第9章: 準勇者と異世界の姫君-1
風間伊佐がアーサーと別れようとしたとき、廊下の端に半分だけ顔を出している人物がいた。その人物は、風間伊佐とアーサーを宝石のように青い眼鏡越しに見つめている。
「え…団長、あれは…?」風間伊佐はアーサーに驚きの表情で尋ねた。
「勇者様、もう言わなくても分かっているでしょう?」アーサーは微妙にからかうように言った。
「えっと…こんな状況で、君たちは彼女を連れて帰らないのか?」風間伊佐はため息をつきながらアーサーに聞いた。
「心配しないで、姫は頑固で行動力があるから、今無理に連れ帰ったら、王宮が大騒ぎになるよ。」アーサーは少し笑いながら答えた。
「でも、魔族の事件が終わったばかりだよ?彼女をここに放置して大丈夫なのか?」風間伊佐は驚き、少し不安げに言った。
「大丈夫だよ、今は警備も強化されているし、僕も近くにいるから。何かあればすぐ駆けつける。」アーサーは安心させるように言った。
「それに、ここには勇者様がいるじゃないか。」アーサーはおどけた表情でそう言ってから、風間伊佐を残して去っていった。
「この親子、ほんとに俺を試すようなことばかり…」風間伊佐は呆れたように言いながら、彼らの後ろ姿を見送った。
その時、まだ顔の半分しか見えていないが、遠くからその宝石のように青い眼鏡が風間伊佐をじっと見つめていた。
風間伊佐は少し気まずそうに笑い、手を振って姫に合図を送った。
ようやく、姫は恥ずかしそうに壁の陰から出て、風間伊佐の元へと歩き出した。
二人が1メートルほどの距離に近づくと、約1分間の沈黙が訪れた。
その瞬間、風間伊佐の心の中で様々な思考が駆け巡る: 「どうしよう、どうしよう、何を言えばいいんだ…さっきの宮殿でのこともあるし、魔族との戦いもあったし、なんだか情けない…何を言えば…ああ、どうして神様はこんなふうに試練を与えるんだろう、どうして国王はこんなことをさせるんだ、どうして姫も…」
「その…」
風間伊佐が思考に没頭していると、姫が静かに声をかけてきた。風間伊佐はその瞬間、すべての思考が止まり、姫の青い目を見つめる。
「あなたの世界の話を聞かせてもらえませんか?勇者の世界って、どんな感じなんですか?」姫の問いに、風間伊佐は心が少し落ち着いた。
「もちろん。ただ、外は少し寒いから、先に中に入ろうか?」
「はい!」姫は嬉しそうに答えた。
姫が屋内に入ると、風間伊佐はドアを閉めようとしたが、ふと心配になり、思わず呟いた。「ちょっと待って、これで俺の命に危険が及ぶことはないよね?まあ、いいか…」
PS:
その頃、チャリマンはこの話を聞いて激怒していたが、魔族の出現によりその場に引き留められていた。