表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ロワイアルゲーム ~異世界なんて適当にチーレムやっとけ~  作者: とりうさぎ
迷宮編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

82/158

【82】為されるべき運命

 帝国領某所。エラーコード定例会議の日。


 円卓の置かれた会議室にて、raffl3sia(ラフレシア)が自身の席でとある作業に勤しんでいた。今日の彼女は大きな三角帽子を被っていて、悪臭を放つ頭の花は隠れている。


「──できた! ouro6oros(ウロボロス)、見てよこれ!」


 それは彼女曰く、転移者(プレイヤー)の強さ格付けなるものだった。名前の書かれた厚紙が複数枚、コルクボードに画鋲で留められている。


 ちなみに、これは彼女の独断と偏見でやっていることであり、必要性はおろか信憑性も皆無である。

 しかし、会議の開始時刻までは時間があった。ヴェノムギア様もまだお見えになっていない。多少は相手をしてやってもいいだろう。


「どぉ~? まだ二十一人全員分の情報は集まってないからあれだけど。結構いい線言ってると思うんだよね~!」


 彼女が嬉々としてボードを披露してくる。

 我は自身の席から卓上に跳び移り、とぐろを巻いてそれを吟味する。



【さいきょう!!】李知華子

【つよい!】黒尾直人、七原茜、朝吹翠斗、雲藤久美子

【ふつう】瀬古彰、桃山みく、宮島翔哉、茂田弥一、桐谷剛、名波花怜

【ざこ~】麦嶋勇、神白雄介



「おおよそ納得だが……この黒尾、雲藤(うんどう)茂田(しげた)桐谷(きりたに)名波(ななみ)の情報はどこで入手した……? ハンター共の報告でも、こいつらとは未だ接触していなかったはずだが……?」

2ana(ラーナ)が見つけたんだって。この前会った時に言ってた」

「なぜすぐ報告しない……」

「え~別によくない? ヴェノムギア様はどうせ知ってるんだし。たぶん今日話してくれるよ」


 彼女の席の二つ隣に座っているbeet1e(ビートル)も、腕組をしながら覗いてくる。


「麦嶋勇はそんなに下か?」

「下でしょ。邪神がいるから厄介なだけだし。例の盗んだスキルもタネが分かればざこざこ。今度会ったらマジであたしに任せて」

「ほう」


 それにしても、未だ転移者(プレイヤー)の情報は集まり切らない。

 『ふつう』の欄にいる瀬古彰なども、ハンターからの漠然とした情報しかない。何でも、彼は森の中に積み木を組み合わせたような家を残しており、また同じように積み木でできた巨大魔導車を走らせていたらしい。

 積み木で色々なものを創作できるスキル、というのが我の見解だが、作れるもの次第ではいくらでも脅威に成り得るスキルである。


「──おお。今日の出席率は上々ですね。九分の五。いえ……mon5ter(モンスター)さんが亡くなったので正確には八分の五ですか。ouro6oros(ウロボロス)さん、bac7eria(バクテリア)さん、9ueen(クイーン)さんに関しては皆勤賞です」


 空間が歪み、我らの主が現れた。その腕には、ドレスを身につけた9ueen(クイーン)がしがみついている。相変わらず鬱陶しい女だ。


「さて、9ueen(クイーン)さん。そろそろ離れてください。ご自分のお席へどうぞ」

「いえ、わたくし今日は眩暈が酷いので、ヴェノムギア様のお膝に座らせて頂きますわ……」

「眩暈が酷いなら、椅子にしっかりと座った方がいいのでは?」

「ヴェノムギア様のお膝にいると不調が落ち着きますの。頭も優しく撫でて下さいまし」

「困った方ですねぇ」


 主は半ば強引に阿婆擦れを引き剥がして椅子に座らせる。阿婆擦れはわざとらしく、いやんと声を上げた。

 すると、raffl3sia(ラフレシア)が主の方へ駆け寄り、さっそく格付け表を見せにいく。


「ヴェノムギア様、見てください! 強さランキングを作りました! あたしが! 一人で!」

「そのようですね。中身も割と的を射ていると思います」

「本当ですか!」

「ええ。ただ、追加と修正があります」


 主はraffl3sia(ラフレシア)の席へと近づき、そこに置きっぱなしになっていた厚紙と羽根ペンを取る。

 そこで何か文字を書いて持ってきて、『ふつう』の欄にそれを貼った。追加されたのは新妻茉莉也だった。

 次に、『ざこ~』の欄にあった麦嶋勇を『つよい!』へと移動させる。



【さいきょう!!】李知華子

【つよい!】黒尾直人、七原茜、朝吹翠斗、雲藤久美子、麦嶋勇

【ふつう】瀬古彰、桃山みく、宮島翔哉、茂田弥一、桐谷剛、名波花怜、新妻茉莉也

【ざこ~】神白雄介



「ふむ。これならしっくりきますね」

「えぇー!? 麦嶋そんな上ですかぁ!?」

「はい。実は先日、pelic4n(ペリカン)さんが彼と接触しました。彼と共に新妻茉莉也さんもいましてね。彼女のスキルも興味深いですが、問題は麦嶋君です。ムゥで戦った時から、彼にはなかなか目を見張るものがありましたが、こう何度も私のエラーコードを()()されてしまうと評価を上げざるを得ませんね」

「あいつ、他転移者(プレイヤー)と合流したんですか!? しかも、あの鳥が対処されたって──」


 主が椅子に腰かけ、我らの疑問に答える。


「いえいえ、一応生きてはいますよ。しかし、完全に無力化されました。麦嶋さんの策略によって」

「無力化? あ、あいつを? エラーコード最強と言われる私の、その次くらいに強いと思ってたのに……」


 頓珍漢なことを真面目な口調で言う彼女に、9ueen(クイーン)が野次を飛ばす。


「あなたを最強なんて評する方、正気ではありませんわね」

「はぁ~? おまえより強いし!」

「ありえませんわ。わたくしが圧倒的トップで、それ以外は有象無象。いてもいなくても一緒ですわ」

「はい、違いま~す! 最強は私ですぅ~! バーカバーカ!」


 ヴェノムギア様が手を叩く。


「はいはい。会議を始めますよ──」


 その後、ヴェノムギア様から現在の状況を説明される。


 巷で話題のモレット大迷宮にて、麦嶋、邪神、新妻が協力し、あの鳥を籠絡したこと(なぜあいつはそんなところにいたのだろう。理解に苦しむ)。その後彼らが李知華子を含む七名と合流し、行動を共にしていることを聞いた。麦嶋らが迷宮を攻略しようとした理由ははっきりしない。


 また、李知華子の暗殺依頼を出してから、例のハンター四名にはbac7eria(バクテリア)を感染させ、ヴェノムギア様が監視していたらしい。しかし、そんな彼らはあえなく返り討ちにあった。

 それだけに飽き足らず、そのハンターの一人、ジェリー・ブレヒャーは李に拷問されたという。


 我らにとっての朗報は何一つなかった。

 

「──ブレヒャーさんがどんな情報を漏洩したかは不明です。感染させたbac7eria(バクテリア)さんも『治癒(ヒール)』で除去されましたから。まぁ、この場所はバレたでしょうね。ただ、彼女は秘密裏に動いているようです。もしかすると、単独で乗り込んでくるかもしれません」


 あの小娘。三年前は酷く矮小な存在に見えたが、どうやら今度は本気でヴェノムギア様を討とうとしているようだ。

 しかし、それもそのはず。転移者(プレイヤー)とヴェノムギア様の殺し合いという今回のルールは、彼女が作ったと言っても過言ではないからだ。それ相応の覚悟を持っているだろう。


「死体が残っていれば……我の能力でハンターどもを復活させられますが……いかがいたしましょう?」

「結構です。彼らは用済みです。それに一人は生き残りました。その方も同様に、李さんがbac7eria(バクテリア)さんを除去したので詳細不明ですが、彼は彼女に手を貸すようです……」

「彼……?」

「何にせよ、やはりエージェントなど使わず、エラーコードの皆さんに頼るべきでした。これは私の失態です。申し訳ありません」

「いえそんな……」


 そして、主は前傾姿勢になって、卓に両肘をつき手を組んだ。


「本題はここからです。おそらく、李知華子さんは近いうちに私のところへ辿り着くでしょう。その時、邪神や他転移者(プレイヤー)を連れてくるかは不明ですが、私はそれに迎え撃とうと思います。bac7eria(バクテリア)さんと9ueen(クイーン)さんは手を貸してください」

「承知いたしましたわ! しかし、わたくしとヴェノムギア様さえいれば、あんな小娘いちころです! bac7eria(バクテリア)さんはいりませんわ!」

「油断は命取りですよ。過剰な戦力……くらいがちょうどいいです。今の彼女からは、それほどの気概を感じます」


 beet1e(ビートル)が手を挙げ発言しようとすると、その前に主が察して答える。


「他の皆様は、2ana(ラーナ)さんのところへ行ってください」

「あの蛙のところへ……ですか?」


 beet1e(ビートル)が聞き返す。


「既に聞いているかもしれませんが、彼女は黒尾直人さんのグループと接触しています……そして、我々“ギア”は彼らと手を組むことにしました」

「な……!?」


 beet1e(ビートル)は目を見開き、我も息を飲む。

 raffl3sia(ラフレシア)は立ち上がって、生意気にも抗議するのだった。


「えぇぇ!? どうしてですか!? ヴェノムギア様、変っ!」

「そうですね。変かもしれませんね。しかし、利害の一致があったんですよ」

「利害の一致?」

「ふふふ」


 ヴェノムギア様は仮面の下から声を漏らした。


「失敬。実は、久しぶりに転移者(プレイヤー)同士の殺し合いを見られそうなんですよ。黒尾さんが実に良いんです。やはりあのクラスを選んだ甲斐がありました」

「はあ……」

「とにかく、raffl3sia(ラフレシア)さんたちは2ana(ラーナ)さんのところに行ってください。黒尾さんに手を貸せば、こちらはほぼノーリスクで転移者(プレイヤー)の数をおよそ半減させられるでしょう」


 半減? 十名近く殺せるということか? 十名? そうだ、思い出した──


「先日……ハンターギルドにきていたという匿名の捕縛依頼のターゲットは……十名でしたよね?」

「察しがいいですね。そうですよ。あれの依頼主は黒尾さんです」


 しかし、一体何のために──


「──復讐ですよ」


 ヴェノムギア様が囁くようにそう告げた。その声色はどこか明るく、会議室内に響いた。


「復讐とは、相殺であり決着です。これまでの人生の帳尻合わせであり、為されるべき運命なのです。しかし、叶わない運命もあります。例えば、李知華子さんによる私への復讐とかね」

「……」

「だから、黒尾さんには力を貸してあげようではありませんか? 邪魔になるであろうエリザベータへの対処も既に考えました」


 ヴェノムギア様が立ち上がり、真っ黒い防具に覆われた両腕を大きく開いた。同じく黒いマントも翻る。


「さぁ。これより反撃開始です! やられてばかりでは皆様も面白くないでしょう! 転移者(プレイヤー)の数を減らしてこそ、ロワイアルゲームですからね。私たちのゲームをもっと楽しもうではありませんか────」

『迷宮編』終了です。

ブクマ、☆☆☆☆☆ 、いいね、感想もよければ!


ま、そんなの無くたって最後まで書くんですけどね!

あったらテンションぶち上がるってだけで!


    ♛

⊹⋛⋋( ⊙ ਊ ⊙ )⋌⋚⊹ ㇰァーッ!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
迷宮編お疲れ様です!! 今章から一気にシリアスモードになりましたね……。 中盤からの怒涛の展開は、もう色々な感情が押し寄せてきておかしくなりそうでした(笑) 毎日更新楽しみに待ってた甲斐がある出来だ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ