第48章:光と闇の魔法
朝――風魔法と水魔法の訓練を終えた風間伊佐は、気づけばもう昼時になっていた。
そこで彼とアリアンは、水魔法の練習中に捕まえた魚を使って、川辺で焚き火を起こし、軽く焼いて昼食とすることにした。
食事を終えてひと休みした二人は、次に火魔法と木魔法の訓練へと進む。
風と水の基礎がしっかりしていたおかげで、新しい属性の習得もすこぶる順調だった。
「師匠、夕方までまだ時間ありますよね? この機会に光魔法も試してみませんか? 師匠ならすぐにできちゃいますって!」
アリアンは言葉少なに、伊佐をじっと見つめ、小さく頷いた。
その瞳は、まるで英雄を見上げるかのように輝いていた。
「よし、やってみるかッ!」
伊佐は鼻が天に突き刺さりそうな勢いで胸を張った。
「光魔法は、ちょっと特殊です」
アリアンはぽつりと呟くように言った。
「信仰が、鍵」
「信仰……?」
「神に祈る。心から。――それが、発動の条件です」
言葉の合間に静寂が流れる。だが、その分だけ重みがあった。
「じゃ、やってみてください師匠」
「おう」
伊佐は一歩踏み出すと目を閉じ、頭の中でイメージを膨らませた。
(神様……か。ここの神様にはあまり馴染みがないけど、まあやってみるか)
心の中で光の神・エリクスの名を呼び、勇者儀式のときの記憶を呼び起こす。
そして、某アニメの必殺技――O派気功波を思い浮かべ、右手をゆっくりと掲げた。
その瞬間、掌の前にまばゆい光が凝縮されていき、やがて強烈な光線となって前方へ一直線に放たれる。
光の奔流は一直線に並ぶ木々を次々となぎ倒し、数百メートルも先まで吹き飛ばした。
「師匠ーーーっ! ストップ!ストーーップ!!」
「えっ!?」
アリアンの叫びで正気に戻った伊佐は慌てて目を開く。
放った光線はすでに遥か遠くまで飛び、最後はおよそ一キロ先でようやく停止した。
「……すごい」
アリアンは息を呑み、小声で呟いた。
「師匠っ! 今の、すっごい技じゃないですか! 名前とかあるんですか!?」
……と言いそうな勢いで、彼女は目を輝かせながらじっと見上げてくる。無言の圧がすごい。
(O派気功波ってところか? でも“気”じゃなくて“光”だし……)
少し悩んでから――
「《聖輝撃光砲》だッ!!」
伊佐はドヤ顔で叫んだ。
アリアンは一瞬まばたきをしてから、ぽつり。
「……中二」
「……ちゅうに?」
「強い。……カッコいい」
言いながら、なぜか耳まで赤くなっている。
「いや、まぁ……ちょっと違うけど……そう思うならそれでいいか、ハハハ……」
ふいにアリアンの表情が真剣になる。
「……これ、人里で撃ったら……危険」
声は低く、小さい。でもその目は真剣だった。
「うっ……そ、そうだな……」
伊佐は、《聖輝撃光砲》が開けた一直線の森の道を見つめながら答えた。
「よし、今日はここまでにしよう。帰るか」
「……まだ、時間ある」
アリアンは背を向けたまま、ぽつりと呟く。
「闇属性も……やる?」
その言葉に、伊佐は思わず足を止めた。
「闇属性魔法は……それは、基本的に魔女や邪悪な者が使う禁忌の魔法です」
――そう語る彼女の背中には、普段の無邪気さはなかった。




