何回でも
このお話は完全フィクションです
改善の為再投稿
ただただ情けなかった。
愛していた彼女に見捨てられた。
どれだけ理想を並べても、どれだけ綺麗事を並べても貧しい日々でもいつも雫はいてくれた。
でも今の俺の右手は少し寂しくて心苦しくてそれでも彼女に連れられている左手はいつも通りのままで。
すっかり雫は見えなくなった。
でもこれで良かったのかもしれない。
こうすれば雫は救われる。
雫もきっと似合う男が拾ってくれる。
そいつはきっと、背が高くて男前で高収入で俺よりも何百倍もイケメンなんだ。
「あ、あんた大丈夫?」
美桜は言う。
そうだ。元々こいつのせいだ。こいつが。。こいつにさえ出会わなかったらこうはならなかった。
「あ、あんた今の彼女?」
「.......そうだよ...」
自分よりもこいつが幸せにしてそうなのが許せない。
いつだって俺の方が頑張っていたのに。
俺の方が優れているはずなのに。
欠陥だらけの人間に負けるわけがないのに。
「あんた何でそんなに彼女に執着するのよ。」
お前には関係ない。
「あんたそんなに思い入れでもあるの?」
お前には関係ない。
「重いとモテないわよ。」
静かにしてくれ。
そうだ。俺は学生の頃彼女に出会った。
彼女はあの美貌から周りの女に妬み嫉妬されていた。
物を隠されるのは当たり前。
壊されるのだって日常茶飯事。
身に覚えのない罪だって擦り付けられていた。
そんな日々が続いていたのだろう。
あの頃の彼女の顔はやつれて疲弊しきっていた。
それでも俺には関係のない話だった。
これを傍観者と言うんだろう。知ってても見てみぬフリをしていた。
自分が怖かったから。
そんな日でも転機が訪れた。
席替えの時間があった。
そんな時俺は雫と隣の席になってしまった。
彼女の「よろしく...」という、か細く怯えた声を俺は鮮明に覚えている。
席は左角の後ろの隣同士、いわゆる神席とも言える。
でも彼女のせいで神とは言えない。
俺にまで目をつけられる。
でもそれは雫自身も分かっていたらしい。
俺と仲良くすれば全く無関係の俺にまで被害が及ぶ。
もちろん俺は例外ではなく、仲良くしてしまった全員に広がるだろう。
だから彼女は誰とも仲良くしていなかった。
俺はそんな彼女に苛立っていた。
自分の身を自分で守れもしないやつが他人の事を考える義理がない。
困ったなら頼ればいいのにとひたすら思う。
「おいお前。」
「え...な、何...?」
か細く声のない声で彼女は言う。
「何で怯えてるんだよ。」
「だ、だって...」
「周りを心配してるのか?」
「....い、いや...」
「自分も守れないのに?他人の心配をするのか?」
「だ、だって...貴方にも...」
「自分の状況を見ても言えるのか?」
「いや...わ、私が我慢すれば...」
「一度きりの人生なのに我慢、我慢ってお前馬鹿なのか?」
彼女は口調を変えていった。
「私だって!こうはなりたくないよ!助けてよ!」
「....。分かったよ。任せろ。」
俺は自分の気持ちとは裏腹に彼女を救った。
本当は嫌だった。
自分の中は抗っていた。
それでも気づいたら行動に移していた。
彼女らはそれ以降、立場がなくなったのか学校に来なくなった。
俺はやりすぎとは思っていない。
彼女も今の俺の前では視界にすら映っていない
ぼんやりとした視界を目に歩き始める。
俺は間違っていなかった。
自分の気持ちは抗っても行動に移す。
あの頃の自分が証明してくれた。
俺は人気のない水道で目を洗い手を洗う。
「また...」
服を着替えその場を歩き出す。
「そうだ...雫を探さなきゃ。謝らなきゃ...」
でも、今謝らなくてもいいんじゃないか...?
また何回でも会えるんだから。
いや、ダメだ。。雫に会えなきゃ。会わなきゃ。
俺は酷く重い足を引きずりながらその場を歩いた。
ループ2回目
第8話 何回でも 完
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