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第 4 話

「なんでドラゴンなんかがっ!?」


「あれってもしかしてラスボスなんじゃないの!?」


 影転移によって60層に移動した4人のうち、マリーナとレナータが思わず声を上げる。

 先程目にした敵の姿に戸惑いが隠せない。

 とんでもない魔力を身に纏い、あの巨体で高速移動。

 見ただけで、自分たちだけで相手にできるような相手ではないと分かった。

 

「そんなこと言っている場合じゃない!」


「リディオが来たら、みんなで脱出するぞ!」


 女性2人の言葉に、コルラードとチリーノが冷静にこれからの行動を指示する。

 彼女たちの言うように、もしかしたらあのドラゴンがこのダンジョンのラスボスなのではないかと思える。

 それはそれとして、あの魔物がどうして移動しているのか。

 もしかして、ダンジョン外へ向けて移動しているのではないか。

 そんな疑問が、チリーノの頭に浮かんでいた。


「「えっ!?」」「「なっ!?」」


 リディオが転移してくるのを待つ4人だったが、次の瞬間女性陣と男性陣は目を見開き声を上げる。


「なんで……?」


「まだリディオが……」


「そんな……」


「嘘でしょ……?」


 4人が驚いた理由。

 それは、まだリディオが来ていないというのに、影転移の魔法が消えたためだ。

 何かが起きたのかは明白。

 リディオの身に何かが起きたということだ。

 そのことが信じられない4人は、少しの間呆然とするしかなかった。


「リディオ!!」


「おいっ! チリーノ!」


 「リディオに危険が迫っているのなら助けに行くべき!」そう考えたチリーノは、すぐさま下層へ向かおうとする。

 しかし、自分たちがいるのは60層。

 今から助けに行っても、間に合わないことは火を見るよりも明らか。

 そのため、コルラードがチリーノを止める。


「ラスボスが何で75層付近を歩いていた理由は分からない。もしかしたら外へ向かっている可能性もある。そうだとしたら大問題だ」


「でもリディオが……!!」


 先程チリーノが思いついたことと同じことをコルラードも思い至っていた。

 そのため、チリーノをこのままいかせるわけにはいかない。


「2人とも揉めない!」


「そうだよ! ギルドにリディオの救出願を出さないと……」


 内心では出しても無理だと分かっていても、それでも仲間であるリディオの生存を信じるしかない。

 そんな思いから、マリーナとレナータは2人に声をかける。


「…………あぁ、そうだな……」


 このままあのドラゴンが地上に出てきたら、自分たちが拠点としている近くの町にとんでもない被害が及ぶことになる。

 そうならないためにも、このことをギルドに報告して、避難や迎撃態勢を整えるべきだ。

 リディオの生存を確認するためにも、そうするのが今自分たちに取れる唯一の選択肢だ。

 そう考えたチリーノは、自分の実力の無さに歯噛みしながらも、彼女たちの言葉を聞き入れた。






 その後、町の兵たちと冒険者によってドラゴンの迎撃態勢が取られる。

 それによってダンジョンから出てきたドラゴンを、多くの被害を出しながらも討伐することに成功した。

 そして、チリーノたちは他の冒険者たちと共にダンジョンの75層へ向かった。

 しかし、リディオの姿は確認されかった。

 その代わり、彼の使用していたナイフだけが発見された。






◆◆◆◆◆


『まさかドラゴンに喰われて死ぬなんてな。まぁ、仲間を逃がすことができての結果だ。探索任務担当として恥に思うことはないか……』


 ダンジョンの中を歩きながら、リディオは前世の最期を思い出す。

 今更ながら、自分に起きたことが信じられない。

 あの時、75層に着いて間もなく、魔力が完全に回復していなかった。

 そのため、仲間たちを転移させたところで魔力切れ。

 転移を使える自分が逃げそびれるなんて、性格の悪い奴からすれば笑い話のネタにされるだろう。

 仲間を見捨てて自分1人が生き残ったという話は何度か聞いたことがある。

 そう言った奴のその後は悲惨な物ばかりだった。

 そんなことになるより、自分の命と引き換えに仲間の4人を救うことができたのだから、自分の前世の終わりとしては正解だったのではないだろうか。

 転生したからこそそう思っている。


『……というか、どうして前世の記憶をもったまま転生したんだ?』


 死にたくはなかったが、あの時は仕方がないことだと思っている。

 悔いがない人生だったとは言いきれないが、恥に思うような死に方ではなかったと思っている。

 ドラゴンに喰われた時点で、リディオという者の人生は終わったはずだ。

 それなのに、気が付いた瞬間、自分はこの地球の赤ん坊に変わっていた。

 その理由が今のリディオにはよく分からない。


『……まぁ、気にすることないか……』


 少しの間考えたが、出てきた答えはいつものようにこれだった。

 ラノベにあるように神や仏に会ったわけでもないため、考えても答えは出ることはない。

 それなら考えてもしょうがない。


『さて、行くか……』


 先程倒したブラックウルフを解体しながら考え込んでいたリディオは、魔石を回収し終えて思考するのをやめ、ダンジョンの先へ進むことにした。



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