第55章: Power & Responsibility
治療を終えた後、伊佐は――
アリアンの治療のおかげで、風間伊佐の身体の痛みはほとんど感じられなくなっていた。ふたりは空を飛び、城へと帰還したのだった。
――(最初から治療魔法を使ってくれていればよかったのに……。そしたら、あんな馬鹿みたいにドラゴンの真似して口開ける練習しなくて済んだのに……)
内心で愚痴をこぼしながら、伊佐は隣を飛ぶアリアンをちらりと見やる。
「師匠、まさか魔法にあんな使い方があるとは……。本日、目から鱗でございます」
アリアンは尊敬の眼差しでそう言ってきた。
「そ、そうか……気に入ったなら、何よりだよ……」
伊佐は照れくさそうに笑って視線を逸らした。
ふたりは空中で別れ、それぞれの行き先へと向かう。伊佐は王宮の食堂に赴き、チャリマン王一家との食事に参加することになった。
治療のおかげで、フォークやナイフも普通に使えるようになっていたが、ふと伊佐は、向かいに座るエリザベートの様子がどこか沈んでいることに気づく。
「ううっ……勇者さまが腕痛いなら、ごはん食べさせてあげられたのに……」
エリザベートは小声でぽつりとつぶやいた。
「ん? どうかした、姫様?」
「え? あ、な、なんでもないわよ〜? 今日は授業がちょっと疲れただけ〜」
伊佐の問いに、彼女は笑顔を取り繕って答えた。
夕食を終えた伊佐は、体調は戻ったものの、どこかに残る疲労感を抱えて浴場へ向かう。湯に浸かり、体を癒やした後、自室へ戻る途中――
「いやぁ、こっちの魔法ってホント便利だよな。風魔法で髪乾かせるとか、ドライヤーいらずって最高かよ……」
「しかも、今日は王様に遭遇しなかったのもラッキーだったわ。毎回あの王者のオーラで圧かけられるの、マジで心臓に悪いっての……!」
内心でそんなことをぼやきながら庭を歩いていると――
「はっ――!」
月光の下、汗を流しながら剣を振る王子・ウォリックの姿が目に入った。
「王子殿下……」
夜の闇に負けず修練を続ける姿に、伊佐は心を打たれ、思わずつぶやく。
「さすがは王子……。ここまで己を律する姿勢、見習わなきゃな……。俺も真剣に、この決闘に向き合わなきゃ」
──翌朝、訓練場にて。
朝食後、伊佐は騎士団の訓練場へやってきた。
「さあ、勇者よ。今日は昨日の続き、基本の剣術から始めるぞ」
アーサー団長が声をかける。
「はい!」
伊佐は昨日の動きを思い出しながら、素振りを始めた。
「ほう、たった一日でここまで改善するとはな。フォームも安定してるぞ」
「えっ、マジっすか?」
言われて初めて気づく。今日は無理に意識しなくても自然と体が動く。昨日とはまるで違う感覚だ。
「やっぱり、アリアンが治療してくれたおかげかな……」
ふと手を止めて、伊佐はぽつりと漏らす。
「団長……俺、ちょっとズルいって思われてませんか?」
「……ん? どういうことだ?」
伊佐は少し考え込んでから口を開いた。
「俺みたいな、急に異世界に現れたよく分からんヤツが、いきなり"勇者"なんて呼ばれて、国中からちやほやされて……しかも、普通の人より強い力まで与えられてる。……これって、なんか不公平じゃないですか?」
沈黙が流れる。
「まぁ――たしかに、不公平だな」
アーサーはにやりと笑って答えた。
「でしょっ!!」
「だがな……この世界って、そもそも不公平なんだよ」
アーサーは一転して真剣な表情になり、語り出す。
「貴族に生まれれば一生裕福。平民に生まれれば一生仕える側。奴隷に生まれたら……命すら保証されない」
「……」
「しかも、才能もまた、生まれながらにして差がある。努力しなくても成功する者もいる。だがな――」
「"才能"は、努力によってしか成果に変えられない」
「誰もが自分に何の才能があるかなんて知らない。ただ、積み重ねた先に見える"結果"が、それっぽく見えてるだけなんだよ」
「もしお前が剣の訓練を受けなかったら、魔法しか使えないただの術師だったかもしれない。でも、やってみたから分かった。お前には剣の才もある」
「……」
伊佐は黙ってその言葉に耳を傾ける。
「勇者としての力だって、持ってるだけじゃ意味がない。それをどう使うか、それが“勇者の責任”だ」
「その身分そのものが"天賦の才"なら、それをどう活かすかが大事なんだよ」
「貴族だって似たようなもんさ。生まれながらにして富も権力もある。だが、それに溺れるか、世界を変えるかは、その人間次第だ」
「陛下もそうだった。かつては平民や奴隷に未来なんてなかった。でも陛下は変えようとした。実際に、今じゃ王宮には元平民や奴隷出身の人間もいる」
「だからこそ、勇者よ。悩む前に、まずは力を価値に変えろ。民のために使え。それが、お前に託された使命だ」
アーサーのまっすぐな瞳が、伊佐の心を打った。
「……はいっ、団長! なんだか人生語られた気分ですけど、めちゃくちゃ刺さりました!!」
「よし、それじゃあ今日は新しい剣技の基礎を教えようか」
「お願いします!!」
伊佐の脳裏には、あるヒーロー映画の名言がよぎっていた――
『With great power comes great responsibility.』
アリアン(Arian):
主人公と仲間:
風間 伊佐〔MAX〕
リック(Rick)
エマ(Emma)
レイチェル(Rachel)
世界・国家:
休ジェスト(ヒューゲスト)〔世界名〕
アレクス王国
王族・王宮関係者:
シャルルマン・ハンスウォーケン〔国王〕
エリザベート・ハンスウォーケン〔王女〕
ウォリック・ハンスウォーケン〔第一王子〕
ジフク・ハンスウォーケン〔第二王子〕
クリス・ハンスウォーケン〔第三王子〕
宮廷・騎士団関係:
リゼス・アンコベル〔首席女神官〕
アルドフ・ツァイコロフ〔宰相〕
アーサー・リチャード〔騎士団長〕
アリアン・レフォルト〔魔法騎士団長〕
ジュリエット・ナスタント〔初級神官〕
ダンブズ・ホークランド〔前大賢者〕
イレス・ヴォジリット〔メイド〕
他国・神・魔族
東方帝国 ロールス
南方王国 シーク
中土王国 プシス
中土王国 ウランクス
シドレフ・グランシス〔プシス国王〕
魔族将軍 クラシド
魔族魔法将軍 シフィス
神:
光の神 エリクス(エリクス)
大地の神 ディートラ(ディートラ)




