第43章:サービスシーン
「ただいま~~~~~っ!」
風間伊佐は勢いよく扉を開け、元気よく声を張り上げた。
「……って、返事があるわけないよな~~~」
部屋に入った彼は、肩をすくめて苦笑する。
「勇者様、おかえりなさいませ」
「うわああああああああっ!!!」
突如、背後から声がして、伊佐は思わず叫び声を上げた。
振り返ると、そこには二十歳前後のメイドが、まるで空気のように静かに扉の脇に立っていた。
「えっ……あなた、誰?」
「本日より勇者様のお世話をさせていただきます。イレース・ヴォジリットと申します」
彼女は優雅に一礼しながら名乗った。
「イレースさんか。よろしくね……って、びっくりした……」
伊佐は心臓を押さえながら、ややぎこちなく返事をする。
「でも、お願いだから今後はドアの横に無言で立たないで……心臓に悪いからさ」
「申し訳ありません、以後気をつけます」
「うん、それでOK!」
そう言うなり、伊佐はベッドにダイブした。
「おおぉ~~~!ダブルベッドでっか!ふっかふかで気持ちいい~……うひひひひ」
まるで布団に溶け込むように、彼は恍惚とした表情で身を沈めた。
「勇者様、儀式を終えたばかりですし、王宮の浴場でひと風呂いかがでしょう?心身の回復にとても効果的ですよ」
「それいいね!じゃあ、行ってみようかな!」
「着替えをご用意しております。お風呂上がりにこちらをお召しください」
イレースは、アリス風の可愛らしいナイトウェアを差し出した。
ナイトウェアを手にした伊佐は、早速浴場へと向かった。服を脱ぎ終えると、そのまま中へと足を踏み入れる。
「な、なんだこれ……!?もはや浴場というより温泉リゾートじゃん……!」
豪奢な装飾に囲まれた王宮の浴場を目の当たりにして、思わず感嘆の声が漏れる。
彼はまず洗い場で丁寧に体を洗い、それから湯船にゆっくりと身を沈めた。
「はあ~~~~~っ……これ、最高……生き返るって、こういうことを言うんだな……」
おじいちゃんのような声が自然と漏れたその瞬間──
「我が友、マックスよ!!!」
浴場に響き渡る、聞き覚えのある雄々しい声。
「えっ……まさか……」
湯気の向こうに、巨大な人影がぼんやりと現れる。
姿がはっきりするにつれ、伊佐の視線は釘付けになった。鍛え抜かれた筋肉の塊、隆々とした胸板、岩のような背中、ぶっとい腕、完璧に割れた腹筋──そして、あの聞き覚えのある声。
「へ、陛下っ!?なんでここにいるんですかっ!!?」
伊佐は湯船の中で叫んだ。
「何を言っておる。ここは王族専用の浴場だぞ」
シャルルマーニュは涼しい顔で答える。
「時折こうして湯に浸かるのだ。肉体の疲労を癒し、心の澱みを洗い流す。どうだ、効能を感じておるか?」
「う、うん……たしかに、効いてる……」
伊佐はどこか遠い目をしながら、曖昧にうなずいた。
「せっかくだし、私が背中を流してやろう!」
そう言って、シャルルマーニュは湯船から立ち上がった。
「…………っ!!」
その瞬間、王としての威厳、いや、まさに“巨大な竜”のような存在感が、伊佐の目の前に現れた。
伊佐は思わず心の中でつぶやく──
「……さすが、“光の獅子王”シャルルマーニュ……その名に恥じぬ威容……」
だが、次の瞬間、彼の内なる声が悲鳴に変わった。
「いや、サービスカットって言ってもさ!!俺が求めてたのは、そういう“サービス”じゃねぇぇぇぇぇっ!!!」
王宮の浴場に、勇者の絶叫がこだました。




