表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/7

第 7 話

「……いや、まあ、その身なりならバレはしないだろう……」


「そ、そうですよね……」


 不可抗力とはいえ、リディオの姿が配信に映ってしまっていたため、申し訳なさそうな【サークルHSN】の3人。

 しかし、映ってしまったとは言っても、リディオの姿は全身忍び装束に身を包み、サイバーパンク風のフルフェイスマスクを被っている。

 そのため、博也が言うように素顔がバレる分かることはないはずだ。

 その言葉を聞いて納得したのか、リディオも同意するように頷いた。


「……でも、そのボイスチェンジャーって既製品だろ?」


 博也の考えに、夏雄が若干の難色を示しつつ問いかけてきた。

 機械的なリディオの声に何か気になる事があるようだ。


「えぇ……」


 よくマンガやアニメなどで、登場人物が顔を隠していても声を変えていないことが多い。

 見ている側からすれば、「話していれば声で分かるもんだろ!」とツッコミを入れたくなるものだ。

 リディオ自身も同じ思いだったため、声を変えるためにマスクの下に電気街で買ってきたボイスチェンジャーを仕込んでいる。

 そのため、リディオは夏雄の問いに短い返事をする。


「既製品だと元の声を復元できるって聞いたことがあるからな……」


「えっ!? ネットだと難しいって話だったんですけど……」


 もちろん、リディオもボイスチェンジした声を復元される可能性があると考えていた。

 しかし、少し調べてみたらそれは難しいという情報が書かれていたため、安心していた。

 だが、夏雄の言葉を聞いて、もしかしたらそれはボイスチェンジャーの質によってバレるバレないがあるのではないかと思えてきたリディオは焦り始めた。


「……気にしなくていいぞ。こいつ年下だって分かったから少しからかっているだけだから」


「えっ?」


 焦るリディオに、修平が話しかける。

 その言葉を聞いたリディオが見つめると、夏雄が両手を合わせて笑顔で謝っていた。

 どうやら、ボイスチェンジャーの復元の話は夏雄の嘘のようだ。


「まぁ、全部嘘ってわけでもないけどな……」


「えっ?」


 夏雄の嘘を指摘した修平だったが、付け足すように言葉を発する。

 それに対し、リディオは再度声を漏らした。 


「ボイスチェンジャーの復元は難しいけど、知識のある人間だとできる可能性があるってことだ」


「……なるほど」


 ネットにはボイスチェンジャーの復元は難しいと書かれていたが、刑事ドラマとかで捜査の過程で復元しているシーンなどがあった。

 監修なども付いているのだから、所詮はドラマと切り捨てることはできない。

 修平の言うように、専門知識があればもしかしたら声の復元も不可能ではないのではないかと思えてきた。


「まぁ、専門知識のあるやつが俺たちの配信見ているかは分からないけどな」


「そうそう。そんなことに心血を注ぐ暇な奴が俺ら配信見ているわけないって」


「……ちなみに、【サークルHSN】の再生回数ってどれかいくらいですか?」


 たしかに、修平と夏雄が言うように、大学生探索者3人組が投稿している映像を、そんな専門家が見ているとは限らない。

 しかし、それは投稿映像を見ている人間の数による。

 そう考えたリディオは、3人に再生回数を尋ねた。


「2000~3000の間ってところかな?」


「そうだな」


「そんなところ」


「……結構見られているじゃないですか」


 博也、夏雄、修平の順に交わされる会話。

 それを聞いて、リディオは思わずツッコミを入れる。

 Posterの再生回数の中で、まずは100、次に1000という壁が存在している。

 その壁をクリアしている時点で、【サークルHSN】は充分Posterと名乗れるレベルのチャンネルだ。


『まぁ、それでも、そこまでの人間はいないか……』


 なかなかの人数に見られているチャンネルだが、さすがに声の復元をするような人間がいる可能性は低い。

 そのため、リディオは心の中で身バレしないだろうと安心した。






「ここまでくれば安心だろ」


「助かったよ」


「サンキュウ」


「いいえ、困った時は助け合わないと……」


 出会った10層から、1層まで上がってきた4人。

 ここまでくれば特に危険な魔物が出るようなことはない。

 そう考えた【サークルHSN】の3人は、改めてリディオに感謝の言葉を述べた。

 探索者は設ける職業ではあるが、その分リスクもある。

 毎月、必ず死人、もしくは行方不明者が出ている。

 それだけ危険と隣り合わせと言うことだ。

 同じ探索者なら、助け合うべきだ。

 当然そんな善人ばかりではない。

 助けて何の感謝もしないような連中だったら、その場において魔物をけしかけてやるつもりでいた。

 そんな恐ろしい考えを持っていることを隠しつつ、リディオは3人に向かって返答した。


「……あぁ、最後に聞いて良いかな?」


「はい?」


 地上への出口が見えてきたところで、博也が問いかけてくる。

 まだ何か聞きたいことがあるのかと、リディオは首を傾げた。


「身バレ防止とはいえ、どうしてその恰好なんだ?」


 顔を隠したりするのは身バレ防止をするためだろう。

 その考えは分からなくはないが、もっと他の姿でも良いはずだ。

 そう思いつつ、博也はリディオの全身を指さしながら問いかけた。


「……えっ? カッコいいから…ですけど……」


『『『やっぱ中2病だ……』』』


 姿は変わっても、探索するのにしっくりくる戦闘スタイルは前世と同じものだ。

 前世と同じ衣装に顔バレしないようにこのヘルメットを選んだ理由は、リディオが言うように、単純にカッコいいと思ったからだ。

 その答えを聞いた3人は、頭の中で同じ思いが浮かんでいたのだった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ