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あと何回君に会えますか  作者: 彼岸花
また会いに行くから
3/12

何度でも

このお話は完全フィクションです


「起きて!時間だよ?今日も会社じゃないの?」

うるさい声に目覚めた。

やけに頭が痛い...俺は酷く腫れ上がったまぶたを微かに開けた。今日の瞼はやけに重く感じる。

しかし、目の前に映る光景ですぐに目が覚めた。


「雫...!!!」

死んだはずの雫が目の前にいる。

「ほ、本当に...!」

「何ごちゃごちゃ言ってるの。早く準備しなきゃ間に合わないよ?」

「雫...!」

俺は情けない声で布団から飛び出し彼女を勢いよく抱きしめた。

手も僅かに震え、心臓の鼓動が早くなるのを感じた。

あの日のように。

「何で泣いてるの?笑 怖い夢でも見たの笑」

夢、夢であってほしかった。あの酷く怖い現実など。


いや、全部夢だった。

悪い夢を見た。


そうやって言い聞かせたかった。

でもあれはあの日見た光景は脳に焼き付いていた。

自分が崩れるような。強者が弱者を喰らうような。


「よしよし。大丈夫だからね。」

彼女は暖かく俺を抱きしめ返し、頭を撫でてくれた。

凄く暖かった。悩みも何もかもどうでも良くなる程。

「うぅ...し、しずく...」

「どうしたの笑 そんなに泣いて笑」

「だ、だって...雫は...俺の世界では...」

言葉が止まった。いや、止めてしまった。

ここで、雫が死んでしまう事実を言ってしまえば、彼女の精神が傷つくかもしれない。。。

「そんな事言う人だと思わなかった!」

とか言われて出て行かれたら尚更だ。

ましてや、信じられるかもわからないのに。

どうする...素直に言うべきか...?それとも...

「こ、怖い夢を見て...笑」

ここは誤魔化すのが策だろう...そう思った。

彼女の心が傷ついてしまっては大変だ。

なるべくバレないように振る舞わなくては...!


「よしよし、大丈夫だよ。あ、!!仕事、、!」

あぁ!!このクソ会社め!休みにしろよ!!

幸せな時間を奪うな!!

「ヤバい!時間!」

俺は急いで身支度を終えて勢いよく玄関に行く。

「あ、!きょ、今日は早く帰ってくるね!!」

「うん?わかった」

俺は雫にそう伝え玄関を飛び出した。


正直今回のループで雫を救おうなんて思っていない。

こういうのって大体何ループかしてから救うのが相場だろ?


ましてや、まだ1回目だ。

今回は雫が死亡する時刻を調べる...!

少しずつ雫を救うんだ...!そして...!

俺は走って駅に向かう。

「ヤバいヤバい時間!!」

現在時刻。7時15分。会社には9時までに出勤だ。

何でこんな時まで出勤しなきゃいけないんだ。

あのクソ上司に会いにいきたきゃねぇよ!


休めば良いだろって?

今は少しでも「お金」が必要なんだよ


走って走って走って、駆け込み乗車...!!!

「あーぶねぇ」

俺は酷く荒れた呼吸を電車内に響かせる。

「だ、大丈夫ですか..?」

顔を上げるとそこにはスーツ姿をした茶髪の50代後半ぐらいの男が立っている。

「あ、あぁ、大丈夫です..笑 いつものことなので笑」

俺は顔が赤くなった。恥ずかしい。。。!!

「大変ですね。水要りますか...?」

「あ、あぁ、お気遣いどうも。」

俺は一口水を頂く。生き返る。

オアシスを見つけた人たちってこんな気持ちだったのか。。!

余韻に浸っていると、男が話しかける。

「僕用事があって、この街に来たんですよね。」

用事?野暮なこと聞いても良いのか?

言ってきたって事は聞いて良いってことだよな?

「用事って...?」

全て言い終わる前に男が言葉に出す。

「この街に散髪とついでに煙草を買いに来たんですよね。私の街の煙草屋かなり高くて...笑」

わかる。わかるぞ。

最近何もかもが高いよな。もっと安くしろよ。。。

俺の願いが聞こえているかのように男は頷く。


次は....駅〜....駅〜。

おっと、こうしてる間に駅に着いたようだ。

「あっ、すいませんここで降りるので。」

「あ、わかりました。お互い頑張りましょう。」

俺は軽く会釈して駅を降りる。

いや〜良い人だったな〜。親近感も感じたし、最高だ。

「こんな事してる場合じゃない!」

俺は勢いよく会社へと走る。



時計の音がうるさく感じる。時刻は10時30分。

「おい。誰か外回り行ってこい。」

きたきたきたきた!!この時が!!

前回のループで学習済みなんだよ!!!

まぁ、行ってねぇけどな。

「俺!行きます!!」

大声で我が先だ!と言わんばかりに席を立ち手を挙げる。ガタガタという机の鈍い音が職場内に響き渡る。

「何だ。今日はやけに気合い入ってるな。」

馬鹿か。全ては家に帰るために決まってんだろ。

こんな会社に貢献したくもないっての。

「はい!!行ってもいいですか!」

「んーそうだな。会社にいても使えねぇから行ってこい。変なヘマだけはするなよ。」

こんな時までdisってくるなよ。つくづくクソ上司だ。

「はい!任せてください!」

俺は鞄を持って勢いよく会社を飛び出る。

目指す場所はそう。もちろん。駅。そして家。

帰るんだ!家に!


俺は世界陸上決勝レベルのスピードで走った。

この瞬間だけは間違いなく世界で俺が1番速い。

急がなくては...!


改札を出て電車に乗る。この時間がもどかしい。

「早く着け...早く着け...」

1時間ちょっとで着く最寄駅が3時間ほどに感じる。


次は〜...駅〜...駅〜。

「着いた!!」

俺は今までにない速度で電車を降りホームの階段を駆け上がる。急げ急げ急げ。


1. 死亡してから時間が経っている事。


警察はこう言っていた。少しでも少しでも急がなくては...!!

現在時刻12時前。昼前だ。腹が鳴る。

それでも、家まで一直線に走る。

いつも通る居酒屋もコンビニも弁当屋も何一つそそらない。


「やっとだ!」

俺は家にようやく着く。急いで2階まで階段を駆け上がり、ドアへ向かう。そして、鞄から鍵を探す。

「鍵。鍵。鍵。あー!!!指紋認証とかにしろよ!」

この家は時代についていけていない。

そうこう言っている間に、鍵を見つけてドアを開ける。

「雫...!!!」

ドアを勢いよく開けると雫の姿は無く、ただ暗闇だけが目に映っていた。


現在時刻12時30分


ループ1回目


第3話 何度でも 完




見てくれたら私が喜びます。

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