第53章:ゼロから始める戦技訓練(せんぎくんれん)
「まず、剣を振るときは姿勢が大事だ。足は肩幅に開いて、そこから自分の感覚で微調整する。つま先は前を向き、重心を落とす。両手で柄をしっかり握って、一気に、迷わずに斬り下ろすことだ。」
「こ、こう……ですか!?」
風間伊佐はアーサーの指導通りに、両手で剣の柄を握り、なんとか一振りしてみせた。
「お前は風に揺れる雑草か!柄の握りが甘いし、斬るときに迷いすぎだ。もう一回だ!!」
「はいっっっっっ!!!!!」
アーサーが伊佐を指導している間、周囲で見ていた騎士たちはざわつき始めていた。
「うわっ……勇者、基本の構えすら知らないのか!? これ、本当に大丈夫か?」
「正直、無理じゃね……」
「こんなんで本当に魔族と戦えるのかよ……?」
「陛下、勇者とウォリック殿下の決闘を企んでるらしいぞ」
「それ、勇者にとっては地獄じゃん……」
「いやもう、このままじゃ決闘の日、どう考えても殿下の勝ち確定だろ」
こうして、第一日の午前の武技訓練はあっという間に終わった。
風間伊佐はほぼ丸一日、構えと斬り方の基礎練習を繰り返していただけだった。
昼休み、アーサーは伊佐と共に王宮へと向かい、シャルルマーニュ王一家と昼食を共にした後、午後の魔法訓練に入る予定だった。
「団長……本当に自分、やれると思いますか? 剣の才能、まるで無い気がして……」
伊佐は肩を落とし、がっくりとうなだれながら言った。
「落ち込むことはないさ、勇者。最初は誰だってそんなもんだ。武技ってのは、コツコツ積み重ねていって、ようやく形になるものなんだよ」
アーサーはやさしく励ました。
「俺だって、最初から強かったわけじゃない。昔話、覚えてるか? 若い頃の俺はただのケンカ屋だった。王子だった陛下が俺を拾って、騎士団に入れてくれてな……基礎も何もなかった俺が、毎日必死に鍛えて、今の地位まで来たんだ。だから勇者、お前だって諦めなければ、努力は必ず報われるさ」
「……はい、団長!(この励まし、ちょっと沁みる)」
アーサーの言葉に、少しだけ伊佐の顔に元気が戻った。
王宮の食堂前でアーサーと別れ、伊佐は一人でシャルルマーニュ一家との昼食へ向かった。
「やあ、マックスくん。今朝の武技訓練はどうだったかな〜?」
シャルルマーニュ王がにこやかに声をかけてきた。
「……もう、聞かないでください。自分、何にもできなくて、ほぼ一日中、剣の振り方しかやってませんでした……」
肩を落として伊佐が席に着いた。
「はっはっは〜! 誰だって最初はそんなもんさ。基礎ができれば、あとはスムーズにいくから〜」
シャルルマーニュ王は笑いながら答えた。
「そうだといいんですが……ところで陛下は、どれくらいで基礎を習得されたんですか?」
「ん〜……そうだな、一ヶ月くらいかな。毎日、剣を一万回振ってたよ」
「え!? 毎日一万回!? 一ヶ月!?」
伊佐は目を見開いた。
「そうそう。まあ、王族の血を引いてるから素質はいい方でね。一般人なら、数ヶ月かかるだろうな」
「数ヶ月……」
伊佐は顔面蒼白になり、そのままテーブルに突っ伏した。
「まあ、そんな感じだ。とにかくアーサーにしっかり教わりなさいな〜」
「えっと……決闘、やっぱり中止にできませんか!? 自分の素質じゃ、数ヶ月後に殿下と戦えるどころか、一撃も耐えられるか怪しいです……」
伊佐は今にも泣き出しそうな声で訴えた。
「それは無理だな。今やアレクシス中が、お前たちの決闘を楽しみにしてるんだから。それに、ウォリックの実戦経験を試すいい機会でもあるしな」
「まあ、心配するな。戦技だけじゃなく、お前が得意な魔法も勝負に含まれる予定だ。惨敗ってことにはならんだろう、ハハハハハハ!」
シャルルマーニュ王は豪快に笑った。
「ありがとうございます……」
伊佐は引きつった笑みで、かすかにうなずいた。
「……戦技でも、魔法でも、負けるつもりはない」
その時、朝食を静かに食べていたウォリック王子が、冷たい声でそう言った。
「はぁ……ん?」
伊佐がため息をつきつつ、箸を取ろうとした瞬間、腕の筋肉痛で持ち上がらないことに気づいた。
顔を真っ赤にして震える腕を必死に上げようとしていると――
「はい、勇者様。あ〜んして♪」
伊莉莎白が、スプーンに乗せた肉を伊佐の口元に差し出した。どうやら彼女は、伊佐が腕の痛みで食べられないことに気づいたらしい。
そんな彼女の行動に、伊佐はそろりと横目で隣を見た。
「まあまあ〜♪」
王妃はにこにこと、その様子を見守っている。
「エリザベート……お前、俺にそんなことしてくれたことあったっけ……?」
シャルルマーニュ王はしょんぼりと俯いたが、次の瞬間、伊佐に鋭い視線を向けて叫んだ。
「おい、お前! ありがたく食え! 得したな、このやろう!」
シャルルマーニュの“許可”を得た伊佐は、おそるおそる肉を口に運んだ。
王の怒りとは対照的に、エリザベートは満足げな笑みを浮かべ、まるで周囲にピンクの花が咲いたかのような雰囲気を漂わせていた。
その一方、黙って朝食を続けるウォリック王子の目には、燃えるような敵意が宿っていた――。
アリアン(Arian):
主人公と仲間:
風間 伊佐〔MAX〕
リック(Rick)
エマ(Emma)
レイチェル(Rachel)
世界・国家:
休ジェスト(ヒューゲスト)〔世界名〕
アレクス王国
王族・王宮関係者:
シャルルマン・ハンスウォーケン〔国王〕
エリザベート・ハンスウォーケン〔王女〕
ウォリック・ハンスウォーケン〔第一王子〕
ジフク・ハンスウォーケン〔第二王子〕
クリス・ハンスウォーケン〔第三王子〕
宮廷・騎士団関係:
リゼス・アンコベル〔首席女神官〕
アルドフ・ツァイコロフ〔宰相〕
アーサー・リチャード〔騎士団長〕
アリアン・レフォルト〔魔法騎士団長〕
ジュリエット・ナスタント〔初級神官〕
ダンブズ・ホークランド〔前大賢者〕
イレス・ヴォジリット〔メイド〕
他国・神・魔族
東方帝国 ロールス
南方王国 シーク
中土王国 プシス
中土王国 ウランクス
シドレフ・グランシス〔プシス国王〕
魔族将軍 クラシド
魔族魔法将軍 シフィス
神:
光の神 エリクス(エリクス)
大地の神 ディートラ(ディートラ)




