5-2
「満様?どうかなさいました?」
「ううん、話がだいぶ逸れたからどこまで言ったかを考えているだけ」
ぼうっとしているぼくがスイの呼び声で、まだ教室にいることを思い出させた。本当は別のことを考えていたが、後ろにいる竜族に気づいたら面倒から適当に誤魔化した。
「厳密にまだ何も始まってないデスけど」
言われてみれば確かに、まずアキラの疑問を解けないと前に進めないな。
アキラもそれを気づいたようで、気まずそうで笑った。
「ごめんごめん~今ん所ダイジョーブー、たぶん…」
「貴方が分からないのはしょうがないから、分からなかったらすぐ訊きなさい」
「鈴音ちゃんやさしいぃ~」
「おだまりなさい!」
そう言っているが、スズネの尻尾がちょっと振っている。典型的な照れ隠しだな。
かわいいな。
「ふふふ…もう一度確認しようか。コユキの課題は講義のまとめと創世記に関する内容」
「ええ、少々不自然なところがありますね」
「…講義の内容をまとめなんて…不必要…」
「マキの言う通り、わざわざ課題を出す必要ないはず」
ぼくに褒められたマキが微笑んでいる、その微笑みを見ると思わず彼女の頭を撫でた。褒められたがっているのがかわいいな。
「んん~わざと間違った内容が教えたぁとか?」
「あの者はそんなことしない…」
すぐさまに否定したマキ。
本日二度目のはっきり。
先ほど講義のときもそうだったが、やはりマキはコユキが知っているようだな。過去の記憶に居なかったから、マキにとって彼女はきっと信頼できる者だろう。
「すごい…うまい…」
ずっと無言でシフォンケーキをもぐもぐしながら映像を入念に確認していたクレマンが急にボッソと。
「何が?このケーキ?」
「ん?普通に美味しいよ?あ、そっちか…違うよ~鈴音サン、真剣に課題を話し合い中ケーキの話するわけないよ」
「そもそも話し中でケーキを食べている時点っておかしいのよ!何よりのはいきなり主語なしで話し出さないでちょうだい!」
「へへ、よく言われマス」
「褒めてないから!結局何の話?」
「そうだね…講義中から違和感を感じたけど、イマイチわからないけど、やっと違和感を探した話っス」
おお、すごいすごいと言いながら拍手したアキラとそれをドヤ顔のクレマン。
先から思ったが、このふたりは意外と馬が合うな。
「……説明が下手すぎない?」
この説明だとスズネまたキャンキャンになるかと思ったら、ものすごく心配しているスズネである。
「え?」
「ん?」
「そ、そうですね。クレマン様は何を気づいたんですか?」
ふたりとも不思議そうで何を言っているのがわからない顔をしている。
その中に進行しようとしているスイが居て良かったな。
「あ、そっか。まだ話してないからか。それは失礼シマシタ。簡単に言うと、講義中あの先生が本当の課題を黒板に書いていることを気付いたってこと」
明らかにスズネが引いた顔されても、クレマンのドヤ顔がブレなかった。
「…干渉系魔法は使っていなかったはずです」
「そう、俺も最初そう思った。だけど、実際使いマシタ。魔法で黒板に字を書いたはずなのに、空気中の魔力が全く動いてなかった。最初はさすがスプラウーの講師だって関心したけど、よく見てくれ。教室の床に魔法陣が描かれてるだろう。この魔法陣があれば魔力の流動を全く感じさせられる。しかも対象相手は小雪先生だけ。魔法陣の構造が簡単そうに見えたのに、まさかこんな機能まで着いているなんですごく勉強になるわ」
やや興奮しているが、ぼくたち見せやすように、床に描かれた魔法陣と干渉魔法を解除した黒板の内容をそれぞれピックアップしてくれた。
「実はこの五十年くらい魔法陣に興味があって研究し始めたばかりデス。魔界であまり魔法陣の運用がないからさ、こうして魔法陣を実際見てきたのはこれが初めて。あの教室に戻りたいな~」
「魔法陣はなんですか?」
「翠サン!よく聞いてくれマシタ!魔法陣は自身の魔力を使わなくても魔法を使える技術だ。魔法陣の書き方によって効果が全然違ったりする。小雪先生の魔法陣の腕はかなり高いぞ。嗜み程度の俺が言うのはあまり信憑性がないけどね~」
「……自身の魔力…ですか?魔石とは魔力を含まれた物で陣を構成するということですか」
「そうそう、その通りデス。魔法より劣れると魔界に評価されてるけど、俺はそう思わない。使い方によって魔法より使えやすい場合もきっとある…リマス」
「…確かにそうかもしれません。発動時以外は魔力の流動を感じないだけでも、使え道がありそうです。それに…戦闘中にもきっと役に立ちそうです」
魔法陣のことを語り始めたクレマンと、興味が湧いてきたスイのふたりは完全に課題から逸れた。
真面目なスズネがふたりの話を止めるかと思ったが、彼女は無言にケーキを食べ始めた。
彼女は気づいていないが、耳がピクピク動いている。本当はふたりの会話を混じりたいのに、本当に素直ではないな。
「うぇ、すげぇ盛り上がってるぅ…先まで飄々しているクレマンくんが急にアツくなるって怖ぇよ…翠くんも虫も殺せなさそうな顔で戦闘とか言ってるのはすげぇ違和感だけどぉ…」
ケーキ食べながら盛り上げているふたりを見てアキラが若干引いたようだ。
クレマンは色んなことに興味あるし、スイは強くなることに執着しているから。
「ふふ、自分が好きなものに興味を持ってくれる者が居たら嬉しくなるのは当たり前のでは?」
まして同年代の者が居なかったクレマンにとっては新鮮なことだろう。
「それよりクレマンくんが五十年とは気軽に言ってたけど、ゼロ一つ多くねぇ?」
「ふふ、魔族だもの」
「そっか、え?ってことは?オレがヨボヨボ爺ぃになっても、クレマンくんまだまだピチピチってこと!?」
「そうなるな」
「すげぇ異世界文化衝撃だけどぉ…でも、みっちはぼくと同じ時間にいるはずだよね!?えええ!?なになにいいいい!?」
迫ってきたアキラの首を締めたのはずっと静かに控えている龍だった。
我慢の限界に来たようだ。龍にしてはなり我慢したと思う。
……アキラも飽きないな。妙に龍の限界値を探ろうとしている。龍も龍で、なんでアキラのことになるとこんなにもムキになるだろ。
だけど、アキラの体内はまだぼくの力が残っている。アキラもそれを理解しているから、ぼくを含めて誰もむやみに触れないようにしている。
「離してあげて」
「満」
「…自分で帰ったら?」
また無言でぼくを見つめた。本当にしょうがないやつだな。
「はあ…もうちょっと待って、そんな拗ねないで」
「え?す、拗ねてる!?どこが!?全く同じ顔デスケド?それよりオレを降ろしてくださぁいぃぃぃ」
……うるさいふたりだな。
ところで先程からマキが静かだな。
隣にいるマキはいつの間にか寝ている。
…不思議だな。あんなことを経験したのに、よくぼくたちの前で寝れるとは、意外と図太いところがあるな。ぼくたちを信頼しているか、それとも単に諦めただけか。いずれにしてもずっと食事していない彼女には休息が必要だ。
「お楽しみの会話中断してごめんな。そろそろ疲れたから、今日は一旦お開きにしよ。スズネ、マキは寝てたから、彼女を寮まで送ってくれない?」
「うぅ、わかったわ。ごめんね、あたしまで夢中になっちゃったわ」
マキを起こさないように優しく抱き上げたスズネが、いつもより小さい声で気まずそうで謝った。
彼女を見ると、小柄とはいえやはりスズネは獣人だな。自分より背が高いマキでも余裕で抱き上げるな。
「残りはまた明日でいいから、マキよろしくね」
「ええ、わかったわ。おやすみなさい」
龍の転移魔法の中に、彼女ふたりの姿が見えなくなった。
「申し訳ございません。つい…」
「ゴメンナサイ~」
マキとスズネが居なくなったあと、スイは申し訳無さそうで真剣に反省している。話を逸らした主犯のクレマンは全く気にしていないが、口にはちゃんと謝った。
別にこのくらいはいいのに、スズネとスイは真面目だからな。
「ふふ、気にしなくていい。明日昼くらいまたここで集まろうか。アキラも明日空いてるなら来ると良い」
「はぁいよ~また明日~」
ちょっと短いでごめんなさい←
いよいよ今週金曜日で発売されます、アトリエが。
早くゲームしたいです。




