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第 5 話

『思った通り、平気そうだな……』


 サイバーパンク風のフルフェイスマスクを被り、忍者刀を腰に差して忍び装束という、完全に中二病の男ことリディオは心の中で呟く。

 いつものように1層の攻略を終えたリディオは、帰宅するために地上へ向けて歩いている。


『もう少し、攻略スピードを上げようかな……』


 【魔物の悲鳴】というチャンネルで魔物討伐映像を投稿しているが、はっきり言って亀の歩み程度しか視聴者数が伸びていない。

 探索者として魔石の売り上げだけでもある程度の利益を得られているが、もう少し深い層まで行かない限り、更なる収入アップは見込めない。

 魔物の強さからいって、まだまだ余裕がある。

 収入・視聴者数アップのため、リディオは攻略スピードを上げることを検討していた。


「ーーーっ!!」


「っ!?」


 考え事をしながらも周囲を警戒していたリディオの耳に、少し離れた所から人の声が聞こえた。

 戦闘中のようだが、その声は切羽詰まっているように思える。

 どんな状況なのかを見極めるため、リディオは声のした方へ向かって走り出した。






◆◆◆◆◆


「くそっ! 何で数が増えてんだよ!」


「いや、ネットの情報で分かってただろ!」


「それにしたって多いだろ!」


 片手剣に小盾の戦士風の男、杖を持った魔法使い風の男、戦士風の男の怪我

を治療している回復担当の男。

 その3人が順に声を上げる。

 同じ大学に通う男3人組のパーティーが、ブラックウルフたちに囲まれながら言い合いをしている。


「2、3頭くらいって話だったのに……」


 大学で知り合って意気投合し、【サークルHSN】というチャンネルを立ち上げ、週末にダンジョンに潜った映像を3人は投稿してきた。

 リディオ同様、彼らも今日が初挑戦の二桁階層突入だった。

 魔法使いの男こと修平の言っていたように、二桁階層に入るためにネットなどで注意すべき情報を仕入れていた。

 そのため、ブラックウルフが数頭で向かってくる可能性があることは3人とも理解していた。

 そして、予想通りに3頭の相手をしていたところで異変が起きた。

 順調倒して残り一頭となったところで、更に2頭のブラックウルフが現れたのだ。


「何で次から次に増えてくるんだよ!」


 またも3頭になったブラックウルフを相手をしていたら更に2頭増え、5頭の相手をしていたら、更に3頭増えた。

 こうして増えたことにより、3人はブラックウルフに囲まれることになってしまった。

 予想外のことに、戦士風の男こと博也は愚痴を呟いた。


「どうにかして逃げないと……」


 8頭のブラックウルフ相手なんて、自分たちにはとても勝てる見込みがないため、どうにかして逃げるしかない。

 予想もしていなかったことだけに、愚痴りたくなるのも分かる。

 しかし、愚痴っていてもこの窮地を脱することはできないため、回復担当の男こと夏雄が呟いた。


「つっても。この数じゃ……」


 夏雄の言うように逃げるしかないが、周りを完全に囲まれており、自分たちには逃げ道がない。

 それを理解してか、ブラックウルフたちは壁を背にする3人との距離をジリジリと縮めてきた。

 3人には、まさに絶体絶命の状態だった、






『……なんだよ! こういう時はかわいい女の子だろうが!』


 ブラックウルフたちが3人の青年に今にも襲い掛かろうとしているところで、言い合いの声を聞きつけたリディオが到着していた。

 気配を消して物陰から様子を窺うと、リディオの目に入ったのは3人の男性。

 そのことに、リディオは心の中で文句を叫んでいた。

 こういった時、ピンチに陥っているのは女性で、それを颯爽と助けて感謝される状況をリディオは期待していた。

 そして、あわよくばその女性と仲良くなりたいと思っていたというのに、襲われているのが野郎ばかり。

 言いたくないが、リディオのテンションは一気に下がっていた。


『とはいっても、このまま見殺しは気が引けるからな……』


 前世でも今世でも、ダンジョンに挑むのは自己責任となっている。

 大怪我を負ったり、命を落とすこともあり得るからだ。

 こういった状況の時、助けに入るか見捨てるかは探索者によって判断が分かれる。

 実力がないにも関わらず助けに入って、自分まで死んでしまうような最悪の状況になるわけにもいかない。

 そのため、見捨てて逃げても緊急避難として法律上罰せられることはない。

 ソロ行動をしているリディオなら3人を見捨てても問題ないだろう。

 しかし、助けられるのに見捨てるのは良心が痛むと思い、リディオは3人の救出に動くことにした。


「シッ!!」


 何かの役に立つかと思い、ダンジョン内で拾っておいたソフトボール大の石を影に収納していたリディオ。

 影から取り出し、魔力を纏わせた8個の石を、リディオはブラックウルフたちに向かって投擲した。


「「「「「ッ!!」」」」」「「「ッ!?」」」


「「「なっ!?」」」


 突然、どこからか飛んできた石がブラックウルフたちに襲い掛かる。

 その石によって、5頭の頭部が吹き飛び、残り3頭のブラックウルフはギリギリのところで回避した。

 あまりにも突然の事だったため、【サークルHSN】の3人組も驚きの声を上げた。


「シッ!!」


「「「ギャッ!!」」」


 リディオから離れた位置にいた3頭。

 その3頭が攻撃を躱す可能性を予想していたリディオは、石を投げたてすぐさま次の行動に出る。

 残った3頭に接近し、忍者刀によって頭を斬り飛ばしたのだった。



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