暗闇
このお話は完全フィクションです
雫に会うのには理由があった。
このループ回を何の成果もなく終わらせるわけにはいかないという理由は勿論あるのだが、何より
自分が囚われる感じが怖かった
彼女のような人なら新しい男を何回でも取っ替え引っ替えできるだろう。
でも、自分がいなくなって別の男に
「愛してる」
の一言を言っている姿など想像したくない。
「俺がいなくなっても元気にして新しい恋探してね」
なんて言いたくない。
どれだけ重いなんて言われてもいい。
それほど大好きなんだ。
そんな彼女がずっと俺だけを選んでくれているんだ。
俺も期待に応えなきゃって。
彼女が俺を選んだのは...俺の為なんだから。
どれだけ雫が良いやつなのかも知っている。
毎日毎日仕事に行って帰ってきたら雫がいて
温かい飯を食ってお風呂に入って一緒に寝て、
そんな当たり前の日々でも雫がいなきゃ当たり前の日々すらも輝かない。
変わることはあっても雫だけはそばにいてくれた。
彼女は優しいんだ。誰よりも。人の何百倍も。
「雫...どこ行っちまったんだ。。」
いつの間にか商店街にまで来てしまった。
人通りの多いところは嫌いなんだ。
今はただ目立ちたくない。
こんな姿人前に晒すのが恥ずかしい。
ダサい灰一色のパーカーに紺のデニムのズボンを履いて街を歩く。
時刻は現在...
13時3分
あの土壇場にこんな時間をかけてしまっていたのか
時間の流れがやけに早く感じた。
「もう探すのどうでも良くなってきたな。」
.....ん...?13時...?ハッと我に帰った。
ダメだ雫を探さなきゃ。!
事件犯行時刻は13時××分
雫が今この瞬間死んでいる可能性だってあり得る。
たったの3分過ぎていても可能性は0じゃない。
「雫...!どこにいるんだ...」
俺は街を走り抜ける。
人と当たるがお構いなしだ。
通りすがる人々の中には
嫌な顔をして避けるものもいれば。
愚痴を吐くもの。
当たっても気にも留めないもの。
俺以外人それぞれだ。
「雫...!雫..!」
自分がどこに向かっているのかも分からない。
それぐらい必死だった。
失うのが怖かった。
俺は暗闇の中に囚われたままの自分を押し殺して走り続けた。
ループ2回目
第9話 暗闇 完
花粉症えぐいです