第18章:哀れな王宮教師
「すみません……魔法のことになると、つい本気になりすぎて、周りが見えなくなるんです……」
アリアンは深く頭を下げた。
「アリアン団長……真理を追求するのは素晴らしいことですけど……周囲の状況も、ちゃんと考えないと……た、たとえば……ど、どうして勇者さまの服を脱がせようなんて……!」
エリザベス王女は頬を染めつつ、思わず声を荒げた。
「……はい、申し訳ありませんでした……」
アリアンはしょんぼりと謝罪する。
「それなら……今日からは私がこの場で授業を見張らせていただきます!」
そう言って、エリザベスは嬉しそうに椅子を一つ持ってきて、風間伊佐の隣にちょこんと座った。
「えっ、公主……いいんですか? 王族の授業は……?」
「ふん、今日は“社交ダンス”の授業なの。国家に何の貢献もしない、意味のない時間なんて、出る必要ないわ。」
「で、でも……陛下が怒るんじゃ……?」
「大丈夫。お父様にはちょっと甘えれば、すぐ丸く収まるから♪」
「そ、そうですか……」
「でもね、ちゃんと真面目な授業は全部出てるんだから。政治学、財政学、軍事行政……どれも一つも欠けてないわよ。」
「おぉ、さすがは公主……」(やっぱりこの世界で“名前付き”の人間って、ただ者じゃないんだな……)
「でも、もし公主に他に用事がないなら、やっぱり授業には出た方がいいんじゃないですか?」
「なんでよ? 面白くもないし、意味もないのに!」
「面白さや意味があるかはともかく、もし公主がサボったら、どうなります?」
「そうね……父上が授業をなくすか、先生を変えるでしょうね。」
「その先生って、本当に悪いことをしましたか?」
「……別にしてないけど。」
「じゃあ、そのせいで先生が陛下から責められたら……ちょっとかわいそうじゃないですか?」
「確かに……でも、私はただ本当に意味のある時間にしたいだけで……」
「公主の言うことも、一理あるとは思います。
確かに社交ダンスが国家のためになるかと問われれば、疑問はあります。
ですが、王族として、公式の場に一切の社交を欠くことは……果たして可能でしょうか?」
「それは……」
「もし本当に社交ダンスの授業が無駄だと感じるなら、なぜそう思うかの理由をまとめて、正式に陛下へ提出するべきです。
勝手に授業をボイコットして、責任を授業や先生に押しつけるのは、少し違うと思います。」
「勇者さま……」
エリザベスの目が、キラキラと輝きはじめる。
(……ふふっ、おもしろい子)
アリアンは隣でそれを見て、楽しげに呟いた。
──そして、伊佐の心の声:
(いやあああああああああああああああああ!!!)
(まじでトラウマなんよ……! 前の職場の先輩もそうだった……会社から無茶な案件押し付けられて、
上には何も言えず、全部俺に丸投げ……そのせいで俺だけが上司に怒られる……!)
(先生、俺もあなたの気持ち、分かるよ……!QQ)




