愛は国境を超えて
このお話は完成フィクションです
「中々苦戦してるようじゃのう。」
ぼんやりとした頭を叩かれるような感覚がした。
「うぅ...?いてて...」
俺は一体何をしてたんだ...?
「全然近付いていないようじゃな。」
目を開けるとそこにいたのはシヴァだった。
「いてててて...頭がはっきりしない...」
「かなり苦戦してるようじゃな。」
「お陰様で...!」
俺は目の前の敵を威嚇するように軽く怒鳴った。
「おうおう。中々きてるようじゃな。まぁそれもそうじゃろう。」
「なんだよ。全部分かってるみたいな顔して。」
「そりゃそうじゃろう。未来がそう簡単に変わると思うか?そんなわけなかろう。
常識じゃ。
今までに聞いたことあるか?『未来変えましたー!』
なんて笑」
嘲笑う顔が既視感を感じて妙に腹立つ。
「どういうことだよ。」
「お主そんな事もわからんのか。
例えばだ。ここにある小球を地面に落とすとする。」
そういって何処からともなく赤い小球を取り出した。
元からあったのだろうか?何処から出したんだ...?
未知数すぎる...
「この小球を落とすと地面に落ちるだろ?
でも落ちる道筋に小さな机を置いたとしよう。
そうすれば、小球は地面に落ちた事にはならないが、
机の上に落下したという状況になる。
でも今度は落ちる途中でキャッチしたとしよう。
そうすれば小球自体はお前の手自身にあるんだ。
それが雫を救う未来。
つまり、机の上に落下させただけではそこから転がり落ちる可能性やバウンドして落ちる可能性だって大いにある。
それだけでは不十分なんや。
だから、自分の手に収めなきゃならないんや。
お前は小球が落ちない唯一の未来、小球をキャッチするという未来を掴む必要があるんや。でもそれは決して簡単な事じゃない。」
な、何言ってるんだ...?こいつは...?
「全然分かってなさそうな顔しとるなぁ。」
奴は呆れた顔でため息を吐いて口を開いた。
「はぁ、まぁいい。これ以上説明するのは禁忌だからな。」
そういって急に話題を変え沈黙を切り裂いた。
「お主知っとるか?
かのトルストイはこう説いたんや。
『確実に幸福な人となるただ一つの道は人を愛することだ』
お主もそう思うだろう?」
「は、はぁ...?」
「なんだ乗り気じゃないな。そうだな。例えば...
お主が学生としよう。
毎朝親の作ったご飯を食べて温められた風呂に入って、綺麗に整理された布団に潜る。
これで幸せだと言っとる奴らは幸福を知らんと思わぬか?」
「他人の用意してくれた幸せを貪って、
あたかも自分が創造した幸せのように偽装して、
他人の創り上げた幸せの上に立っとるんじゃ奴らは。
そんなもん真の幸せとは言わん。
創られた偽物じゃ。
いいか。お主のような社畜はこんな僅かな事すら忘れてしもうてるんじゃろうが、『人を愛し、人に愛される』という世界一簡単で世界一難しい事をやってのけてるんじゃ。
それだけで十分誇っていい。
今の童は愛を忘れ己のみで生きていく輩が増えとる。そんなんじゃいつかきっと幸せに飢える日が来るじゃろう。
でもな、恥じらいを捨てどんなに苦しくても一途にある輩を愛してるお主らが1番かっこよくて幸せなんじゃ。」
「そ、それはどうも...笑」
褒められてるのかさっぱりわからない。
「良いか。どんなに時代が変わろうが愛だけは変わることはない。お主が描く未来にも愛は一生存在し続けるじゃろう。」
「実際、お主は雫を救うという原動力で動いちょる。それも一種の愛じゃ!」
『愛は世界共通。万国の共通認識なんじゃ。』
「おっと、十分話が逸れたな。そろそろ、雫を救う時間じゃな。」
「色々ありがとう...なのか、?笑」
「良いか?最後に...」
シヴァはそう言うと俺の視界がぼやけた。
ーーー愛は国境を越えるーーー
完
第11話 愛は国境を超えて 完
難しいので軽くで大丈夫です