第14章:勇者覚醒?
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
風間伊佐の絶叫が、聖殿中に轟き渡った。
(なんだこれは……!)
伊佐は頭の中で叫んだ。
(何かが……体の中に流れ込んできてる!? 全身が膨張して……!)
その膨らみと共に、骨の髄まで染み込むような痛みが襲いかかる。
(いてえ……! 体中が、焼き尽くされそうだ……!)
「お父様、まだ続くんですか!? 勇者様が……もう限界です!!」
イリザベは涙ながらにチャリマン王へ訴えた。
「わしにも分からん……なにせ、マックスは我がアレクス王国にとって初めての勇者だ。前例がないのだ」
チャリマン王の声にも、焦りが滲んでいた。
「でも……ロールス帝国にも勇者がいたでしょう!?」
イリザベは必死に言葉を重ねる。
「情報を共有してくれていれば……いや、今はそれより……」
王は小声でそう呟いた。
やがて、リジェスと三人の高位神官から放たれていた光柱が、次第に弱まり、やがて消え去る。
その瞬間、四人は力尽きたように地面へと崩れ落ちた。
「大祭司様!」 「誰か、医官を!早く!!」
そしてその瞬間——
天蓋の下から、ひときわ強く、眩い光が溢れ出した。
「こ、これは……!」
チャリマン王の目が見開かれる。
「マックスの潜在色が……以前より明らかに明るく、そして神々しい……。あれは……光の神に近い色だ……!」
「まさか……」 「成功したのか!?」 「やったぞ、勇者だ!」 「人族の力を、魔族どもに見せてやれ!!」
聖殿中は歓喜の声に包まれた。
「はぁっ、はぁっ……」
伊佐は息を荒げながら立ち尽くしていた。
(なんだったんだ、今の……。体中が痛くて、呼吸も思考もできなかった……)
(……でも、今は体が軽い。まるで……何かが変わったみたいだ)
(もしかして……これが“勇者の覚醒”ってやつか!? いや、俺、光ってるし!これ完全に光の国から来たヒーロー……ウルト◯マンじゃん!?)
伊佐は心の中ではしゃぎつつも、どこか現実味のない感覚に戸惑っていた。
(でも……力が湧いてくるって感じは……うーん、ないな)
そう考えていると、彼の体を包んでいた光は次第に消え始め、やがて完全に消え去った。
「勇者様!!」
イリザベが泣きながら走り寄り、彼に抱きついた。
「うわっ、姫様!?」
不意の抱擁に伊佐は戸惑った。
「大丈夫? どこか痛くない? 変なところは……?」
イリザベは涙を溜めたまま、心配そうに問いかける。
「うん、どこも平気。むしろスッキリしてるくらいだよ」
伊佐は笑って答えた。
「よかったぁ……」
イリザベは安堵し、彼をさらに強く抱きしめた。
「よう、マックス。目覚めた気分はどうだ?」
チャリマン王がゆっくりと近づきながら声をかけた。
「んー……なんか微妙? 強くなったような、なってないような……でも、何かが体の中にある気はする」
「なるほど、悪くない反応だな。ロールス帝国の例でも分かっている。
覚醒した勇者は、正しい導きと訓練を経て、超常の力を得ることができる。
これからは、そなたの“勇者の力”を開発していこうではないか」
「開発……って、何をするつもりなんですか……?」
伊佐は胸騒ぎを覚えた。
「ふふん、もちろん――勉強と訓練だ!!」
チャリマン王は満面の笑みを浮かべて言い放った。
「ええっ!? 勉強と訓練!?……疲れそう……」
伊佐がそう呟いた瞬間、彼の体から最後の光が消え、猛烈な疲労が全身を襲った。
そして——彼はそのまま、崩れるように倒れた。
「勇者様!!」 「マックス!?」 「医官を! 早く、医官を連れてこい!!」
騒然とする聖殿の中——
その人混みの中に、ただならぬ眼差しを向ける者たちの姿があった。
――それは、不穏な陰の気配だった。




