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第 3 話

「おはよう! みんな」


 冒険者ギルドの建物に入ってきた男性が、円卓を囲んで座っている4人組へ声をかける。


「オッス! リディオ」


「やあ! チリーノ」


 軽い口調で声をかけられたリディオという名の男性、彼が前世の姿だ。

 服装は今世と同様に黒髪で忍び装束、170cm程度の身長で少し細目に見える体型。

 今世と違うところと言えば、西欧風の顔とヘルメットを被っていないところだろう。

 声を掛けられたリディオは、チリーノという名の男性に返事をする。

 チリーノは、赤い髪に茶色がかった目をした21歳で、170cm中盤くらいの伸長をしており、メイルに籠手と脛当てを装着していて、側には身長と同じくらいの大剣が立て掛けられている。


「依頼は取っておいたぞ」


「あぁ、ありがとう。コルラード」


 依頼書を見せて声をかけてきたのはコルラード。

 180cm中盤の身長で、茶髪に碧眼でがっしりした体躯にプレートアーマーを装着しており、大きな盾が側に立て掛けられている。


「今日もダンジョンだっけ?」


「……何層?」


「あぁ、75層からだ」


 攻撃魔法担当で黒いローブを纏ったマリーナに続き、回復・支援魔法担当で青髪のレナータが問いかけてくる。

 2人の質問に対し、リディオは端的に返答する。


「じゃあ、行こうか?」


「「オウッ!」」「「うんっ!」」


 リディオの言葉に4人が頷き、彼らは依頼達成のためにダンジョンへ向かって行動を開始した。

 この5人によるダンジョン探索をするのが、リディオの前世での日常だった。






◆◆◆◆◆


「「「「「…………」」」」」


 予定通り、チリーノ・コルラード・マリーナ・レナータの4人と共に、リディオは町から少し離れた場所にあるダンジョンに入る。

 目指すのは、100層あると言われる攻略最難関のダンジョンの75層だ。

 魔物の体内に存在している魔石を手に入れ、それを売ることで冒険者たちは生計を立てている。

 魔石に内包している魔力を利用した魔道具を使用することによって、この世界の人々は利便性を手に入れてきた。

 その魔石は、強い魔物であればあるほど魔力を多く内包しており、高値で取引されている。

 リディオたちのいるこのダンジョンの75層となると、1体の魔物を倒すだけでかなりの収入を得ることができる。

 つまり、彼らは冒険者の中でもかなりの上位にいる実力者たちだ。

 いつものようにある程度の階層まで下りたところから、リディオの闇魔法による影転移で目的の75層まで一気に移動する。

 そして、75層に到着すると、いつもとは違う雰囲気に違和感を覚え、5人は口数が少なくなっていた。


「……ねぇ、何か魔物の数が少なくない?」


「そうだな……」


 75層に到着してすぐ、魔物を倒して魔石を手に入れようと思っていたメンバーだったが、いつもと違い魔物との遭遇率が悪い。

 そのことに気付いたマレーナが疑問の声を上げ、リディオが同意の言葉を呟いた。


「調べてみよう……」


 闇魔法使いであるリディオのメインの役割は、戦闘より探索だ。

 それと、闇魔法による影収納を使用することによって、メンバーの荷物持ちなどの役割も担っている。

 そのため、何か異変が起きているのかを確認するべく、魔物を捜索することにした。


「フッ!」


 小さく息を吐きだすと共に魔力を広げる。

 魔力を使用することによる探知魔法だ。

 冒険者なら誰もが使える魔法だが、リディオはこの技術の使い手として一流だ。

 探索役としてパーティーに貢献できることでもあり、リディオは張り切って探知範囲を広げていった。


「っっっ!?」


「ん? どうした?」


 急に探知魔法を中断するリディオ。

 その理由が分からないため、チリーノは首を傾げる。


「マズい! みんな逃げろ!!」


「えっ?」


「んっ?」


「なんでっ?」


 何かを探知したらしく、リディオは慌ててみんなに声をかける。

 しかし、何が起きているのか分からないため、チリーノ以外の3人も首を傾げるしかなかった。


「くっ!!」


 4人に細かく説明している場合ではないと判断したリディオは、すぐさま魔力を練り始める。

 そして、その魔力を使用して影転移魔法を発動した。


「質問は後だ! すぐに影に入れ!!」


「しかし……」


 影の中に入ることで行きたい場所に転移できる魔法。

 それが影転移魔法だ。

 その魔法を発動したリディオは、4人に影の中に入るように指示を出す。

 しかし、理由が分からない4人は、リディオの指示に躊躇う。


「良いから! 速く!! ドラゴンだ!!」


「なっ!?」


「なんで!?」


 リディオの指さした方向に4人が目を向け、マリーナとレナータが戸惑いの声を上げる。

 たしかに巨大なドラゴンがこちらに向かって直進してきている。

 しかも、猛烈なスピードでだ。

 ドラゴンなんてこの5人だけで勝てるような相手ではない。

 その姿を視認したことで、4人はリディオが慌てている理由を理解した。


「速く!!」


「わ、分かった!!」


「「りょ、了解!!」」


 急かす理由を理解し、コルラードに続きマリーナとレナータが同時に返事をし、影の中へと入って行った。



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