第37章:魔族大戦-序章-魔法使いの魔将
「なっ……何だって!?」
轟音と共に巨大な岩が空から落ち、土煙が辺りに舞い上がる。チャリマンとダンブズは思わず足を止め、前方を警戒するように見つめた。
やがて、煙が晴れていくと、青き魔族の前に一人の影が姿を現した。それは、人間の女性魔導士にも見える魔族──深い色のマントを羽織り、マントの隙間からは淡い紫色の肌と、長く尖った耳が覗いていた。
「おいおい、クラシード。何そのボロボロな姿? 人間ごときにやられて、まったく、恥さらしもいいところだわよ!(魔族語)」
「ヒ、ヒフィス……た、頼む……この光の剣、全部抜いてくれ……(魔族語)」
青い魔族──クラシードは、苦しげにそう呟いた。
「はいはい。……ったく、そもそも私を参戦させなかったのは誰だったっけ?」
名をヒフィスというその魔族は、うんざりした表情で手を掲げた。
だが、その瞬間——!
「まずい! 光の剣を抜こうとしてるぞ!」
ダンブズが叫ぶ。
「止めるんだ! ダンブズ、行くぞッ!!」
チャリマンが叫び、剣を握りしめて駆け出す。
「邪魔しないでよね。(魔族語)」
バンッ!
突如、圧倒的な魔力の圧が周囲を飲み込み、二人は弾かれるように数メートルも吹き飛ばされた。
「ぐっ……ダンブズ、大丈夫か?」
チャリマンは剣を杖代わりに立ち上がる。
「……陛下の読み通りです。あの女魔族、ただ者じゃない……魔法使いです。それも……私より、格上かもしれません……」
ダンブズも傷を押さえながら立ち上がった。
「ぐああああっ!!!」
ヒフィスの魔法によって、クラシードの体に突き刺さっていた光の剣が一斉に抜かれ、クラシードは苦痛の悲鳴を上げる。
「すまない……人間の中に、あんな強い奴らがいるなんて思わなかったよ……完全にやられちまった……(魔族語)」
クラシードは、荒い息の中でヒフィスに言う。
「フンッ……」
ヒフィスは鼻で笑い、吹き飛ばされた二人に冷たい視線を送った。
「悪いけど、ちょっとだけ時間を稼いでくれる? 少し回復するから。(魔族語)」
「いらないわよ。(魔族語)」
「次の戦いは──この私が片をつける!(魔族語)」
そう言って、ヒフィスは両手を高く掲げた。手のひらに集まり始めた魔力は、空気そのものを圧し潰すような、強烈な気配を放っていた。
「ダンブズ……状況が一気に悪化したな。俺たち、アリスに戻れるのか……?」
チャリマンは苦笑しながら、再び剣を構え直した。




