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平凡な者の異世界旅  作者: 悠遊之抽


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第77.5章-2:歌声に宿る童話と遥かなる世界

この夜、傷ついた二つの心は寄り添い合い、互いの傷を癒しながら、胸に遺された想いを抱いて共に歩き出した。


翌朝、柔らかな光がテントの入口の布を透かして差し込み、風間 伊佐はゆっくりとまぶたを開いた。


「……もう朝か……」


「マックスお兄ちゃん、おはよう〜〜!」


幼い声が耳元で響き、風間 伊佐は顔を下げると、アンナがじっとこちらを見つめていた。


「おぉ、アンナ。おはよう。昨晩はよく眠れたかい?」


「うん、お兄ちゃんの歌のおかげ。聞いてるうちに、怖い気持ちが消えていって、なんだかすごく安心して……いつの間にか寝ちゃったの」


アンナは笑顔でそう答えた。


「そうか。気に入ってくれてよかったよ」


風間 伊佐も穏やかに笑い、そっと返した。


「じゃあ、朝ごはんにしようか」


そう言って立ち上がると、風間 伊佐はテントの外へ出て、三人分の朝食の準備を始めた。

その頃、ジェミットはまだ夢の中だったため、風間 伊佐とアンナは彼を起こさないようにそっと動いた。


「マックスお兄ちゃん、昨日のあの歌、私にも歌えるように教えてくれる?」


アンナは食材の準備を手伝いながら、目を輝かせて尋ねた。


「もちろんだよ。この歌の歌詞とメロディーはね……」


風間 伊佐はそう言って、元の世界でよく歌われていた曲「童話」を教えながら、手際よく朝食を作っていった。

香ばしい匂いが漂い始める頃には、アンナも少しずつその歌を口ずさめるようになっていた。


やがて朝食ができあがり、二人は料理を持ってテントへ戻り、ジェミットを起こそうとしたその時──


「マックスお兄ちゃん、この歌、すごくきれい……。歌詞に物語みたいな美しさがある。王子様とお姫様の話なの?」


「うーん、そうだな……」


風間 伊佐は少し考えてから、ゆっくりと語り出した。


「この歌はね、実はごく普通の恋人たちの物語なんだ。

男の子は歌手で、女の子はいつも陰から彼を支えていた。やがて男の子はチャンスを掴むんだけど、その時、女の子が病気で倒れてしまう。

それでも男の子は、彼女のそばを離れず、一緒に病気と闘い続けたんだ」


「最後は、女の子……治ったの?」


「歌では、はっきりとは語られていない。

でもね、この歌が伝えたいのは――たとえ病気になっても、歳を取っても、愛し合う二人は最後まで寄り添い続けるってことなんだ」


「……じゃあ、王子様と天使って?」


「僕の元の世界には、もう貴族とか平民っていう身分制度は存在しないんだ。少なくとも、表向きはね。

王子様やお姫様は、もう現実の存在じゃなくて、物語の中にしかいないんだよ」


「この歌に出てくる女の子はね、物語みたいな王子様に憧れていた。でも彼女は気づいてなかった。

本当の王子様は、すでにそばにいて、どんな時も一緒にいてくれた。

男の子は、まるで天使のように、その腕を広げて彼女を包み込んで守っていたんだ」


「……そうなんだ。なんて素敵な恋……。私もそんな人に出会えるのかな……」


「努力すれば……きっと、出会えるかもしれないよ」


「……!?」

アンナは不思議そうな顔をして、風間 伊佐を見上げた。


「この世の中にある素敵なものは、どれも簡単には手に入らない。

幸せな暮らしも、美しい恋も、自分の手で掴み取って、作り出していくものなんだ。

その過程で、つらいことや苦しいこともあるけど、あきらめなければ、きっといつか自分の目指す場所に辿り着けるはずさ」


「……」


アンナはしばらく黙っていたが、やがてぽつりと口を開いた。


「ねえ、マックスお兄ちゃん……さっきから『元の世界』って言ってたけど……それって、どういう意味?」


「あ……そういえば、まだ言ってなかったね。

実は、僕はアレクス王国に召喚された――勇者なんだ」


「……!?」


アンナは目を見開き、言葉を失って風間 伊佐を見つめた。


「ごめんね。隠してたつもりはなかったんだけど……すっかり言いそびれててさ」


「そっか……そうだったんだね……」

アンナはふっと微笑んで、ぽつりとつぶやいた。


「マックスお兄ちゃん……本当に、君の世界には身分の区別がないの?」


「うん、基本的にはね。象徴的な王室が残ってる国もあるけど、ほとんどの国はもう身分制度を廃止して、皆が平等ってことになってるんだ」


「でも、貴族がいなかったら、国はどうやって運営されるの?」


「四年ごとに、国民が投票して、政策や能力を見てリーダーを選ぶんだ」


「……国民が……選ぶの? 本当にそんなやり方で国って動くの?」


「動くよ。僕の世界で一番強い国は、その方法で運営されている」


「じゃあ……私たちの国も、そんな風になれるのかな……?」


アンナの問いかけに、風間 伊佐はしばらく考えた後、静かに答えた。


「……なれるかもしれない。でも、僕の世界では、その仕組みに辿り着くまでに、たくさんの人が努力して、戦って、命を落としたんだ。

民衆が声を上げて、血を流して、ようやく掴んだ自由だった」


「……やっぱり……簡単なことじゃないんだね……」


アンナはうつむきながらつぶやいた。


「……でも、願わくば、いつかこの世界も、マックスお兄ちゃんの世界のように――

身分に縛られず、皆が自分の未来を選べる場所になりますように……」


「アンナ……」


風間 伊佐はその小さな背中を見つめながら、心の中で静かに、誰にも聞こえないように謝った。


――ごめん……僕には、世界を変えるほどの勇気は、ないんだ……。

アリアン(Arian):


主人公と仲間:

風間かざま 伊佐いさ〔MAX〕

リック(Rick)

エマ(Emma)

レイチェル(Rachel)



世界・国家:

休ジェスト(ヒューゲスト)〔世界名〕

アレクス王国アレクス



王族・王宮関係者:

シャルルマン・ハンスウォーケン〔国王〕

エリザベート・ハンスウォーケン〔王女〕

ウォリック・ハンスウォーケン〔第一王子〕

ジフク・ハンスウォーケン〔第二王子〕

クリス・ハンスウォーケン〔第三王子〕



宮廷・騎士団関係:

リゼス・アンコベル〔首席女神官〕

アルドフ・ツァイコロフ〔宰相〕

アルドフ・ツァイコロフ〔騎士団長〕

マイヤー・オギリテ〔騎士団副団長〕

アリアン・レフォルト〔魔法騎士団長〕

カフス・フォンデシーン〔魔法騎士団副団長〕

ジュリエット・ナスタント〔初級神官〕

ダンブズ・ホークランド〔前大賢者〕

イレス・ヴォジリット〔メイド〕

リチャード・ディオジット公爵〔東方領地領主〕




主人公関係者:

天翔てんしょう〔風間伊佐の騎乗馬〕

養女の庶民の女の子: アンナ

養子の庶民の男の子: ジェミット



他国・神・魔族

東方帝国 ロールス

南方王国 シーク

中土王国 プシス

中土王国 ウランクス

シドレフ・グランシス〔プシス国王〕

プシス公爵 ヒルトン・ヴァルキス

ウランクス公爵 ヴァキル・キルコフ

魔族将軍 クラシド

魔族魔法将軍 シフィス



神:

光の神 エリクス(エリクス)

大地の神 ディートラ(ディートラ)




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