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茶番がようやっと一段落して、アキラとしばらく他愛のない話をしている時、入り口に案内役をしていた少女姿のゴーレムがいつの間に中央にあるステージに立っている。


「大変お待たせしております。これから入学式を行います。速やかに席の方におかけくださいませ」


白い海軍服のワンピースを着ている彼女がここにいる者に深いお辞儀をした。


「通常は理事長が皆様にご挨拶する予定でございますが、生憎理事長がいらっしゃらない為、僭越ながらワタクシが代わりに皆様にこれからの学院生活に最低限必要な事をご案内させていただきます」


無表情で説明しているゴーレムを見ると、誰かさんと似ている気がする。口数が全然違うけど。


「では、ご存知かと思いますが、このスプラウー学院の方針は弱肉強食でございます。これから皆様にお配りするバッジは入学試験により順位を表す証拠でございます。」


言い終わったと当時に、目の前に小さい箱と書類が現れた。表紙にらくらく学院生活規則だよ☆とかなりセンスのない絵が描かれている。


思わずその書類から目を逸した。


白い箱にあるのは黄金のバッジ。


色で分けるのかと思ったら、バッジからSランクと書かれた文字が浮かび上がった。


「学院内SランクからCランクと分けれております。Sランクは学院内トップクラスの為、他のクラスよりかなり優遇されます。ランクの差によって待遇が異なりますでの、快適な学院生活を過ごす為、是非Sランクを目指してください。詳細は先ほど箱と一緒にお渡しした規則をご確認くださいませ」


口調は丁寧なのに、説明が雑だな。


「すでにお気づきの方もいらっしゃるでしょう。バッジにランク以外にポイントが表示しております。こちらのポイントはランク内の順位を表すものでございます。ポイントが多いほど順位が上」


「バッジは力の象徴と学院の一員であることを表すものの為、無くさないようお願いしております。万が一紛失した場合は再発行できますが、Cランクのゼロポイントのバッジのみ再発行させていただきます。なお、再発行は一回まででございます」


二回目無くなったら無条件退学ってことかな。


アキラが聞きながら、あのセンスが無い規則を読んでいる。眉に深い皺を寄せている。


「ランクの昇級と降級は二月のランク戦と決闘のみでございます。二月のランク戦に参加できる方のみ進級できますので、ぜひ積極的にランク戦へご参加くださいませ。決闘については、授業以外ならいつでも可能でございますが、その際に必す審判員(ワタクシ)を呼んでください。勝者は敗者のポイントとランクをいただけます。敗者はCランクのゼロポイントから再スタートでお願いいたします。勿論、元々上位の方が勝者の場合はポイントが加算されます。尚、ランクが上の方は断る権限がございません」


…丁寧で説明しているふうに見えるが、肝心な所々が抜けたりしているな。


わざとそうしているように見えるな。


ゴレームには自我がない。だから、最初から学院側が仕組んだもくろみかな。


「ねね、みっち…この説明を聴くとさ、なんかミョーな感じしねー?」


「妙って?」


穴だらけだけど、妙とは思わないな。


「いや、だって~コレ読んで」


ぼくの反応に不服のようで、規則の一部分を見せた。


センスがない規則の中にも変な絵があっちこっちにある。どこまでセンスがないんだ…


よくアキラがそれを無視して内容を読めたね。


アキラの事を尊敬してしまいそう。





『Sランク:学年内五名まで(1クラス)寮は一人部屋。学費免除、月一千万賞金。優先に授業を選べる。

 Aランク:学年内五名まで(1クラス)寮は二名と三人部屋。学費免除、月五百万賞金。

 Bランク:学年内二十名まで(2クラス)寮は五人部屋。学費半額、月五百万の維持費。

 Cランク:学年内五十名まで(3クラス)寮はなし。学費全額、月一千万の維持費。」




アキラが見せた部分を見る限り、特に変なところは見当たらないな。


ぼくの反応を見て、次の内容を見せた。




『上位の者が決闘を申し込む権利がない。』

『決闘が十分内で決着できない場合は無条件下位の者が勝者と見なす』





「トップクラスがおすすめって嬢ちゃんが言ったけど、上のクラスが一番狙われやすいじゃん?逆に下位のやつが上位になるチャンスが多いじゃん。これっていい?なんつーか、まるで下位のやつをまもってねぇ?こっち(スプラウー)の方針と逆じゃね?」


眉間の皺がますます増える。


思わず皺に指で触った。


「みっち?オレ結構シンケンだぞ?」


不満そうでぼくに睨んでいる。


「ふふふっ、簡単に上に居られるの方が、スプラウーの方針と異なるのでは?」


「いや、そーだけど…」


小言を言いながら、再びあのセンスを疑われる守則を読み始めた。


意外と細かいな。もっと大雑把と思った。


「以上でございます。他の説明は明日各クラスの担任先生が説明いたします。本日は終了とさせていただきます。お祝いを兼ねて、今回だけ自動で寮まで転送いたしますので、動かないようお願い申し上げます。では、良い学院生活となりますように祝福を」


再び深い辞儀をした。


アキラと話している間に穴だらけの説明が終わったらしい。


「おおおっ、すげー!体が光ってるぅ~んじゃ、オレAランクだからみっちと別クラスになっちゃったけど、これからもよろしく~」


転送される予兆で、体全体が光に浴びたアキラが満面の笑顔でぼくに手を振っている。


笑いながら彼にも手を振った。


コロシアムにいる九十九名の者が次々と転送されたのに、ぼくだけ転送されずに残された。


無表情のゴーレムがまっすぐぼくを見いている。


魂が宿っていないゴーレムが感情などないはずなのに、彼女が泣きそうな顔で両足の膝をついて、ぼくにお辞儀をした。先ほどのみんなの前にしたものとぜんぜん違う。


「…」


お互い無言だった。


彼女が再び立ち上がった時、ようやっと光に包まれた。


「あの方にお気をつけください…あの者は味方……」


転送される前に、彼女が長いまつげで目を伏せてぼくにそう言った。












転送された先は寮と聞いたが、てっきり狭いワンルームと思ったら、どうやら違ったみたい。これもSランクの特典かな。


正直車椅子に飽きたから、そのまま玄関に置いた。


玄関から上がってちょっと進んだらリビングが見える。白いの壁に薄い茶色の床。天井に金色のシャンデリア。掃き出し窓を開ければベランダとつながっている。丸い絨毯の上に黒ソファー。


更に奥の角を曲がると、二つ部屋の扉が見える。


龍がいる奥の部屋に入ると、龍がぼくの代わりに荷物を片付けている。


部屋はリビングと同じく、全体的に浅い色。部屋の一面の壁は窓だった。淡い水色に朝顔柄のカーテンが開いている。部屋が夕日の色に染められた。


ここまで来たら、どう考えても龍がぼくの好みに合わせているとしか考えられない。


部屋に入った途端、龍からパジャマを渡された。


「?時間まだ早い」


「入学式が終わったら休む」


そうだったな。すっかり忘れていた。


折角綺麗な夕日を堪能しようと思ったのにな。


「お腹が空いた。家を出て初めての食事したいな」


そういえば、寮だと家と違って調理師なんてついてないな。


ぼくは料理できないけど、器用だし無駄に長生きしている龍ならきっとできる。


「……待ってて」


期待の目指しを向けられて、今回も龍が折れた。


「ふふふっ、食事の前に紅茶でも持ってきてくれる?」


「ああ」


龍が部屋から出た後、ぼくは椅子を窓辺に移動した。


ひたすら夕日を眺めいている。


十年…か。


人間にとって十年は長いが、長寿の種族にとって十年は瞬きみたいなものだな。


ましてほぼ寿命がない天族(てんぞく)魔族まぞくと竜族にとって、十年どころか百年も短いという考えでしょ。


夕日を眺めると色々な事を考えてしまう。


会場から転送される前のゴーレムの話。


ぼくの目的と龍の願い。


流石千年も経っていた今はそろそろ終わりにしないと。


だから、ぼくはここ《スプラウー》に来た。


こんばんは、水おうです。

ここまで読んでくださって、ありがとうございます。

本当は更新日を水曜日に固定したいですが、なぜか今回も火曜日にしました。

特性せっかちだからかもしれません(笑)

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