表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
平凡な者の異世界旅  作者: 悠遊之抽


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

86/112

第81章:消え残る炎と星の火花

後に、風間伊佐は騎士たちと共に、戦死した騎士たちの家族を一軒一軒訪ねて回った。例外なく、遺族たちは涙にくれていた。


泣き崩れる両親、嗚咽を漏らす妻、無言で涙を流す幼い子供たち。

そのひとつひとつの表情が鋭利な刃となって、風間伊佐の胸を何度も何度もえぐっていった。


「勇者様、本日はここまでにして、私たちは先に戻ります」


風間伊佐は騎士たちと共に今日の訪問を終え、騎士団の訓練場へと戻ってきた。


「ありがとう、今日は本当に助かった」

風間伊佐が深く頭を下げると、騎士たちはそれぞれの足で帰っていった。


「勇者様、今日の具合はどうでしたか」

背後からアーサーの静かな声が届いた。


「……言葉にできないよ」

風間伊佐は振り返らず、絞り出すように答えた。


「辛いでしょう」

アーサーは彼の後ろ姿を見つめながら言った。

「遺族に死を伝えるのは、いつだって難しいものです。時には、感情が爆発する家族もいて……それがまた、苦しい」


風間伊佐は黙ったまま拳を強く握りしめ、その手が小さく震えていた。


アーサーはそれ以上言葉を重ねず、静かに彼の隣に立った。

「勇者様、一度、顔を上げてごらんなさい」


促されるまま、風間伊佐はゆっくりと顔を上げた。

目の前には、誰もいない広々とした訓練場。そして、夕陽が二人の影を長く引き伸ばし、固く踏みしめられた土の上に落としていた。


「俺が初めてこういう役目を任されたのは……十八の時だった」

アーサーは懐かしむように語り始めた。

「その時、俺は小隊長になりたてで、初めて訪れた家で出迎えてくれたのは一人の母親だった。彼女は泣くこともせず、ただ俺の手を強く握ってこう聞いた。


『うちの子は、騎士として恥じない戦いをしたんでしょうか?』と」


アーサーは少し自嘲気味に笑った。

「俺は嘘をついた。彼は敵を何人も倒して、仲間を守り抜いた立派な戦士だったって。

でも、実際は……俺たちは奇襲に遭って逃げる最中、彼は追ってきた敵に馬から叩き落されて……」


「……団長」

ついに風間伊佐の声が震えながら漏れた。

彼は顔をアーサーに向け、目には涙が浮かび、言葉には苦しみと戸惑いがにじんでいた。


「今日、五歳くらいの女の子が俺の服の裾を掴んで訊いてきたんだ。

「勇者って、本当に一番強いの?じゃあ、勇者の人はパパを連れて帰ってこられるの?」


風間伊佐の声が嗚咽に変わった。


「何も言えなかった。ただ、立ち尽くすしかなかった。

そして……白髪の男性が杖をついて、深々と頭を下げてきて……

「息子をはじめ、多くの騎士たちを立派に戦わせてくださり、ありがとうございました」と……」


「俺なんかに、そんな感謝される資格なんてない……!


父として、夫として、息子として――戦って、散っていった彼らは皆……俺なんかを守るために命を落とした。

……なのに俺は、残された家族に、こんな苦しみを与えてしまったんだ……!」


肩を震わせながら風間伊佐は頭を垂れた。その姿は、まるで世界の全てを背負い込もうとしているようだった。


アーサーは少し黙ってから、そっと手を置き、彼の肩を力強く叩いた。


「勇者様、顔を上げてください。

騎士たちは、あなた一人のために戦っていたんじゃない。

彼らは、自分の家族のために、大地のために、このアレクスのために、剣を握っていたんです」


「この痛みから逃げないでください。

この痛みこそが、我々が何のために戦うのかを教えてくれる」


「勇者様の務めは、剣を振るうことだけじゃない。

犠牲になった者の意思を背負い、生き残った者の悲しみも背負って、この戦争を終わらせること。

そして、誰も死ななくていい未来を創ることです」


その言葉に風間伊佐は顔を上げ、アーサーをまっすぐに見つめた。


アーサーは静かに訓練場を指差した。

「見てください。戦争で多くの騎士が倒れても、ここにはまた新たな若者が立つでしょう。

目を輝かせ、希望を胸に、あなたの背を追いかけてくる。


その時、何を伝えますか?偽りの栄光ですか? 違う。


彼らには真実を語ってください。

この道がいかに重く、厳しいものか。


そして、先人たちが命を懸けて歩んできた道の意味を……」


「これまで幾千もの命が散っていった。

でも、それを恐れて人は止まらない。

家族のために、理想のために、再び剣を取る者たちは必ず現れる」


「その時、勇者様。

あなたが、彼らの未完の理想を継ぎ、導くのです」


アーサーの視線は強く、まっすぐだった。


風間伊佐はその目を見つめ返し、徐々にその瞳の中の迷いが消えていった。

悲しみと重みの奥に、もう一度燃え上がるような意志が宿っていた。


彼は大きく息を吸い込み、そのすべての悲しみを胸に飲み込むかのように、静かに呟いた。


「……分かりました」


その瞳に、かつての光を取り戻した風間伊佐を見て、アーサーは静かにうなずいた。


「もう遅い時間です。お戻りください、勇者様。

明日も、訪ねる家はありますから」


アーサーが背を向けて去っていく。


風間伊佐はその背中に向け、小さく、しかし確かに感謝を伝えた。

「……ありがとう、団長」


「師匠っ!」

その時、アリアンの声が空から響き、彼女はふわりと風間伊佐の目の前に降り立った。


「おお、アリアンか。今日の教えはどうだった?」


「ジェミットと私はもう風の魔法で飛べるようになったよ〜」

アンナがアリアンの後ろから飛び出し、嬉しそうに風間伊佐の前にやって来た。


「おお、そうか、それはすごいな〜」


「それとね、アリアンお姉さんはマックス兄ちゃんの得意な魔法も教えてくれたんだよ!」


「えっ……アリアンは君たちに何を教えたんだ?」

風間伊佐は嫌な予感がして、眉の端がぴくっと動いた。


「いっぱいあるよ、例えば……」

アンナは身を乗り出し、口を大きく開いた。


「まさか……」


「《火属性魔法・ドラゴンブレス》!」

アンナは口元から小さな火の玉をぷっと吹き出した。


「へへへ」

アンナは照れくさそうに頭をかきながら言った。

「ごめんね、この技はアリアンお姉さんみたいにたくさん火を出せないんだ」


風間伊佐は呆れたようにその光景を見つめていた――

この技は彼がまだ戦技の練習で両手が痛くて仕方なく、ドラゴンの火を真似して作った魔法だったのだ。

彼は顔をしかめて、アリアンの「ほら、褒めて!」という顔を見上げ、諦めたように額に手を当てた。


「アリアン……お願いだから、ちゃんと魔法を教えてくれ……アンナとジェミットを変な子にしないでくれよ……」

アリアン(Arian):


主人公と仲間:

風間かざま 伊佐いさ〔MAX〕

リック(Rick)

エマ(Emma)

レイチェル(Rachel)



世界・国家:

休ジェスト(ヒューゲスト)〔世界名〕

アレクス王国アレクス



王族・王宮関係者:

シャルルマン・ハンスウォーケン〔国王〕

エリザベート・ハンスウォーケン〔王女〕

ウォリック・ハンスウォーケン〔第一王子〕

ジフク・ハンスウォーケン〔第二王子〕

クリス・ハンスウォーケン〔第三王子〕



宮廷・騎士団関係:

リゼス・アンコベル〔首席女神官〕

アルドフ・ツァイコロフ〔宰相〕

アーサー・リチャード〔騎士団長〕

マイヤー・オギリテ〔騎士団副団長〕

アリアン・レフォルト〔魔法騎士団長〕

カフス・フォンデシーン〔魔法騎士団副団長〕

ジュリエット・ナスタント〔初級神官〕

ダンブズ・ホークランド〔前大賢者〕

イレス・ヴォジリット〔メイド〕

リチャード・ディオジット公爵〔東方領地領主〕




主人公関係者:

天翔てんしょう〔風間伊佐の騎乗馬〕

養女の庶民の女の子: アンナ

養子の庶民の男の子: ジェミット



他国・神・魔族

東方帝国 ロールス

南方王国 シーク

中土王国 プシス

中土王国 ウランクス

シドレフ・グランシス〔プシス国王〕

プシス公爵 ヒルトン・ヴァルキス

ウランクス公爵 ヴァキル・キルコフ

魔族将軍 クラシド

魔族魔法将軍 シフィス



神:

光の神 エリクス(エリクス)

大地の神 ディートラ(ディートラ)




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ