願った次の日は、寒い風が強く頬を打つ、なんとも言えない日。窓から微かな光が差し込む。

 朝起きたら、私は冷たい麦茶を一気に飲む。新しい朝の目覚めを迎えたい、そう思っていた。今日は、いつもより少し気分が良い。母親が、少し暖かい目をしている気がする。

 私は新しい制服を纏い、新しい自分に期待をして、门囗を抜ける。冷たい風と冷え切った心は、どこか似ている。三つ編みが晴天を揺らす。傷跡にもしっかり蓋をした。笑顔だって練習した。ちゃんと、準備した。今日の私なら、きっと大丈夫。2人の学生が、互いに笑顔を浮かべながら通り過ぎていく。些細なことでも、私は緊張してしまう。

 バスに乗り込んだ私は、緊張と期待と共に、運ばれていく。モノクロに見えた乗客は、停留所に近づくうち、少しずつ色付いていく。傷口から出た子葉は、少しずつ確実に大きくなっている。

 “頑張って、”と、どこからか聞こえたのは幻聴だろうか。

 気付けば、同じ制服を着た人たちがたくさん乗っていた。新しい芽が出てきた頃だろうか。今の私なら、楽しく過ごせる気がする。

                         ◇◇◇

 昨日は、明日のためにと寝る時間を削り用意をした。明日のために、明日のために。

 私の隣で、__が笑ってる。心が繋がっている。__は、「夏菜っ!」って楽しく話しかけてくれる。私が失敗した時も、__は、「大丈夫だよっ!」って笑いかけてくれる。そんな素敵な__。

 私って単純だなあ、思うことが。自分でも思った。      

 __は、今日も、心の中で、笑いかけてくれた、気がした。

 昨日と一緒に、暖かい布団から目覚める。昨日がたとえどれだけ残酷だとしても、私は素敵なことを考える。残酷な昨日は忘れよう。それはただの現実逃避じゃない。だって、__がそこにいるから。昨日なんて、捨てて、迎えに行こう。そう決めていた。大好きだよ。

                         ◇◇◇ 

 気づけば、ずっとそこにいた__は、あまり見なくなった、いや、見えなくなった。お願い、傍にいてよ。

 __と居たから、私は生きて来れたんだよ。モノクロの世界が、光彩で色づいていったのは、__のおかげなんだよ、ねえ聞いてよ、


                        “ふうか”。

                         ◇◇◇ 


 私だけ、時が止まったままなんだよね、実は。ねぇ、どうしたらいいかな、ふうか。

 私、このまま、頑張れるかな。新しい環境に慣れるかな。どうしたらいい...、?


【私だけ、冬。】

#1 , 私は何処に。【序】

#2 , 忘れられない過去。

#3 , 幻聴と子守唄。


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