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平凡な者の異世界旅  作者: 悠遊之抽


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第77.5章:この腕を翼にして 君を守るよ

「勇者様、これは一体……?」


リチャード・ディオジット公爵は、風間伊佐の目の前にいるアンナとジェミットの兄妹を見つめて問いかけた。


風間伊佐はアンナとジェミットを馬に乗せ、騎士団を率いてリチャード公爵と合流していた。彼は困ったように苦笑いしながら答えた。


「えっと……話が少し長くなりますが……」


その時、副団長のマイヤー・オギリテが馬を駆って公爵の元へ駆け寄り、小声でこれまでの経緯を説明した。


話を聞き終えたリチャード公爵は深いため息をついた。


「……ふう。まあ、大事にならなかったのは不幸中の幸いだ。勇者様、こういうことは今後控えた方がいいと思いますよ。」


「……はい。」


アレクス軍の隊列が整ったのを見計らい、一行はアレクスへと出発した。


プシスのアシス伯領を出たところで、アンナはそっと後ろを振り返り、遠くの森を見つめた――そこは、彼女の両親が永遠の眠りについた場所だった。


揺れる木々の影の中に、質素な墓標がふたつ、静かに佇んでいた。正面はアレクスへ続く道を向いており、降り注ぐ陽光とそよ風に揺れる枝葉が、まるで無言のまま姉弟を見送っているかのようだった。


風間伊佐はアンナの視線に気づくと、何も言わずに彼女の肩にそっと手を置いた。ただ、一緒にその穏やかな森を見つめていた。


木漏れ日が地面に斑模様を描き、その一つ一つがまるで優しく見送る瞳のように、静かに二人の背を押していた。


ジェミットはすでにアンナの腕の中で眠りに落ち、アンナは風間伊佐に身を寄せて外套をぎゅっと握りしめていた。それはまるで、彼女が最後に頼れるもののようだった。


彼女は涙を見せず、しかし確かな声で囁いた。


「行こう、お兄ちゃん。」


風間伊佐はそっと手綱を引いた。天翔が鼻を鳴らし、一歩を踏み出した。隊列に続いて――


――それは、別れであり、そして始まりだった。


――夕刻――


アレクス軍はプシスのアシス伯領を抜けたが、まだ国境には達していなかったため、その夜はプシス領内で野営することになった。


その焚き火の傍らには、ふたつの小さな影が加わっていた。


「おいし〜〜〜い!」


アンナは風間伊佐がフライパンで作った即席の炒め煮を頬をゆるめながらもぐもぐと味わっていた。


「そう?気に入ったなら、たくさん食べてね。」


風間伊佐は夢中で食べる兄妹の姿を微笑ましく見つめ、ふと顔をそむけて静かに焚き火の炎を見つめた。


出征前、ケンたちと火を囲んで笑い合いながら食事をした情景が浮かんだ。


そして今、自分の前には姉弟だけが残っている――その事実に、胸の奥がぎゅっと締めつけられた。


「マックスお兄ちゃん、食べないの?」


アンナは風間伊佐の様子に気づいたのか、心配そうに声をかけた。


「うん、まだお腹空いてないから。先に食べてていいよ。」


彼女の気遣いを感じて風間伊佐は笑顔を作ってそう答えた。


そして、自分に言い聞かせるように気持ちを奮い立たせた。


――もう悲しみに囚われている場合じゃない……決めたんだ、前に進むって……


――食後――


風間伊佐はアンナとジェミットを自分のテントへ案内した。


すでに二人用のベッドを用意させており、そこへ案内した。


「今夜はゆっくり休んで。明日の朝、また出発だよ。」


彼は優しくそう言った。


アンナたちは小さくうなずき、布団にもぐり込んだ。


彼らが眠りにつくのを見届けて、風間伊佐も自分の寝台に横たわった。


天井を見上げながら、アレクスに戻った後のことを考えた。


――シャルルマン陛下に、どんな顔をして会えばいいのだろう……


「……もう考えても仕方ないか。なるようになるだろう。」


しばらく考えた後、風間伊佐は思考を切り上げ、眠りに身を任せようと目を閉じた。


……その時、衣の端をそっと引っ張られる感触があった。


目を開けて振り返ると、アンナがジェミットを抱えて自分の寝床のそばに立っていた。不安げな表情で。


「……ねえ、マックスお兄ちゃん。ちょっと……怖くて……一緒に寝てもいい……?」


風間伊佐の胸の奥がぎゅっと締めつけられた。


両親を失い、慣れない環境に放り込まれた子供たちにとって、不安なのは当然だった。


「……おいで。」


彼は布団を開け、優しくそう言った。


アンナとジェミットは静かに彼の布団に潜り込んできた。


風間伊佐は毛布をかけて、そっと二人を引き寄せた。風邪をひかせないように。


「これで、もう怖くないだろ?安心して、おやすみ。」


そう言って再び目を閉じた。


……数分後、かすかな声が聞こえた。


「……マックスお兄ちゃん……マックスお兄ちゃん……」


風間伊佐が目を開けると、ジェミットはすでにアンナの背に寄り添いながら眠っていた。


だがアンナはじっと風間伊佐の目を見つめていた。


「どうしたの、アンナ?」


「……なかなか寝られなくて……お話、してくれないかな……?」


アンナの瞳に宿る期待の色に、風間伊佐は戸惑った。


彼は物語を語った経験はほとんどなく、子供の頃からもずいぶんと時が経っていた。


「うーん、それなら……歌ってあげようか?童話に出てくる王子様と天使のお話の歌だけど。」


「歌?うん、聴きたい!」


アンナの瞳がきらきらと輝き、風間伊佐は微笑んだ。


そして、優しく懐かしい歌を口ずさみ始めた――《童話》という名の歌を。


「♪君が泣いて僕に言った おとぎ話なんて嘘だって♪」


「♪僕が君の王子様になれるわけないって♪」


「♪でも君が“好き”って言ってくれた日から♪」


「♪僕の空には 星が輝いてた♪」


「♪君のためなら 天使にもなれるよ♪」


「♪この腕を翼にして 君を守るよ♪」


「♪信じて、きっと僕たちは おとぎ話のように♪」


「♪幸せで、笑顔のまま終われるから♪」


やがて歌が終わり、風間伊佐がそっと目を伏せると、アンナは彼の胸に寄り添い、彼の服の裾をぎゅっと握っていた。


その目元には、静かに涙がこぼれていた。


「……お父さん……お母さん……」


そう呟きながら、彼女は眠りに落ちていった。


その姿を見つめながら、風間伊佐はそっと腕を伸ばし、姉弟を優しく抱き寄せた。


彼は頭を下げ、アンナの額に自分の額をそっと重ね、静かに囁いた。


「……ごめんね……」



注記:

童話フェアリーテイル』は、2005年に華語歌手・光良によって発表された楽曲です。中孝介さんも日本語版をカバーしていますが、歌詞の内容は原曲とはやや異なっているようです。

ここで使われている翻訳は、主に原曲(中国語バージョン)の歌詞を元にしたものです。個人的には、Youtuber・初芝崇史さんのカバー歌詞が最も原曲に近いと感じています。

以下に3つのバージョンのリンクを載せておきますので、興味のある方はぜひ聴いてみてください:


原曲:光良『童話』

https://www.youtube.com/watch?v=bBcp_ljCBGU


初芝崇史『童話』(中国語カバー)

https://www.youtube.com/watch?v=6Pms0mekOdk


中孝介『童話』(日本語版)

https://www.youtube.com/watch?v=bm07NDN6_WI

アリアン(Arian):


主人公と仲間:

風間かざま 伊佐いさ〔MAX〕

リック(Rick)

エマ(Emma)

レイチェル(Rachel)



世界・国家:

休ジェスト(ヒューゲスト)〔世界名〕

アレクス王国アレクス



王族・王宮関係者:

シャルルマン・ハンスウォーケン〔国王〕

エリザベート・ハンスウォーケン〔王女〕

ウォリック・ハンスウォーケン〔第一王子〕

ジフク・ハンスウォーケン〔第二王子〕

クリス・ハンスウォーケン〔第三王子〕



宮廷・騎士団関係:

リゼス・アンコベル〔首席女神官〕

アルドフ・ツァイコロフ〔宰相〕

アルドフ・ツァイコロフ〔騎士団長〕

マイヤー・オギリテ〔騎士団副団長〕

アリアン・レフォルト〔魔法騎士団長〕

カフス・フォンデシーン〔魔法騎士団副団長〕

ジュリエット・ナスタント〔初級神官〕

ダンブズ・ホークランド〔前大賢者〕

イレス・ヴォジリット〔メイド〕

リチャード・ディオジット公爵〔東方領地領主〕




主人公関係者:

天翔てんしょう〔風間伊佐の騎乗馬〕

養女の庶民の女の子: アンナ

養子の庶民の男の子: ジェミット



他国・神・魔族

東方帝国 ロールス

南方王国 シーク

中土王国 プシス

中土王国 ウランクス

シドレフ・グランシス〔プシス国王〕

プシス公爵 ヒルトン・ヴァルキス

ウランクス公爵 ヴァキル・キルコフ

魔族将軍 クラシド

魔族魔法将軍 シフィス



神:

光の神 エリクス(エリクス)

大地の神 ディートラ(ディートラ)




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