第5章:真の勇者(しんのゆうしゃ)
「え!?総理大臣と賢者!?」
風間伊佐は驚いた表情で尋ねた。
「柴可羅夫様は王国で総理大臣を務め、民衆の間では大賢者として尊敬されています。」
リジェスは答えた。
「総理大臣はまあ納得できるけど、柴可羅夫が大賢者と呼ばれるのは、彼の学識が深いからか、それとも魔族との戦争でその知識を使って人族が戦争に勝利する手助けをしたからなのか?」
風間伊佐は尋ねた。
「どちらもです。柴可羅夫様の学識は王国の中で一番と言われ、戦争でもその魔法を駆使して兵士たちを助けてきました。」
リジェスは答えた。
「魔法か……やっぱり異世界には魔法が欠かせないんだな。」
風間伊佐は心の中で思った。
「そして戦争の中では、その策略を駆使して王国軍が毎回勝利を収める手助けをしてきました。」
リジェスはさらに付け加えた。
「勝利を収める?でも、人族は魔族との戦いで敗北が多いって聞いたけど?」
風間伊佐は疑問を抱いた。
「人族と魔族の戦争はここ十年ほどで始まったばかりです。私が言っていたのは、他の人族国家との戦争における話です。」
リジェスは説明した。
「他の国との戦争か……やっぱり人族って、どの世界でも争ってるんだな。」
風間伊佐は心の中で感心しながら言った。
「はい。魔族が現れる前、人族はしょっちゅうお互いに戦争をしていました。私たちアレクシス王国は、幸運にも優れた王と賢者を持っていたため、人族間の戦争で無敗の地位を築くことができました。」
リジェスは言った。
「ええ、リジェスは柴可羅夫を総理大臣とは呼ばず、賢者として呼んでいるんですね。」
風間伊佐は言った。
「確かに、どの総理大臣もその職位に見合った能力を持っていますが、賢者という称号を得ることができる人物は、百年に一度の才能を持つ人にしか与えられません。」
リジェスは答えた。
「なるほど。」
風間伊佐は言った。
「ところで、私たちは今どこに向かっているんですか?」
風間伊佐は尋ねた。
「聖殿で勇者儀式を行うために向かっています。」
リジェスは答えた。
「え!?さっきから気になってたんだけど、勇者召喚の後に他にも勇者儀式があるんですか?」
風間伊佐は尋ねた。
「はい。古代の伝説によると、勇者召喚は外の世界から勇者にふさわしい人物を探し出す儀式に過ぎないんです。ただ資質があるというだけで、その後の勇者儀式を通じて、勇者の力をその者に与えるのです。」
リジェスは答えた。
「え〜〜〜それって、でもこの世界の人々にも資質を持った人がいないわけではないんですか?例えば陛下や大賢者とか。」
風間伊佐は質問した。
「そのことは私にはわかりませんが、私たちはあくまで古代の伝説に従っているだけです。」
リジェスは答えた。
「古代の伝説か……」
風間伊佐は言いながら考え込んだ。
「伝説というよりも、聖典の中に記された聖訓に近いものです。聖訓によれば、人族が滅びの日を迎えたとき、王と信者たちはその訓に従い、誠心誠意祈り、勇者を召喚して人族を滅亡の原因から救い、繁栄を取り戻すべきだと書かれています。」
リジェスは語った。
「では、勇者儀式はどうなるんですか?」
風間伊佐は尋ねた。
「その後に聖訓にはこう書かれています。『勇者が降臨した時、次の儀式を行い、勇者に聖なる力を授け、彼が人族を滅亡から救い、繁栄をもたらすのを助ける』と。」
リジェスは答えた。
「うーん!?でも、どうして降臨した勇者がただの資質を持った人間だとわかるんですか?儀式を経て初めて真の勇者になるんですよね?」
風間伊佐は尋ねた。
「それは、東方のローズ帝国が最初に勇者を召喚した国だからです。当時、ローズ帝国は魔族との戦争の最前線に立っており、すぐにでも勇者に戦争に参加してほしかったのですが、儀式を経ていない勇者は、訓練をしても魔法を使うことができず、体力訓練も普通の兵士よりも劣っていました。」
リジェスは説明した。
「ということは、勇者儀式を経て初めて力を得て、真の勇者になれるということですか?」
風間伊佐は尋ねた。
「はい。勇者は儀式を終え、人族の神から力を授かない限り、真の勇者にはなれません。」
リジェスは答えた。